2022.03.25

これからの「働く」を考える Vol.11 事業化への視点を大切にしながら、成分分析などの技術系職種から商品開発に携わりたい

愛媛大学農学部と愛媛県内の食品関連企業との産学連携による新たなインターンシッププログラム「愛媛Food Camp」が2021年4月にスタートしました。「愛媛県の地方創生を食品業界がリードする」という実践型インターンシッププラットフォーム「愛媛Food Camp」は、学生のどんな学びにつながっているのでしょうか。

朝日共販株式会社でのインターンシップに参加した、愛媛大学大学院農学研究科生命機能学専攻 修士1年の三好陽麻莉さんに、プログラムを通して得た学び、見えてきた今後の目標についてお話をうかがいました。

 

愛媛大学大学院 農学研究科生命機能学専攻 動物細胞工学研究室 修士1年
三好 陽麻莉(みよし・ひまり)さん


※記事は、2022年3月11日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Profile】

愛媛県松山市出身。アレルギー性鼻炎に苦しむ妹を身近に見てきたことから「改善するために何かできることはないか」と食や健康に興味を持ち農学部に進学。大学院では食品が持つ健康機能について研究している。食品の安全性に携わる仕事に就きたいと考え、商品開発の流れを学ぼうと愛媛Food Campに参加を決めた。特技はヴィオラを弾くこと、オーケストラで演奏すること。

 

自分の意見を持ち、臆せず伝えられるようになろうと決めた

 

――――愛媛Food Campではまず、自分のキャリアについての棚卸しを行います。三好さんは自分自身の強みや弱みをどのように分析し、愛媛Food Campでの目標設定に結びつけましたか
 
研究室での実験・研究の仕方や、アルバイト先のパン屋での働き方を振り返り、「やるべきことの計画を立て、丁寧に正確に進められる」点が自分の強みだと考えました。アルバイトでは閉店間際のシフトに入り掃除をすることが多いのですが、周りの社員から「いつも隅々まで丁寧にやってくれてありがとう」と言っていただけます。
 
一方で、だからこそ、じっくりと時間をかけすぎてしまい、目の前のことに集中しすぎてしまうことも…。自分の意見をはっきり伝えられず遠慮してしまうことも多いので、愛媛Food Campでは、自分の意見を持ち、臆せず提案できるようになりたいと考えました。
 

三好さんの自己分析シート



 

社内のさまざまな関係者に出会い、商品開発で考えるべきポイントの多さを学んだ

 

――――愛媛Food Campでの具体的な活動内容を教えてください
 
私が今回お世話になった朝日共販さんは「釜揚げしらす」を展開するメーカーです。しらすの好漁場である四国最西端の岬・佐田岬に工場を持ち、獲れたしらすを漁からわずか30分で工場へ運び釜揚げするなど、鮮度に徹底的にこだわっています。
 
そこで与えられた課題は、「釜揚げしらすには使えないしらす(赤腹しらすやクリーム色しらす)を有効活用する」というもの。学部2年生のメンバーと2人で議論を重ね、しらすラーメン、しらす入り魚肉ソーセージを提案しました。
 
最初に提案したのはすり身でした。しかし、しらすの目玉の黒色により全体が灰色になってしまうと指摘を受け、色味が気にならない商品としてラーメンとソーセージに行き着きました。提案の過程ではしらす漁見学、工場見学を通して、工場長や社長、役員の方から釜揚げしらすがどうやって作られるのかを直接教えていただきました。製造工程では、人の目で、しらすの中に貝殻などの異物が含まれていないかを最終確認していて、「ここまで丁寧に作られているのか」と驚かされました。
 
試作品づくりの段階で、しらすを麺に練り込むことは難しいという結論になり、最終的には釜揚げの煮汁をラーメンスープに使ったものと、しらす入り魚肉ソーセージの試作品が完成しました。
 
スープ案は、工場見学のときに釜揚げの煮汁がそのまま廃棄されていることを知り、「有効活用してスープに使えないか」と私が提案をしたことで実現しました。社長をはじめ、社員の皆さんが学生の意見に真摯に耳を傾けてくださり、改善すべきところはきちんと指摘し、いいものは取り入れようと動いてくださいました。それがとてもうれしかったです。
 

しらす漁は、朝日共販の社員(漁師)が行っている。「工場は漁場の目の前。スピーディーに加工できる環境からも鮮度へのこだわりを感じました」(三好さん)

 
――――実際に、商品を開発するというプロセスの中でどんな気づきがありましたか
 
ラーメンやソーセージの提案に至るまで、パンやクッキーなどさまざまな商品案を考え、提案させていただきました。その際、しらすの特性上、商品化が難しいという指摘のほかに、開発にかかる費用、賞味期限、見た目、味のおいしさなどいろいろな観点から意見をいただきました。それらの意見から、企業として商品開発にお金と時間を投じていく以上、長く売れるもの、開発しやすいものを見極めなくてはいけないという厳しさを初めて知りました。
 
また、商品開発においては、社内の漁師さん、工場の方、開発担当などさまざまな職種の方と議論しながら進めていかなければならないこと、さらに商品によっては専門の協力会社さんとの連携が必要なのだと知り、一つの商品に本当にたくさんの方が携わっているのだと知ることができました。

 

リーダーとしての責任感が、自ら提案し意見を求める姿勢につながった

 

――――参加前に目標にされていた「自分の意見をしっかり伝える」点について、どれくらい達成できたと思いますか
 
チームメイトが後輩の学部2年生だったので、私がリーダーとして動かなければ…という責任感が芽生えました。社員の方に対して自分から積極的に提案したり、「ほかに意見はある?」「どう思う?」と、後輩が発言しやすいよう質問を投げかけたりと、少しはリーダーシップを発揮できたかな、と思っています。
 
愛媛Food Campの経験を経て、大学院の研究活動でも周りに対して「もっとこうしてみたら?」とアドバイスしたり、周りから意見をもらおうとコミュニケーションを取りに行ったりと、自分から動けるようになったなと感じています。
 
朝日共販の皆さんが、年齢や経験問わず私に意見を求めてくれ、フィードバックをしてくれたことはとても大きかったです。双方向のやりとりを大切にしてくれたから、「意見を発すれば、自分に返ってくる」と自信が生まれたんだなと思っています。
 
――――今後どのようなことを目指していきたいと考えていますか
 
商品開発の面白さ、厳しさを知り、改めて実験・研究でもっと知見を増やしていきたいと感じました。いずれは、機能性成分を商品に活かせるような技術系の視点から、商品開発に携わっていきたい。企業で開発する以上は、「こんなもの作ってみたい」という理想だけで物事が進むことはないと知ったので、事業につなげられるような根拠を持って提案できるように、まずは大学院の勉強を通じて力をつけていきたいです。
 
 

【指導教員の視点から】

愛媛大学大学院農学研究科生命機能学専攻教授
菅原卓也さん


 
後輩との協業により、リーダーとしての発信力が引き出された
 
学部2年生のメンバーと組んだことで、「自分が責任を持って面倒を見なくては」という意識が非常に高まりました。もともと何事にも前向きに取り組める学生ですが、自分から発信して動いていくのが少し苦手な印象でした。
 
しかし愛媛Food Campでは、煮汁を使ったスープの提案をはじめ、とてもいいアイデアを出して社員の方にも意見していました。プロジェクトを自分が成功させなくては…と思わせる厳しい環境が、彼女が持っていた積極性を大きく引き出したのだと思います。
 
研究室でも、学部3年生など後輩に対して研究方法に関するアドバイスをするようになりました。愛媛Food Campで経験した開発プロセスは、研究にも通じます。実験しデータを集め、結果について考察し、考察から見えてきた次の課題を解決するための研究計画を立てる。改善を重ねて次につなげていく。企業での実務を経験したことで、研究活動でも的確な計画立案や指導ができるようになり、とても頼もしくなったなと思っています。
 

 

取材・文/田中瑠子

 

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