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2020.12.25

【採用注力事例】世の中が厳しい時こそ、将来への投資を! 逆張り採用が事業拡大を推進する

コロナ禍の影響を受けた航空業界をはじめ、異業種から出向者を受け入れると発表した、家電販売店のノジマ。新卒採用も拡大する方針です。リーマン・ショック時にも採用を拡大したノジマの戦略とは、どのようなものなのでしょうか。「日本初」「業界初」にこだわり続ける、採用と事業拡大の関係について伺いました。

【いま、新卒採用に注力する理由】
Vol.7 株式会社ノジマ

取締役兼執行役人事総務部長 田中義幸さん

※記事は、2020年12月4日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Company Profile】

1959年設立。先見性と速攻力で時代先行型の店舗展開を実現し、急成長を遂げる。2015年にITX、2017年にニフティ、2019年にCOURTS Asia Limited(本社:シンガポール)を子会社化するなど、事業拡大・グローバル展開を進めている。日本初・業界初にこだわり、IoT時代の先の、新しい業種構築も図っている。2016年より東証一部上場。グループ従業員数10,182名 (2020年9月末時点)

 

生活必需品を自社従業員が提供する強さ

 

当社は現在、デジタル家電専門店運営事業、キャリアショップ運営事業、インターネット事業、海外事業の4つ事業を展開しています。
 
売り上げ構成比ではデジタル家電専門店運営事業が一番大きく、全体の約50%です。関東を中心に約190 店舗出店しています。その次に大きいのが、キャリアショップ(携帯電話販売店)運営事業で、全体の約30%です。全国約660店舗を運営しています。インターネット事業は、グループ会社のニフティが展開しています。店頭で当社従業員がブロードバンド接続サービスをご案内する等、デジタル家電販売店事業との相乗効果も生まれています。海外事業では、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カンボジアの4か国で家電・IT製品の販売をしています。
 
当社の強みは二つあります。
一つは業種としての強みで、「家電」という生活必需品や「通信」という生活インフラを扱っていることです。コロナ禍においても、2020年度上期は過去最高業績となりました。在宅時間が増えたことで生活関連商品を見直された方や、生活家電へ支出を増やした方も多かったのではないかと捉えています。

 
二つ目は企業としての強みで、店舗ではすべて自社従業員が対応していることです。他社の家電量販店には、メーカー販売員の方も多く配置されています。当社の店舗ではどこにお越しいただいても、誰に声を掛けていただいても、当社従業員がお客様に対応します。以前は当社の店舗にも、メーカー販売員の方がいました。しかし、メーカー販売員は、自社製品しか紹介しません。2005年頃、「お客様の目線で考えたとき、何が正しいのか」を突き詰めた結果、従業員が全メーカーの商品を理解した上でご紹介する方針に改めました。当社ではよく、「お客様のために」ではなく、「お客様の立場に立って」という言い方をします。お客様と同じ側、同じ視点で、物事を見ようというスタンスの表れです。
 
従業員を採用・育成するためには、採用費、教育費、人件費がかかります。それでも、人に対する費用は何を置いてもかけるべきだと考えています。店舗従業員の対応がよければ、お客様に信頼していただけるようになり、何度も足を運んでいただくことに繋がり、その連鎖が事業として成り立っていくと捉えています。

 

経営者視点の店舗運営、お客様視点のコンサルティング

 

人材に投資していくには、各店舗が地域のお客様に喜ばれていく工夫が必要です。工夫の一つが、各店舗の運営を店舗従業員に任せていることです。ノジマの店舗は約190ありますが、店舗の立地、出店エリアの特性、規模はさまざまです。大型店では、自分が担当する商品群をしっかりと把握し、お客様が比較検討するための情報を提供することが求められます。小型店では、一人の従業員が複数の商品群を担当することも。例えば、テレビの購入相談をしているお客様が掃除機も探していれば、併せてご相談に応じます。すると、お客様から「この人に相談すれば、なんでも分かる」と思っていただけますし、家電を買うならまずノジマへ、と思っていただけるようになり、店舗売上の向上につながります。
 
こうしたお客様対応の工夫や、売り場、人材配置、販売方法の工夫も、すべて店舗従業員に任せています。従業員は、「自分が社長だったらどうする?」と考え、店舗当たりの売上を高める取り組みや、店舗の運営コストを下げるための取り組みを行っています。
 
もう一つの工夫が、お客様へのコンサルティングに掛ける時間を創出するために、ほかの業務作業を減らすこと。一例として、店頭商品につける「プライスカード」(値札)を、2019年にすべて電子化しました。価格変更のたびに作り変える必要が無くなり、お客様へのコンサルティングに掛けられる時間を増やすことができました。当社の店舗には、情報を比較しながら購入検討していただく商品が多いため、お客様へのコンサルティングの時間が重要なのです。

 

景気が悪いときこそさまざまな人材に集まってもらえる

 

当社は2020年11月に、コロナ禍の影響が厳しい航空業界からの出向者を受け入れると発表しました。高い接遇スキルを持つ人材を受け入れることにより、当社従業員の接客レベルをさらに向上させられる機会と捉えています。
 
新卒採用についても、2020年卒採用では約300人、2021年卒採用でも約300人を採用。2022年卒採用では、約500人の採用を予定しています。当社はリーマン・ショックの直後にも、小売業界が軒並み採用を圧縮した中で新卒採用を拡大しました。結果、さまざまな人材が当社に集まってくれました。
 
当時入社した従業員は、店舗販売を経験後、当社のさまざまなポジションで活躍しています。例えば、2011年に新卒入社したベトナム出身の従業員は、現在36歳で、海外事業の責任者として、東南アジア4か国のマネジメントを担当しています。ノジマの国内全店舗の事業責任者の役員も32歳です。いま活躍している若手は、リーマン・ショック直後に入社した人が多いのが事実です。リーマン・ショック後には、業績が厳しい時期もありましたが、当時の採用への投資があったからこそ、試練を乗り越えられたのだと思います。
 
集まったさまざまな人材が活躍する場を作るためにも、景気の波や自社の短期業績に左右されずに、あらゆる出店チャンスを探しています。普通の家電販売店だとある程度の床面積がないと出店しないものですが、ノジマでは300~400坪あれば全ラインナップをそろえた店舗を出店可能です。これができるのは、多様な商品が狭い場所に集まっていても、複数の商品群の知識を持ち合わせた店舗従業員が、柔軟にお客様にコンサルティングできるからです。
 
コロナ禍が何年続くかわかりませんが、回復に向かっていくことは間違いありません。回復してからではなく、いま、回復後に向かってアクセルを踏んでいく方が、会社の発展にもつながります。

 

「出る杭は伸ばす」を実践する人材育成

 

今後、当社のグループ全体では、多様な事業が拡大していきます。当社に入社した従業員はまず、店舗でコンサルティングセールスの経験を積んでいただきます。その後さまざまな部署で活躍していただきます。店舗で活躍し続ける人、新規事業に携わる人、グループ会社やM&Aで一緒になった会社へ、当社の理念やノウハウを伝えていく人など、さまざまなタイプの活躍が期待される人を必要としています。
 
当社では、「出る杭は伸ばす」という考え方に基づいて、若い人に仕事を任せていきます。アイデアがあれば聞き、成長が期待できるならば重要なことを任せます。店舗従業員は、お客様へのヒアリング、コンサルティングのノウハウを徹底して学び、店舗での経験を通して、自ら企画やイベントを考え挑戦するようになります。当社には、「提案はすべて許可」という言葉があります。どのような立場の人でもアイデアを提案できる仕組みがあり、上司へのプレゼンを通して、アイデア実現へのプロセスを学んでいきます。上司は、仮説が甘ければ指摘して再提案を促します。失敗する可能性があっても、挑戦させてみて、失敗を一緒に検証し、次のチャレンジへのヒントを探します。「失敗のススメ」という言葉もあります。社長をはじめ、みんな失敗を通して成長してきたことで今がある、ということは会社説明会でも赤裸々に伝えています。
 
ですから、当社で活躍している人には、失敗を素直に受け入れて動けるタイプの人が多く見られます。うまくいかない場合でも、次はどうしようかと考えられるので、失敗の数を重ねれば重ねるほど、成長していい仕事ができるようになっていきます。

 

チャンスをつかみ取る機会はいくらでもある

 

当社が2016年東証一部に上場した後、採用した従業員の離職率が上がった時期がありました。当時を振りかえると、学生の皆さんに会社規模や経営の安定性を注目されていたのではないかと思います。いまは、当社の「コンサルティングセールス」の仕事は、自ら勉強が必要で、アイデアを出すことが推奨されることをお伝えしています。向上心を持って成長していきたい人にとっては、やりがいのある会社だと感じてもらえているのではないでしょうか。
 
社内制度でも、社命による異動以外に、オーダーエントリーと言って、社内公募で興味ある事業・ポジションに応募、異動できる制度があります。応募に上司の許可は必要なく、選考に合格すれば異動となります。店長が店舗従業員に対して、「こういう事業のメンバー募集があるけど、前にやりたいと話していたね」など、定期的な業務棚卸の機会を通じて、チャレンジを促すこともあります。
 
今後は、社内インターンシップ制度等を取り入れて、若手従業員がさまざまな部署を経験し、店舗や他部署にいい影響を与え合えるようにしたいと思っています。海外展開が増えるにあたり、一年間の海外研修を経てから異動を考えるなどの方法も含めて、社内の人の動きを活性化していく方針です。
 
自らチャンスをつかんで、やりたいことを実現していく人の活躍を、期待しています。
 
 

ノジマでは、メーカー販売員に頼らず自社店舗従業員が対応することで、地域のお客様に喜ばれる店舗運営を目指しています。

 

取材・文/衣笠 可奈子

 

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