【個人と組織の新たなつながり方】Vol.15 株式会社ビーンズラボ
琉球大学「うりずんインターンシップ」(【個人と組織の新たなつながり方】Vol.13にて紹介)に参画する、沖縄県那覇市のビーンズラボ。2015年の新卒採用開始以来、新卒入社社員の定着率は95%です。社員が「長く働きたい」と思う組織づくりやインターンシップの実施について、琉球大学在学中にうりずんインターンシップに参加され、現在は同社で採用を担当する大屋さんにお話を伺いました。
※記事は、2024年12月13日に取材した内容で掲載しております。
【株式会社ビーンズラボ 人事部 部長サポート採用課 課長 大屋志織さん】
琉球大学を卒業後、観光業界を経て中途入社。インターンシップ、新卒採用、中途採用を担当。
【株式会社ビーンズラボ】
2011年9月に沖縄県で設立。開発から運用まで一貫したITソリューションを提供。AIなど最先端技術を取り入れながら顧客に寄り添う姿勢を貫く。
沖縄でITエンジニアを輩出したい
―貴社の事業概要や特徴を教えてください。
大屋:当社はソフトウェア事業を展開しており、AIやRPAの実装や、ウェブアプリケーションの開発から運用を担っています。2011年設立の若い会社ですが、社員数は300名を超えました。中途・新卒比率はおよそ2:1です。全社員の約8~9割はIT業界・スキル未経験で入社しています。私も観光業界から未経験で中途入社しましたが、ほかにも教員、ウェディングプランナー、スーパーの店員等、前職業種・職種は幅広いです。新卒採用も専攻・ITスキル不問です。
当社は「沖縄の雇用創出」という目標を掲げ、2011年に設立されました。当時から「IT企業」は県内に複数ありましたが、コールセンターが主流だったそうです。当社は沖縄の地でITエンジニアを輩出していこう、IT業界に挑戦したい人がスキルを磨き、良い商品良いサービスを生み出していこう、という想いのもとで設立されたと聞いています。
経験・専攻を問わずキャリアを歩み出すためサポート
―中途・新卒入社者が経験・専攻不問でITエンジニアのキャリアを歩むために、どのようにしてスキルを習得していくのでしょうか。
大屋:中途・新卒入社時いずれも、3カ月の研修を受けます。この間は業務として研修に専念してもらいます。研修専任部署が作った当社独自のカリキュラムを通して、プログラミングの基礎を知り、主要プログラミング言語を学びながら、課題に取り組んでもらいます。
課題では要件を理解したうえで設計し、コードを組むことで、知識の定着を図ります。最終課題ではWebアプリケーションを自作してもらいます。研修を通して、何がわからないのかを整理・言語化し、解決のプロセスを考える等、ビジネスプロセスの推進に役立つ経験をしてもらいます。研修課題の一つひとつをプロジェクトに見立てているため、スケジュール進捗の振り返りと引き直し等、プロジェクト管理のトレーニングも兼ねています。
―未経験の方にはハードルが高そうに感じます。
大屋:プログラミングもプロジェクト管理も初めてだと、学ぶべきことが多く大変だと思います。それでもハードルを越えられるよう、専任部署が手厚くサポートしています。
未経験者が職場・仕事に慣れ、長く働ける組織づくり
―難しい研修課題と向き合うことは、入社者の定着・活躍にどのように影響していますか?
大屋:難しい課題をともに乗り越えることで、同時期に研修を受けた社員同士が研修終了後も協力し合える関係性が構築されているのではと考えています。当社は2015年から新卒採用を開始し、現在までに入社した新卒入社者の定着率は95%です。中途入社者を含めても、当社設立以来の全社員の定着率は80%以上です。研修終了後もわからないことを聞き合ったり、業務の相談をし合ったりする横の関係の強さは、多くの社員が当社で長く働いている要因のひとつだと思います。
―ほかにも入社者の定着・活躍に影響している取り組みや制度があれば教えてください。
大屋:まず、入社年次が近いメンターと定期的に話す制度があります。直属の上司以外に相談できたり刺激を受けたりする人の存在は、組織の結束力につながっています。
自分の意見や希望を発する機会が多いことも、定着率の高さにつながっています。月に1回、直属の上司と面談する機会があり、将来やりたいことを相談できます。組織規模が拡大していることもあり、社内のキャリアチェンジ、新しいことに挑戦したいという希望に、より幅広く応えられるようになっています。
さらに、社員との面談を専任で担当する部署があり、1対1で相談ができます。匿名で組織・制度に関する要望を出すこともできます。社員の声から「ライフサポート休暇」という生理休暇に該当するものが生まれたり、ドリンクサーバーの種類が増えたりなど、社員が気持ちよく働ける制度・環境づくりにつながっています。
スキル習得の意欲やホスピタリティを深掘りする採用選考
―経験・専攻問わず貴社で長く働いてもらうために、どんなことを重視していますか?
大屋:まずご本人の意欲です。スキルをしっかり身に付けてもらう必要があるので、選考でも本当にこの業界に挑戦したいか、学び続けることにギャップを感じないか、確認しています。
ホスピタリティの要素も重視しています。顧客の要望を解釈し具現化することが重要な仕事なので、選考では前職や大学生活でどのようなことを大事にしてきたかを聞きながら、発言からにじみ出るご本人のホスピタリティを深掘りしています。
ほかには問題解決力や、自分が直面している問題や自分がやりたいことを言語化する力が重要です。これらの能力は選考で確認するだけでなく、仕事を通して高めてもらうことも期待しています。要件定義やアリゴリズムを考える際に重要ですし、そこにプログラミングスキルが伴えば、技術力の高いエンジニアとして活躍できると当社では考えています。
―重視していることは、中途・新卒で変わりますか?
大屋:変わりません。強いて言えば、日常的にチームで仕事をするので、チームで仕事をすることに生かせそうな学生時代のご経験を、対話の中から深掘りしています。
―ほかに採用選考で意識していることは?
大屋:中途・新卒いずれの選考でも、ありのままをお話しすることです。入社後のギャップなく入社していただきたいと思っているので、会社説明では自社の働き方や仕事の進め方、雰囲気といったことを包み隠さず紹介しています。
現場社員参加の座談会やインターンシップを通して、仕事や組織を知ってもらう
―学生向けの座談会やインターンシップを、年に複数回実施されています。それぞれ実施内容を教えてください。
大屋:座談会は現場社員との対話の場にしています。学生の方々は現場社員の話を聴きたいはずです。新卒入社から年次が浅い社員を中心に積極的に協力してもらっています。
インターンシップは2022年から本格的に開始しました。研修専任部署に協力してもらい、プログラミングや業務工程を体験してもらいます。2023年からは琉球大学「うりずんインターンシップ」にも参画しています。
―座談会やインターンシップを通して、学生にはどんなことを伝えていますか?
大屋:座談会では現場社員に、学生時代に気になっていたこと、当社に入ってから感じたことを自由に話して、答えてもらっています。ありのままの話を聴いて、学生自身にどんな人が自社に向いているか、ITの仕事とはどんなものか、理解してほしいと思っています。
インターンシップではプログラミングだけでなく、業務の進め方を知ってほしいと考えています。参加者からは「プログラミングだけでなく、顧客やチームとコミュニケーションを取ってすり合わせていくことが大事だと理解できた」「世の中にリリースされる前にテスト工程があることを知り、その重要性がわかった」という感想が寄せられています。説明では伝わりにくい、開発の大事な部分を実感してもらえていると思います。
―「うりずんインターンシップ」に参画された経緯も教えてください。
大屋:私も琉球大学在学中に「うりずんインターンシップ」に参加しました。当時はインターンシップに興味があったのですが参加の仕方がわからず、キャリアセンターの募集告知を見て参加したことをきっかけに、さまざまな企業の情報が得られるようになりました。事前研修をしてからインターンシップに参加できたこともありがたく、印象に残っていました。学生さんに当社を知ってもらう機会になると思い社内で参画を提案し、受け入れ態勢拡充などの準備を経て、2023年から参画しています。
―大学と連携してインターンシップを実施することのメリットは?
大屋:事前研修を受けてから学生が参加してくれることや、事後研修で自社の就業体験に対する学生の受け止め方を確認できることなどです。うりずんインターンシップに参画していることによって、琉球大学の先生方とお話しする機会も増えました。琉球大学キャリアセンター主催のOB・OG座談会への参加を通して、現役学生と話す機会も得られるなど、学生や大学の方々の考えを知る機会にもつながっています。学生・大学と相互理解を深めていくためにも、引き続き参画していきたいと思っています。
文/衣笠 可奈子 撮影/難波 卓美(CURBON)