2022.03.24

これからの「働く」を考える Vol.10 機能性食品開発を手掛けたい――。将来の目標が明確になり、研究意欲につながっている

愛媛大学農学部と愛媛県内の食品関連企業との産学連携による新たなインターンシッププログラム「愛媛Food Camp」が2021年4月にスタートしました。「愛媛県の地方創生を食品業界がリードする」という実践型インターンシッププラットフォーム「愛媛Food Camp」は、学生のどんな学びにつながっているのでしょうか。

FM愛媛でのインターンシップに参加した、愛媛大学農学部生命機能学科1年の佐々木穂さんに、プログラムを通して得た学び、見えてきた今後の目標についてお話をうかがいました。

 

愛媛大学農学部生命機能学科1年
佐々木 穂(ささき・みのり)さん


※記事は、2022年3月10日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Profile】

愛媛県今治市出身。人の命や健康に携わる食の仕事に就きたいと考え、健康機能性食品の商品開発を学べる愛媛大学農学部生命機能学科健康機能栄養科学特別コースに入学。じっくり腰を据えて研究に取り組める大学院までの6年制の特別コースで入学した。企業の開発現場を経験できる「愛媛Food Camp」の取り組みを知り、「自分がやりたいことと合致している」と参加を希望した。

 

周りを気にして意見を出せない弱点を克服したかった

 

――――愛媛Food Campではまず、自分のキャリアについての棚卸しを行います。佐々木さんは自分自身の強みや弱みをどのように分析し、愛媛Food Campでの目標設定に結びつけましたか
 
バレエを5年間、バスケットボールを9年間続けてきた経験から、一度始めたことは「最後まであきらめない」点が、自分の強みだと分析しました。バスケットボールではキャプテンやサブキャプテンを任されることが多く、チームを同じ目標に向けてまとめていった経験も強みになっていると思います。
 
一方、チームでは、さまざまな考えを持つ仲間の意見を聞く必要があります。周りを気にしすぎて、決断するまでに時間がかかったり、なかなか自分の意見を押し出したりできず苦労したことも多くありました。そこが弱みだと捉え、愛媛Food Campでは、どんな議論においても自分の意見を持ち、伝え切れるようになろうと目標を定めました。
 

佐々木さんの自己分析シート



 

原価や賞味期限など、商品化に向けて現実的に考えるべき視点を学んだ

 

――――愛媛Food Campでの具体的な活動内容を教えてください
 
参加したのはFM愛媛での商品開発プロジェクトで、私のほかに3年生2名、4年生2名の計5名で活動しました。FM愛媛は公式通販サイト『FMマルシェ』を運営しており、そこで発売できるような「愛媛県内の食材を使った商品」の立案を任されました。
 
当初は、「松山長ナスを使った特産品開発」がテーマだったのですが、愛媛Food Campを一緒に進めた社長と商品開発担当の方が「使いたい食材から考えてもいいよ」と言ってくださり、メンバー一人ずつ、ゼロから提案させていただけることに。
 
そこで、知られざる愛媛の名産であるキウイをプレゼンしたところ、季節的にも入荷しやすいことから採用が決定。「キウイを使った商品開発」を手掛けることになりました。愛媛Food Campの活動期間内に商品化までは難しかったのですが、最終的には、「キウイ畑のご褒美ソース2種」の試作品づくりに携わることができました。


佐々木さんのチームが提案した「キウイ畑のご褒美ソース」の試作品。「愛媛県はキウイの生産量が日本一なのにあまり知られていないことから商材にしてみようと考えました」(佐々木さん)

 
――――実際に、商品を開発するというプロセスの中でどんな気づきがありましたか
 
まずは、チームの先輩たちのリサーチ力やプレゼンテーション力の高さに驚かされました。使う食材を提案する際も、なぜその食材がいいのか生産量グラフとともにきちんと示し、参考文献までつけて提案。相手に分かりやすく伝えるにはどんな情報を調べるべきなのかを考え抜いていて、力の差を実感しました。
 
社長や社員の皆さんからは、商品化に向けて考えるべき視点の多さを学ばせていただきました。原価がいくらかかるのか、賞味期限の長さ、1つの商品に必要な材料の種類などの観点から指摘をいただき、“インスタ映え”などSNSを活用したプロモーションの可能性について聞かれたことも。トレンドを意識する大切さにも気づかされました。「愛媛県内の食材」という大きなテーマを任せてくださったことで、難しいこともたくさんありましたが、いろいろな気づきを持てたことが本当によかったと思っています。

 

学生の意向を尊重してくれ、「伝えよう」という意欲を引き出された

 
――――参加前に目標にされていた「自分の意見をしっかり伝える」点について、どれくらい達成できたと思いますか
 
チームメイトの上級生と、自分とを比較して「全然できていない」と落ち込むこともありました。でも、「今の自分に提案できることはこれ!」「つたなくてもまずは伝えよう」と意識的に発信できるようになったかなと思います。
 
それまでの自分は、周りの意見に任せてしまいがちでした。でも、FM愛媛では一人ひとりに発表や提案の機会をくださったので、「自分ならどう考えるか」を突き詰めることができました。先輩や社員の方が「大学1年生なのにすごいね」と、あたたかく見守ってくださり、周りに恵まれて、のびのび活動することができました。
 
――――今後どのようなことを目指していきたいと考えていますか
 
愛媛Food Campを通して、商品開発の面白さや難しさを実感しました。企業によって愛媛Food Campでの活動内容も異なると思うので、ぜひ来年度以降も、ほかの企業でのプロジェクトに参加して、さらに広い視点を身につけたいです。FM愛媛ではコロナ禍の影響で活動が全てオンラインだったので、対面でのプロジェクトに参加できれば、より深い議論や意見交換ができるのではないかと期待しています。
 
2年生になると大学での実験も本格化します。「機能性食品開発を手掛けたい」という将来の目標が明確になったので、食材が持つ健康機能と掛け合わせて研究にも力を入れていきたいです。
 

【指導教員の視点から】

愛媛大学大学院農学研究科生命機能学専攻教授
菅原卓也さん


 
自分の知識レベルに応じて、愛媛Food Campで学べることも変わってくる
 
学部1年生での愛媛Food Camp参加で、知識の面では分からないことも多く苦労されたかもしれません。しかし、佐々木さんは上級生にも自らコミュニケーションをとり、とても意欲的に活動していました。
 
健康機能栄養科学特別コースを選んだ時点で「企業との共同研究を通じて商品開発に積極的に取り組んでいる」点に魅力に感じており、食べ物の健康効果に高い興味を持っている学生です。今後、2年生になれば食品の健康機能に関する専門的な勉強もスタートし、3年生からは研究室での活動が始まります。愛媛Food Campで学んだことを学業と結びつけて考える視点もより深まってくるのではないでしょうか。
 
1年生の段階で、企業の社長や社員の方と直接やりとりし、面白さや難しさ、違和感を抱いた経験は、これからの仕事探し、キャリアを考える上で非常に貴重な糧になるでしょう。来年度、再来年度もまた愛媛Food Campに参加してみると、自分の知識レベルによって感じること、吸収できることの幅の違いに気付くと思います。来年度も引き続きFM愛媛のインターンシップに参加してもいいですし、まったく異なる事業やカルチャーを持った企業にチャレンジするのでもいい。「自分はどんな仕事に向いているのか」「どんな働き方がしたいのか」を考えるヒントをたくさん得てほしいと考えています。
 

 

取材・文/田中瑠子

 

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