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2023.09.28

店舗に合った文具・売り場を提案し、地域の小売店を支援(「地域未来牽引企業」で働く社員)

これからの「働く」を考える Vol.21

経済産業省が選定する、地域経済の中心的な担い手となりうる企業「地域未来牽引企業」で働く3人の社員の仕事ややりがいを紹介する本記事。3人目は、福岡県福岡市に本社を置く紙・文具・事務機器を扱う商社・株式会社レイメイ藤井で働く山本麻鈴さんにお話を伺いました。

 

株式会社レイメイ藤井
オフィスサプライ事業部 リテールサポート課
山本麻鈴さん

【Profile】

熊本県出身。県内の大学を2019年に卒業し、同年、株式会社レイメイ藤井に入社。志望していた文具業界の企業で、九州圏内で働けることなどが決め手であった。福岡本社にて文具専門店・百貨店・書店などの小売店への卸売・営業サポートを行う現部署に配属され、福岡県内の小売店40〜50店への深耕営業を担当している。
 
レイメイ藤井は、福岡県福岡市に本社を置く、紙・文具・事務機器を扱う商社。事務機器の販売、ネットワーク導入、空間プロデュースなどを行う「ビジネスソリューション事業」、印刷・情報関連用紙、包装用紙などの卸販売を行う「ペーパースペシャルティ事業」、文具、事務用品の卸販売を行う「オフィスサプライ事業」、オリジナル文具の開発を行う「ステイショナリー事業」の4事業を行い、オフィス立ち上げなど顧客のニーズに応じて4事業が連携してワンストップで対応できることを強みとしている。

 

九州で、好きな文具に関わる仕事をしたい

 

―まずは、レイメイ藤井さんに入社された経緯からお聞かせください。就職活動では、何を重視して企業選びをされましたか

 
文具業界に絞って就活をしました。仕事は一日の中で多くの割合を占めるので、せっかくなら興味のあることや好きなことを仕事にしたいと思い、私の場合、それが文具だったんです。まずは、大学2年生の冬から1年ほど文具店でアルバイトをして、文具に関わる企業について知っていきました。アルバイト自体も楽しかったので、やはり文具業界で働きたいと思い、メーカーや大手の小売店、メーカーから仕入れた商品を小売店に卸す文具卸売企業などのインターンシップや説明会に参加していきました。
 

―文具に関わる企業は他業種に比べると少なく、東京などの大都市圏にある企業が多い印象です
 
そうですね。当時はオンラインの説明会やインターンシップはなかったので、東京に行って活動していました。ただ、文具業界は新卒を募集していない企業も多く、新卒を募集している企業は大手が中心で競争倍率も高いですし、全国転勤があることや、初めての就職で住み慣れない都会に行くことに不安も感じました。情報収集していくうちに、大都市圏以外にも企業があることを知ったり、卸としてメーカーと関わる方法もあることを実感したりして、実家にも帰りやすく、友達も多い九州で就職したいという気持ちが強くなりました。それで、レイメイ藤井も志望企業の一つになりました。
 
―レイメイ藤井さんはどのように認知されたのですか
 
学生時代からペンカット(ペン型のハサミ)やペンパス(ペン型のコンパス)などレイメイ藤井がつくっている文具を使っていたので、文具メーカーとして認識していたのですが、アルバイト先の文具店で卸売もやっていることを知りました。メーカーと卸の両方をやっている企業は珍しいと思って調べていくと、他にもオフィス機器やオフィス家具といったオフィスに関するサポートなどもやっていて。そうしてさまざまな事業を行っていることも魅力に感じました。
 
―入社以来、営業を担当されていますが、ご自身の希望だったのでしょうか
 
そうです。人におすすめすることや人と話すことが好きですし、会社の中でじっとしているよりも、いろんな人とコミュニケーションをとって外に出る方が向いているかなと思って就活時から営業職を希望していました。0→1(ゼロイチ)で何かを作るよりも、できあがった良い商品をおすすめすることに取り組みたいといった気持ちも強かったです。レイメイ藤井は営業職としての募集だったので、営業に配属されるだろうと見込んで入社しました。
 
―勤務地はどのように決まったのですか
 
福岡を希望していましたが、九州内であればどこでもいいかなと思っていて、運よく希望が通って福岡本社に配属されました。

 

一つひとつの店舗に応じた売り場や商品を提案

 

―現在担当されているお仕事について教えてください
 
文具専門店や書店などの小売店へのルート営業です。福岡県内の小売店のうち、担当する40〜50店舗を定期的に訪問して、新商品の提案や売り場の活性化策の提案などを行っています。
 
あとは、当社が年3回開催している展示会の運営も担当しているので、関連業務も行っています。文具を中心にオフィス回りの様々なメーカーさんに出展していただいて、小売店さんに来ていただく形の展示会です。展示会では、メーカーさんが小売店さんに直接新商品をアピールできるので、大切な商談の機会になっています。
 

2023年9月、メーカー約140社の出展を誘致して開催した展示会にて。今回から、システム担当の事業部などと連携し、来場管理システムを導入してメーカー・小売店への開催案内から当日の受付、来場後のフォローまでをデジタル化した。よりスムーズな運営につながるように、メンバーで知恵を出し合いながら、毎回工夫を重ねている。

 
―入社前に想像していた営業の仕事と実際とで、ギャップに感じたことはありましたか
 
卸売という業態上、関わる人が多いであろうことは想像していましたが、実際は、想像以上に多かったです。小売店の店長さんや売り場の担当の方に加えて、取引先である100社以上のメーカーさんの担当の方とも関わりますし、受注窓口であるコンタクトセンターや物流センターの社員とのやりとりもあります。メーカーさんの商品をただ紹介するだけじゃないんだなということを本当に実感しています。
 
―立場や役割が異なる方々の間に立ってのお仕事かと思いますが、どんなことに難しさを感じていらっしゃいますか
 
やはりコミュニケーションですね。商品を紹介するだけで導入が決まるものではなく、店舗様ごとにどのような困りごとがあるのかを掘り出して、それを解決・解消する提案をしていくことで導入を決めていただけますが、その困りごとを掘り出すのが難しいです。

 
―例えば、どのような困りごとがあるのでしょうか
 
「商品を入れたのになかなか売れない」「最初は売れていたのに、売れなくなってきた」「他店で売れていると聞いたから入れたのにうちでは売れない」「コロナ禍でリアル店舗への足が遠のいているお客様をどう呼び込めばいいか」など、困りごとは店舗様によってさまざまです。それを店長さんや売り場の担当の方からヒアリングして、自分たちの過去の出荷実績やその店舗様の客層などをもとにメインに置く商品や新商品を提案しています。
 
難しいですが、その店舗その店舗に合った売り場づくりを提案して、実際にお客様が来てくださることにやりがいを感じますし、1つのメーカーに縛られない、商品の選択肢が多様にある中から提案できることにも卸としてのやりがいを感じています。
 
―提案が良い結果につながったような、思い出に残るお仕事があれば具体的に教えていだけますか
 
たくさんありすぎて一つに絞るのが難しいですが、店舗イベントがうまくいったことが、最近では印象に残っていることの一つです。
 
東京では普通に売っているけれど、九州ではなかなか扱われていない商品があって、それらをポップアップストアのような形で店頭に置くイベントをメーカーさんと一緒に企画し、特定の店舗様に提案・実施しました。その結果、来店された方から「これってこのお店に置いてあったんだ」「商品は知っていたけれど、近くで見たことがなかったから、今日は手に取れてうれしい」などと言っていただけて。やってよかったと思いましたし、「このお店に行けばあの商品がある」という認知を広げたり、リアル店舗の良さを定着させたりといった点で、お客様にも店舗様にも還元できたのではないかと思います。
 
―レイメイ藤井さんという企業での働き心地ややりがいについては、どのように感じていらっしゃいますか
 
会社として、ワークライフバランスがすごく整っている働き方をさせてもらっています。福岡は空港が近いので、土日は旅行に行って、平日は働いてといった形でも楽しめています。
 
仕事においては、100年以上の歴史のある企業ですが、個人的には営業の裁量が大きく、達成感ややりがいを感じやすいと思います。
 

―裁量の大きさはどのようなところで感じていらっしゃいますか
 
1つの店舗を担当する営業は1人だけなので、担当店舗への訪問頻度や提案内容などはすべて自分に任せてもらっていることに裁量の大きさを感じています。
 

―それは逆に、ミスの心配や目標達成へのプレッシャーなども大きいのではないかと思いますが、いかがですか
 

ミスは心配ですし、特に1年目はたくさんミスや失敗をしましたが、その都度「失敗も勉強だから」と上司がフォローしてくれたので、リカバリーの仕方を学ぶことができました。今は失敗しても焦らず、ある程度のリカバリーは自力でできる自信を持てています。何かあればチームや上司が助けてくれるという安心感があるからこその裁量権だと思っていますし、だからこそ、のびのびと営業ができているのかなと思います。
 

―同僚の皆さんとはどのような協力体制があるのでしょうか
 
福岡本社に小売店を担当する営業が私も含めて4人いて、その4人がチームとして、毎月、そして年間の売上目標達成を目指して、お互いに情報共有をしたり、相談し合ったりしています。ほかにも、他県の小売店担当営業とも情報共有をして連携を図ることもしています。
 

同僚もですし、関わっているメーカーさんや小売店さんも含めて、一緒に働く人たちというのは、扱う商品や仕事以上に重要であることを、働くにつれてすごく感じています。
 

―「一緒に働く人が重要」とは具体的にどういうことでしょうか
 

私はどうしても文具業界で働きたいと思って入社して、今も文具は好きですが、最近はどちらかというと仕事の商材という感覚になっています。好きを仕事にして、その気持ちが少し変わったとしても辞めたいという気持ちにならずに頑張れているのは、同僚や小売店、メーカーの担当の方、それぞれとチームのような感覚で「この人と一緒だから頑張りたい/やってよかった」と思う場面が多く、そこにもやりがいを感じているからだと思っています。
 

例えば、小売店さんとは売り出したい商品や売り場を一緒に企画して、売れるよう一緒に頑張りますし、メーカーさんにも、お店のために一緒に日々協力してもらっているので、より多くのお店に良い商品を導入していきたいと思っています。それはやはり、一緒に働く人たちのためにという気持ちが大きいからだと思います。
 

自分の興味・関心に関わる企業を深く、広く調べていこう

 

―では最後に、これから社会に出る学生、とくに、地域で働くことを検討している学生の皆さんに対して、企業の見つけ方についてアドバイスをいただけますか
 
普段、生活をしていると、広告やテレビで目にするような、自分にとって身近な企業しか知り得ないと思います。学生時代、そして就活といういろんな企業を探せる機会をぜひ活用して、自分の興味を深掘りして、そこに関わる企業を深く、深く、大きな会社だけでなく調べていくことで、今まで出合ったことのない企業とも出合うことができるのかなと思います。知らないとまず選択肢に入ってこないので、こだわらずにいろんな会社を知ることも大事です。
 
今はインターネットがあるので、探せばどんどんいろんな企業が出てくるし、企業説明会もオンラインで参加できるのは、金銭・時間・体力面などですごいメリットだと思うんです。そういったものをどんどん活用して、ぜひ自分に合う企業を見つけていただけたらなと思います。
 

取材・文/浅田夕香

 

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