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2014.01.23

『試職(シショク)』を導入した事例 ~株式会社 HDE~

独自の進化を遂げた「課題解決型インターンシップ」で、創業時と変わらぬ“濃く深いコミュニケーション”と、“資質の見極め”を両立。

新たなトレンドである『試職(シショク)』を通じた就職/採用活動。この取り組みは、学生と企業のマッチングの進化へのブレークスルーとして機能し始めている。今回はその事例として、株式会社HDEの小椋さん、高橋さん、善養寺さん、山中さんへのインタビューを行った。

左から、
サービスエンジニアリング部 山中 悠さん
代表取締役社長 CTO 小椋 一宏さん
人材開発担当 善養寺 里佳子さん
人事部長 高橋 実さん
社名(所在地) 株式会社 HDE(東京都渋谷区)
会社情報 大手企業・官公庁向けの、メール・セキュリティー製品を自社開発・販売。
独立系ベンダー
主な募集職種 プログラマ、システムエンジニア、コンサルティング営業
従業員規模 従業員75名
採用人数
(試職参加)
3~4名程度
(10名程度)

『試職(シショク)』導入の背景

“濃く深いコミュニケーションを経て、考え方が分かったうえで入社してくれる”状況を保ちたい。

 同社は、小椋さんが大学生であった1996年に設立。「当時は大学生とつながりが多く、インターンシップでアルバイト的に働いてもらい、そこから入社するという流れが主だった。お互いを十分知ることができ、合わなければインターンシップに来なくなるので、入社後にミスマッチだったということは皆無だった」(小椋さん)といったスタートだった。
2000年ごろから新卒採用の公募を開始。会社の規模が大きくなり長期のインターンシップは難しくなっていたが、創業時のように“濃く深いコミュニケーションを経て、考え方を分かったうえで入社してくれる”状況を保ちたいという思いは強く、試行錯誤する中で2003年からは以前より短期での体験プログラムを導入してきた。
学生とのマッチングプロセスとして進化してきた結果、ここ5年間は2日間のプログラムで実施。現在は二次選考として『課題解決型インターン(2日間)』という呼称で実施している。

『試職(シショク)』の内容

さまざまな課題に取り組み、プレゼンテーションを行う「課題解決型インターン」

 同社では、新卒採用を下図のようなフローで実施しており、二次選考の「課題解決型インターン(2日間)」が『試職(シショク)』に当たる。実施概要は下記のようになっている。

≪1日目≫

始業時間から午前中の間に、全体説明や課題について伝え、午後から学生は課題に取り組み始める。説明は、技術部門(受け入れ側)と人事が対応する。1回の受け入れは原則1人ずつで、社内に席を設け雰囲気を感じながら取り組んでもらう。周囲の社員は普通に働いており、「時には怒っている人が居たりもする」(小椋さん)といった環境で、生の社内の雰囲気がよく分かる。
インターン中は 2日とも社員(年齢の近い、学生の希望職種に就いている先輩)と一緒にランチに行く。どちらか1日は社長も参加。お互いに人となりを見る機会となっている。

≪2日目≫

2日目は午前から課題に取り組み、午後はプレゼン資料の作成へ進む。最終的なプレゼンテーションは、1時間。学生側から15分程度のプレゼンの後、45分程度が社員から社会人の目線での質問、レビュー、フィードバックを行う。

≪備考≫
学生に課される課題は、Linux上のメールサーバーアプリケーションのコマンド設定、アプリケーションの機能拡張など。基本的なプログラミングスキルやLinuxの知識なども見るが、それよりも課題を解決していくプロセスを重点的に見ている。

『試職(シショク)』導入の成果

『試職(シショク)』の導入成果(メリット)は学生側・企業側ともにあり、
以下のような内容が挙げられる。

学生側

参加した学生は、能力発揮して気持ちよく帰っていく。

 参加後の学生の様子を同社に聞くと、「学生は能力発揮して気持ちよく帰っていく。」という言葉が返ってきたのが印象的だった。具体的には以下のような例を挙げてもらえた。

  •  「学生の技術・スキルが様々なのでプレゼンも様々。『この課題に関しては、手つかずで終わってしまったが、こういうやり方をしたい』といった発表もある。ソースコードを見せて説明する学生もいれば、“SMTPの仕組みの説明” を求める課題などでは、技術力よりも説明能力が高いことをアピールする学生もいる。自分の強みを知ってうまくプレゼンしている。」(小椋さん、山中さん)
  •  「プログラミングを経験していた学生は、個人での作業をしたことはあってもチームでのプログラミングを経験したことがないことが多い。実際のプログラマの仕事にはルールやノウハウがあり、学生は課題を通して仕事の仕方や、ビジネスとしてのプログラミングの仕方を知ることができるし、そこに興味を持ってもらえる。 」(小椋さん)

上記の話から想像できるのは、“一般常識”や“学力”のテストを受けるのと異なり、学生にとって課題に取り組むこと自体が刺激を受ける場になっていたのではないかということだ。

企業側

どこまで解くことができるかが重要なのではなく、この過程で資質そのものを見ている。

 同社は、この『試職(シショク)』の過程を、二次選考と置いているが、この過程により入社後の活躍(成長)の可能性を見ることにつなげている。同社のコメントは以下のような内容であった。

  •  「課題をどこまで解くことができるかが重要なのではなく、この過程で資質そのものを見ている。もともとこの業界は進化が速いので、単なる知識では進化に追いつかない表面的には見えないベーシックなスキル(資質)を見る必要がある。たとえば、『今持っている知識やスキルでどのようにアプローチして解決に近づくか、どのように調べていくか』、『どこまで悩んで、どのように相談に来るか』、『何でも聞いてくる/いつまでも抱え込む』などの特性が見えてくる。プログラミングの力としてはOKな学生であっても採用に至らないケースもある。面接でそこをすべてを見ようとするのは難しい。」(小椋さん)

他の点を挙げると、「学生の『次の選考に進みたい』という意志と、HDEとして合格ラインであるという判断はほぼ一致する」、「内定辞退が減る」「離職率が下がる」といった成果も上がっている。

事例収集・研究担当の着目点

 このケースのポイントは、入社後に必要となる「表面的には見えないベーシックスキル(資質)を見極めるプロセス」として『試職(シショク)』を実施しているということです。この業界で仕事をする上では、単なる知識だけを保有していても、日進月歩の業界の進化にはついていけません。プログラミングの力だけではなく、働くうえで必要な、課題に取り組む姿勢、アプローチ方法、周囲との協働性、あきらめずやり遂げようとする意欲など、さまざまな資質を見極めていくことにつながっています。また、同社が『試職(シショク)』というプロセスを通して、学生との相互理解を深め、入社までの意思決定をしてもらうようなきっかけになっているという点も参考になります。

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