さまざまな分野で活躍する有名人の方々を直撃インタビュー。
もしも今の仕事をしていなかったら、どんな職業を選んでいたかを想像していただきました。
どんなお話が飛び出すでしょうか。
Vol.11 坪田塾 塾長 坪田信貴さん
通称『ビリギャル』として知られるベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40 上げて慶應大学に現役合格した話』の著者・坪田信貴さん。名古屋を中心に9校を展開する個別指導学習塾の塾長を務める一方、テレビやラジオ、講演会でも活躍している。
そんな坪田さんが、もしも塾の先生になっていなかったら、やってみたかった職業とは?
つぼた・のぶたか●累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを“子別指導”し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタントなどもつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。新著に『才能の正体』がある。
――塾の先生になっていなかったら、「やっていたかもしれない」とか「やってみたかった」と思う職業はありますか?
歌手になりたいです。歌ももちろん好きですし、歌手って職業としてめちゃめちゃいいなあと思うんですよ。
――歌手のどういうところに魅力をお感じになりますか?
『ビリギャル』を書いた後に全国各地の講演会に呼んでいただいて、これまでに約15万人の方々が来てくださったんですね。で、ありがたいことに、講演の内容をほめてくれたり、『ビリギャル』の感想を話してくださったりします。
すごくうれしいなと感じつつ、あるとき唐突に思ったのが、講演で僕が話したことや、本に書いたことを10年、20年後も1字1句覚えている人というのはまずいないだろうなと。一方、歌というのは、子どものころに好きだった歌は最初から最後まで全部歌えたりしますよね? 10年、20年前の歌でも、イントロを聴いただけで歌詞を思い出したりする。そう考えると、歌が持つ訴求性とその持続性というのは尋常ではないなと思うんですよ。僕が労力をかけて10万字ほどの本を一冊書いても、10年後に覚えていてもらえるのはせいぜいあらすじぐらいなのに(笑)。もちろん、歌手の方たちにもご苦労があって、そのたまものだと思いますが…。
――「もっと伝えたい」という思いが強いんですね。
うーん。どちらかというと、「伝えたい」よりも「聞きたい」の方が大きいんです。自分が発信したいというよりは、いろいろな人の話を聞いてみたいし、いろいろなことを知りたい。そして、自分が聞いたこと、知ったことを、「この人、こういうところがすごくない?」とたくさんの人に伝えたい。塾で教えるのも、自分が学んできたことを「これって面白いね」と伝えるのが好きだから楽しいんです。
執筆、講演の仕事もそうですし、会社の経営にしても同じで、「こういうすごいもの、面白いものがありますよ」と世の中に広めていくことが好きなんでしょうね。そのための手段にこだわりはなく、省力化できればできるほどありがたい。だから、メッセージを効率的に伝えることができるという意味で、歌手になれたらと思ったりします。
――今からでも遅くないです!
いやいや、歌うのは好きですが、鼻歌程度です。やはり、プロの歌手というのはすごいですよね。生まれ変わったら、なってみたいです。
<就活生の「つぶやき」コーナー>
就職プロセス調査の回答者から寄せられた「つぶやき」にゲストが何か言ってくれるコーナー。
<坪田さんチョイスの「つぶやき」>
親から就活に口を出されていら立っている。
(就職プロセス調査 大学院生・理系・男性)
そうか、そうか。きっといろいろ背景があるんだろうなとは思うんですけど…。
シンプルに言うと、コミュニケーションの問題なのかもしれないです。親御さんが口出しをするというのは、心配をしているということですよね? 「もっと信頼してほしい」という気持ちもわかりますが、親御さんに信頼してもらうためには、コミュニケーションを取って、就活に対する自分の考えを理解してもらう必要があります。まずは、それができているかどうかを振り返ってみるといいかもしれないです。
――親にはつい甘えて、「話さなくてもわかってくれる」と思いがちですよね。
そうです、そうです。ただ、こう考えてみてほしいんです。これまで親御さんにはいろいろお世話になってきたでしょうし、学生時代は学費や食費を出してもらう人が多いですよね。この方もそうだとしたら、親御さんというのは「スポンサー」なんです。
スポンサーに対する説明は、仕事で何かをやろうというときには必ず求められます。会社のお金でイベントをやるなら、上司に説明をしなければいけないし、例えば、広告会社の営業担当が取引先に広告を出してもらうためには、当然、取引先の担当者に広告のメリットを理解してもらわなければいけない。そのためのコミュニケーションができていないのに、「口出しをされて、苛立つ」というのは、社会では通用しません。このつぶやきの「親」と「就活」という言葉をそれぞれ「スポンサー」と「仕事」に置き換えて読んでみたら、納得してもらえるんじゃないかなと思いますが、どうでしょうか。
就職活動では大変なこともあるでしょうし、身近な人に甘えたくなる気持ちはよくわかりますが、あえて厳しいことを言わせてもらうと、スポンサーに口出しされて苛立っているうちはまだ「学生」です。親御さんとのコミュニケーションも社会人への一歩と考えて、少しずつ工夫をしていってもらえたらいいなと思います。
Information
坪田さんの著書『才能の正体』(幻冬舎)では、塾の先生として1300人の生徒に向き合ってきた経験に基づき、個人の才能を伸ばすための具体的な方法が語られている。社会で力を発揮していくためのヒントをくれる一冊。
※本文は2019年取材時の内容で掲載しております
取材・文/泉 彩子 撮影/鈴木慶子
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