今後、一層の拡大が予測されるインターンシップ。導入する企業にとっては、プログラムの企画や運営のブラッシュアップは今後の課題となりそうです。本記事では、北海学園大学の「GIP(北海学園インターンシッププログラム)」協力企業への取材を実施。本記事では、各社の取り組みや成果についてレポートしていきます。
※取材にご協力いただいた、庶務部 梶原 めぐみ氏
社名(所在地) | 株式会社東急百貨店 札幌店 |
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会社情報 | 百貨店業 |
従業員規模 | 2345名(2014年1月31日現在) |
同社のインターンシッププログラムの特徴
- 10年ほど前より、札幌店独自のプログラムを5日間実施。(実施していない年もある)
- 新卒採用への応募学生の減少などを背景に、東急百貨店への興味喚起と、百貨店での仕事理解・業務理解を深めること、会社のPRの強化などを目的にインターンシップを開始する。
- 2012年夏のインターンシップからは、直接大学にアプローチしている。
- 学生は催物場の運営に加わり、通常のスタッフと同様の百貨店業務を体験する。
実施の流れ
- 1日目
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- 札幌店として毎週行っている「入店前教習」に、インターンシップ生も参加。
- 2日目
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- 朝礼の見学。(※毎日実施)
- オリエンテーションを行う。担当者からの会社説明、学生による自己紹介、インターンシップの目標設定などに取り組む。
- 毎週レギュラー放送している、社員が出演するテレビショッピング番組(生放送)を見学。番組作りの現場を見て、放送終了後には関係者に質疑応答の時間も設ける。
- 3日目
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- 朝礼に参加。
- 催物場の会場運営に加わる。通常の売場での業務は難しいが、催物場は事前に習得(勉強)しておくべき範囲が限られるので、通常スタッフと同様の業務にあたることができる。
- 4日目
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- 朝礼に参加。
- 前日に引き続き、催物場の会場運営。
- 5日目
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- 午前中まで、引き続き特設展の会場運営。
- 社員たちが参加する「接客ロールプレイング大会」を見学。審査シートを見ながら、社員の実演を見ることで、接客するうえで大事にしていることなどを学ぶ。
- 新人研修に近いかたちで、接客のロールプレイング研修を行う。百貨店の特徴である「対面での提案」を体感するために、「挨拶→ヒアリング→提案→クロージング」という流れを経験。さらにグループワークで考える時間も設ける。
- いきなり現場に出すことの難しい百貨店業務だが、
催物場を活用することでお客様へのサービスを体験してもらう - 百貨店は、高いレベルでの対面サービスが求められる職場です。そのため、百貨店のお客さまが期待しているようなサービスを、業務経験の無いインターンシップ生が提供することはできません。しかし、参加学生には実際に販売・サービスや売場運営を体験してもらいたいと考え、定期的に催物場で開催される「物産展」を活用しています。特設展であれば当該商品や展示についてしっかり学べば、スタッフとして活動することができます。もちろん、単に売場に立たせるだけではアルバイトと変わりませんから、周囲も含め「業務にしっかりと関わらせる」という意識も必要です。そのために、フロア長など現場に目的をしっかり伝えて受け入れてもらうといった、密なコミュニケーションをとっています。また、売場に立つために、毎週行っている新規入店スタッフ向け研修や、新入社員用の資料などを利用した座学など、しっかり受講してもらっています。
店舗型ビジネスを行う企業は、インターンシップの受け入れが難しいという話をよく聞きます。その解決策として、同社の物産展などの「イベントへの参加」という形態は店舗型のビジネスを行う企業には参考にできそうですね。
- 百貨店の仕事に興味喚起させることで、インターンシップ参加者の7割が応募に
- インターンシップへの参加を通じて、これまで百貨店を「仕事場」と見ていなかった学生の意識を変えることに成功しています。 参加した学生からは、「第1志望は金融だったが、インターンシップを通じて『本当は接客の仕事が好きなんだ』と知ることができた」「実際の業務現場を見たり体験したことで、自分がそこでやっていけそうかを確かめることができた」といったコメントが集まっています。また、「実際に社員として働いた場合を考えると、とても大変な仕事なんだということを感じ取ることができた」といった、職場として捉えるきっかけになったという声もありました。インターンシップへの参加をきっかけに、学生の気持ちに変化が起こっていることがよくわかります。
あくまでインターンシップと採用活動は別物ですが、参加学生の約7割が応募に至るという結果になっています。社会人と同じ立場に立って販売・サービスの実践をすることを通じて、「仕事・職場としての認知・理解」が進み、「学生自体の成長」や「会社や仕事に対する共感や志望」につながることは自然なこととも言えるでしょう。もちろん、学生がしっかり学べる・成長できるプログラムが用意されていることが大前提ではあります。