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2023.09.08

群馬から世界へ。通関業務を通じて取引先の輸出入を支援(「地域未来牽引企業」で働く社員)

これからの「働く」を考える Vol.18

経済産業省が選定する、地域経済の中心的な担い手となりうる企業「地域未来牽引企業」。実際に就職先として選んだ人は、どのように働き、やりがいを感じているのでしょうか? 地域未来牽引企業3社から1人ずつ、若手社員の方を紹介します。

1人目は、群馬県安中市に本社を置く総合物流企業・株式会社ボルテックスセイグンで国際物流事業に携わる坂口開都さんにお話を伺いました

 

株式会社ボルテックスセイグン
国際貨物部
坂口開都さん


※記事は、2023年7月31日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Profile】

東京都内の大学を2022年に卒業し、同年、株式会社ボルテックスセイグンに入社。国際貨物部にて、主に取引先メーカーが扱う化学製品の輸出入業務を担当。輸送に必要な船舶や大型車、航空便の手配や、税関への提出書類の作成などを行っている。出身地である群馬県に貢献できる企業であること、また、実家から通勤が可能であることなどが入社の決め手であった。

ボルテックスセイグンは、群馬県安中市に本社を置き、通関・国内輸送・倉庫・梱包業などを行う総合物流企業。国際物流事業においては、群馬県安中市に保税倉庫(※)を持ち、輸出入貨物の保管と輸送、通関業務などを行っている。内陸部である群馬県内に工場などを持つ製造業各社は、同社に輸出入貨物の取り扱いを委託することで港や空港に貨物を持ち込んで通関を経る必要がなくなり、通関の待ち時間や物流コストの抑制を可能にしている。

※輸出の許可を受けた貨物および外国から日本に到着した貨物で輸入が許可される前の貨物である「外国貨物」の保管が可能な倉庫。保税倉庫に保管中の外国貨物には関税や消費税が課されないため、荷主はその費用を抑えることができ、また、保管中の貨物を外国貨物の状態で輸出入品の点検、改装、仕分け、手入れや値札付などの作業を行うことができるといった利点がある。

 

地元での暮らしやすさ、働きやすさ、地元への貢献を重視

 

―まずは、ボルテックスセイグンさんに入社された経緯からお聞かせください。元々群馬県で働きたいというお考えだったのでしょうか

 
大学2〜3年生のころは、漠然と「東京で働くのかな」と思って幅広く企業を見ていました。しかし、大学で寮生活と一人暮らしを経験して、東京での暮らしと大学入学までの群馬県の実家での暮らしを比べたときに、自分には地元での暮らしの方が合っていると感じたので、群馬県の企業にも目を向けるようになりました。
 
―どのようにして群馬県の企業を探されたのですか
 
最初はインターネットで検索しました。すると、勤務時間や給料、業務内容の面で意外と魅力的な企業がたくさんあると感じたので、群馬県の企業が集まる合同企業説明会に参加し、弊社に出合いました。ほかにも魅力的な企業はありましたが、地元に貢献している企業であることと、就職後の自分の生活をイメージした際に、勤務時間帯や実家からの通勤のしやすさ、転勤がないといった働き方の面で最もしっくりしたのが弊社だったので、入社を決めました。
 
―ボルテックスセイグンさんが地元に貢献されているというのは、どのような点から感じましたか
 
地域未来牽引企業であることは入社するまで知らなかったのですが、グループ会社で路線バスや観光バス事業を行っている点や、全国や県の交通安全運動の期間には拠点の周辺で旗振りを行い、地域の皆さんに交通事故防止をアピールしている点などから、地域に関わる事業や取り組みをしていることを感じました。
 
―企業選びにおいては、どのような点を重視していましたか
 
地元で働きたかったので、転勤があまりないことを重視していました。業種などはさほどこだわっていませんでした。
 
―ボルテックスセイグンさんとは、勤務地や配属部署の希望についてどのようなコミュニケーションがありましたか
 
入社前は、最初の1〜2年は現場に配属されて物流工程の各業務を担当すると聞いていましたが、私の場合は、現場配属後3か月で国際貨物部に異動になりました。国際貨物部は、入社後に「営業か国際貨物にどうか?」と聞かれた際に希望した部署です。

 

取引先の貨物の世界各国への輸出入を担う責任

 

―国際貨物部での具体的な業務内容を教えてください
 
国際貨物部は、輸出入に関わる業務を担当しています。主に、取引先である群馬県内に工場などがあるメーカーが扱う化学製品の輸出入に必要な船やトラック、航空便の手配や、税関への提出書類の作成などを行っています。部のメンバーは9人で、案件ごとに担当者が決まりますが、私は、今はアジアの国とやりとりする案件を担当することが多いですね。
 

手配業務や書類作成などのデスクワークが多い坂口さん。「長時間勤務になることはあまりないですし、社員の皆の人柄もいいので、働き心地も非常に満足しています」

 
―どのような点にやりがいや面白さを感じていらっしゃいますか
 
自分が手配しないと物流が止まって大変なことになるので、そこに責任の重さとやりがいを感じます。モノの大きな流れを身近に感じています。
 
また、輸出入業務なので、海外の方と日常的に英語でメールのやりとりをします。正直なところ英語はあまり得意ではなかったのですが、入社後、勉強を始めて、日々力がついてきていることにもやりがいを感じています。自分に割り振られた仕事が終われば、業務時間中でも英語の勉強ができますし、もちろん業務外でもやっています。
 
―英語を話す機会もありますか
 
英会話が必要な場面もありますが、そこは得意な社員に任せています。今後は、自分の能力次第なところもありますが、会話もできるようになれればいいかなと思っています。
 
―化学製品の輸送ということで、何か配慮や工夫などもされているのでしょうか
 
危険物の輸送にあたるため、危険物の輸送に必要な知識や化学物質の物的な特性、お客様に届いたときに起こる化学反応などについてお客様から教育を受けた上で、国土交通省が定める運輸安全に関する規定にしたがって輸送の手配を行っています。
 
―「地元で働く」という面での魅力や働きがいはどのように感じていらっしゃいますか
 
住み慣れた土地という点でストレスなく働けていますし、都会の満員電車のストレスなどもない点も魅力に感じています。他方で、1つデメリットに感じていることとして、社員の多くが車通勤であるために飲み会がほとんど開かれないことが挙げられます。同期とは食事に行ったりしていますが、業務外で先輩や同僚とコミュニケーションとる機会は、自分でつくっていく必要がありますね。
 

上司や同僚ともフランクに話せる職場。社員の多くは地元出身で、子どもの頃から住み慣れた実家から通いやすいという点でも、安心して働くことができている。

 

 
―入社2年目ということで、今後さらに仕事の幅を広げていかれる段階かと思いますが、今後のありたい姿や目指したいことはどのように考えていらっしゃいますか
 
業務を行う上で通関士の資格が必須のため、2024年の通関士試験に合格することが今の目標です。税関への申告は通関士でなければできない業務で、今、私が担当しているのは通関士資格を持っている先輩たちに渡すための書類作成の部分です。最後の申告まで責任を持ってやるために、通関士の資格は必ず取りたいと思っています。

 

強いこだわりがなければ、地方にも広く目を向けてみると選択肢が広がる

 

―これから社会に出る学生、とくに、地域で働くことを検討している学生の皆さんに対して、企業の探し方や入社後にやりがいを持って働くためのアドバイスをお願いします
 
企業選びで重視したいことが明確な人は、それを大切にしてほしいですが、なかなか優先したいものが決まらない人や、あまりこだわりはないけれどとりあえず決めた基準で就活をしている人は、都市部で働くことにこだわらずに、一度地方に目を向けてもいいのかなと思います。
 
そうやって広い視野で探してみないと見えてこないこともあります。意外と売り上げが安定していたり、大きな企業もあったりしますよ。自分自身、地元企業に目を向けてみた結果、魅力的な企業に出合えたので、これから就活される学生の皆さんには、広い視野で見ていただきたいなと思います。

 

取材・文/浅田夕香

 

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