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就職みらい研究所とは
2024.09.12

《就職みらい研究所 REPORT》昨今の若者が汎用的なスキル習得を望むのはなぜか? 一社でのキャリア形成から多様なキャリア形成へ

就職みらい研究所では、就職活動を行っている大学4年生・大学院2年生を対象に、「働きたい組織の特徴」の調査を、2014年卒から毎継続的に実施している。

本レポートでは、働きたい組織の特徴の全29項目の中で、学生の「成長スタイル」の志向の変化に注目する。具体的には「A:どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」と「B:その会社に属していてこそ役に立つ企業独自の特殊な能力が身につく」について考察していく。

※本稿は筆者の個人的な見解であり、所属する組織・研究会の見解を示すものではありません。
 

 

レポートの概要

「A:どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」を支持する割合は2014年卒66.7%に対し、2024年卒では77.9%と約11ポイント増加している(図表1)。

なぜ「A:どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」の支持率が増加しているのだろうか。

 詳細はレポートをご覧いただきたいが、個人が複数の企業を経験したり、兼業や副業などを行ったりと、多様なキャリアを志向するようになっている。いわゆる日本的雇用慣行においては、働く個人は一つの会社でキャリアを形成していくことが一般的であった。しかし、昨今は転職や副業なども視野に入れてキャリア形成を図る人が増えてきている。そういった変化が社会に出る前の学生の志向にも変化を与えている可能性があるのではないかというのが筆者の仮説である。

働く個人の価値観が変化している中で、企業側がそれに対応することは大きな課題である。一部の企業では、選択型研修やクロスアサインの機会を提供することで、個々人のニーズにあわせて学べる柔軟な教育・配置の在り方を模索する様子が見られる。

また、約6割の企業が提供するOJTは、社会人基礎力のような、どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力の習得にも寄与している。

一方で企業としては、社員がどこでも通用するような汎用的なスキルを身につけることを支援したいが、支援すればするほど育てた社員が外に出ていってしまうジレンマを感じる経営者や人事担当者が少なくないかもしれない。

 これからの労働市場においては、内向きの囲い込むような考え方ではなく、従業員が主体的にキャリアを考えることを支援する開かれた組織に変わるべきではないだろうか。

たとえば、昨今、アルムナイ採用に取り組む企業が増えてきている。一度その会社を退職した従業員であっても、再び仲間として迎え入れるような職場は、働く人にとっても魅力的なはずである。大切なのは個人と企業が対等であることを前提とした選び選ばれあう関係ではないだろうか。

 

 

 

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