2021.11.24

Vol.5 タレンタ株式会社(IT関連業)【個人と組織の新たなつながり方 -採用・就職活動編-】

AIアセスメントを活用したデジタル面接プラットフォーム「HireVue(ハイアービュー)」を提供するタレンタ株式会社。採用選考におけるAI技術の導入は、企業にとって、そして学生にとってどんな価値をもたらすのか。これからの個人と組織のつながり方について、タレンタ株式会社 専務取締役兼CFOの中村究さんに話をうかがいました。

科学的なエビデンスが1枚増えることで、自身の採用への理解が深まる

タレンタ株式会社
専務取締役兼CFO
中村 究さん


※記事は、2021年10月7日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Company Profile】
HRテクノロジー分野における日本のリーディングカンパニーの一つ。「Work Happy!な世の中を創る」をミッションとして、世界各国から優れたクラウド型HRテクノロジーソリューションと関連サービスを日本市場に展開している。クラウド型デジタル面接プラットフォーム「HireVue(ハイアービュー)」は、米国HireVue Inc.が提供し、タレンタが日本市場で販売。オンデマンドとライブという2つの面接スタイルに対応しており、社会人基礎力を判定しマッチング度の高い人材採用につなげている。

 

AIツールの登場が、「面接官の判断もブレてしまう」という前提理解を広げている

 

----データサイエンスの発展により、採用の領域でも、データ分析技術を活用したエビデンスベースの選考が広がりを見せています。コロナ禍の影響によるオンライン選考の急増、動画面接の浸透をどう見ていますか
 
オンライン化が広がり、企業と学生のコミュニケーションスタイルが大きく変容しています。動画面接への慣れが、企業と学生双方に広がっており、動画面接やAIを用いた面接への理解も高まっていると感じます。
 
動画面接のAI評価を行うサービスを、日本で初めて展開したのは2015年でした。当時は、「なぜ動画で⾯接するのか」「⾯接は膝と膝を突き合わせてやるものじゃないか」と酷評を受け、ごく一部の企業しか話を聞いてくれませんでした。それから6年経った今、学生はオンラインでの動画面接を使い慣れ始めている様子も伺えます。
 
先⽇、東京の有名私⼤のキャリアセンターの⽅々とオンラインで意⾒交換会をする機会があり、興味深いご意見をいただきました。
 
それは、「いまの学⽣は、対⾯での⾯接を信⽤していない」というもの。⾯接で落ちると「あの面接担当者に当たったのが不運だった。違う人なら結果は違ったのでないか」と考える学生が一定数いるそうです。人の評価に不信感があり、「AI評価で落ちる方が、納得感がある」というお話でした。もちろん、一部の声ではありますが、こうした意見が出てくること自体に、社会の変化を感じます。
 
 
----なるほど、そのような反応もあるのですね。改めてAI評価の動画面接の仕組みやサービス特性、どのようにAI分析を行っているかを教えていただけますか
 
「HireVue」の AI アセスメントは、ビデオインタビュー(録画⾯接)機能を使⽤して、専⽤の AI 質問を学生(候補者)に提⽰します。その回答内容から、“仕事の成功に関連する行動特性”を分析していきます。
 
ポイントは、各企業が求める行動特性によって、AI質問を選択できるところ。AIはフリートークから人を測定することはできないので、「この質問で得られる回答が、業務能力に直結する」というエビデンスに基づいて質問を設計しなければ、AIの力を発揮できません。
 
この“仕事の成功に関連する⾏動特性”は、組織心理学に基づいて作成・整理した81の項⽬から成っています。これらは全⽶⼤学就職協議会(National Association of Colleges and Employers)と協議して作られていて、行動科学の知見があることでAI分析の精度を上げています。
 
 
----「質問を選択する」ということは、行動特性に応じた質問内容があらかじめ決まっているということですね
 
そうです。「この質問をすることで、この人のこういう行動特性を引き出したい」という明確な狙いがあるので、質問は標準化されています。全ての質問は組織心理学者が作っており、日本語に翻訳した上で提供しています。さらに、年々分析データが蓄積されてきたことで、「面接の質が向上、均一化し、入社後の定着・活躍との関係が見られた」という声もいただくようになりました。研究を重ねながら、質問内容や回答結果の分析に反映させています。
 
 
----例えばどのような質問を、どれくらいの時間で回答するのでしょうか
 
録画面接自体は25分間。行動特性を引き出す質問は4問ほどで、それぞれに3分程度で具体的なエピソードとともに答えていただきます。
 
例えば、 “学習意欲”に関するものでは、
「自分が持っている知識やスキルでは解決が難しい課題に直面したときの経験についてお聞かせください。どんな情報源からどのようなインプットを得て、知識やスキルを身に着けていったのかお話しください」
という質問になります。
 
 
----具体的なエピソードベースの回答だと、その内容の分析と点数化が難しそうです
 
そこは、HireVue社が作っている教師データ(AIに予め与えられた例題と回答のデータ)と、学生(候補者)のデータの特徴を付け合わせて判断します。これまでの研究成果により、⼈間の⾏動傾向は⾔語要素との相関が⾼いことが指摘されています。言葉の使い方に特徴が現れるのです。
 
さらに、その⾏動が⾃律的なものか・他律的なものか、⾃⼰完結しているのか・周囲を巻き込む動きができているのかなどに基づき、その企業に入社後に活躍する可能性が高いかどうか、⾏動傾向を予測しています。
 
 
----導入にあたっては、そもそも企業側が採用基準を明確にし、どんな行動特性が求められるかをきちんと理解しなければ、正しく選べないということですね
 
まさにそうですね。採用基準が明確であったとしても、その通りに採用していない企業も少なくありません。
かく言う私自身も、20代の頃に勤めていた企業でリクルーターをしていたときは、自分との相性で主観的に判断していました。人によるジャッジにはブレがあるという前提に立ち、正面から取り組み始めている企業は増えています。それは、AIツールが出てきたことの副産物だと感じています。
 
 

客観的な評価ツールが加わることで、公平性の担保につながる

 

----AIはまだまだ万能ではなく、AIが得意なものと不得意なものがあると思います。その特性をどう捉えていますか
 
人材を採用する基準には「ジェネラル基準」と「ローカル基準」があると思います。社会⼈基礎⼒や認知能⼒など、あらゆる業種・職種において「ジェネラルに求められる職務遂⾏能⼒」の判定は、⼈間よりAIの⽅が客観的で強みが発揮できる領域だと思います。
 
⼀⽅、業界/会社ごとの「ローカルな採⽤基準」や「企業⾵⼟とのマッチング」、特定職務に要求される「専⾨性」については、⻑年その仕事に携わっている⼈が直接⾯接する⽅が正しいジャッジができると思っています。
 
品質の⾼いAI分析を⾏うためには、回答者の⼼理に精通した質問をする必要があります。その意味で「学チカ」(学生時代にもっとも力を入れたこと)や「当社の志望理由」などは評価の良し悪しをモデル化できないためAIアセスメントには適さない質問と⾔えるかもしれません。
 
 
----すると、両者を見るためには、AIと人の共同作業が必要ということでしょうか
 
そうですね。現⾏業務を処理するためのローカル基準と、将来のビジネス機会に対応するためのジェネラル基準は、バランスよく組み合わせていかなければいけません。そのため、AI⾯接の利⽤においては「⼈とAIのハイブリッド選考」をおすすめしています。最終的なマッチングは人間が行うべき領域だというのが、個人的な考えですね。
 
 
----最後は結局人が見るとなれば、AI面接を取り入れる企業側のメリットは何でしょうか
 
企業側の視点では、業務効率化もありますが、客観的なツールが増えることです。バラつきのある面接での理解や評価が磨かれると考えています。
 
例えば、対面の接点が限られたことで、選考初期のスクリーニング(選別)のために「1分のPR動画」を募集したとすると、そのチェックには膨大な時間が必要です。もし、AI分析で評価結果を知ることができれば、かなりの時短につながるでしょう。明確なジャッジ基準が設けられているので、人間が行う際の、動画を見る担当者のタイプ、見た時間帯や順番によって結果にブレが出ることもありません。
 
2000人を面接し、約300人に内定を出したある大手企業では、内定を出した学生とAI面接のは結果を確認したところ、全員、AI面接の上位90%以上にランクされていました。
 
 
----一方の学生側にとってのメリットはどう考えていますか
 
学生側の視点では、公平な判断基準を入れている点が、安心感につながると言えます。先ほどの大学のキャリアセンターの話にあったように、AIで客観的なデータを集めているという公平性の担保になります。
 
また、AI面接を受けた学生には、5分後にフィードバックを送るようにしています。データ分析に基づいた良かった点や改善点を伝えることで、「気づきをいただきありがとうございました」と感想を寄せてくれた方もいました。
 
就活では、何がどう見られているか分からないという不透明性が、学生たちの不信感につながっていることが多いと思います。AI分析により、一人ひとりへのフィードバックという、人がやれば大変な工程を迅速に進めることができ、学生の満足度につながっているのではないかと期待しています。
 
 

エビデンスを集めることが、自社の採用基準に向き合う機会になる

 

---オンライン面接を始め、選考プロセスのデジタル化が進んでいますが、「人じゃなければ分からない」という抵抗感はまだまだ根強いのではないでしょうか。今後、AI面接をどのように活用されるのが望ましいと考えていますか?

 
「⾯接重視」と⾔っている企業も、エントリーシート(ES)や適性検査で事前選考を⾏っています。AI アセスメントを行うことで学⽣側は⾃⼰アピールのチャンスが1 回増え、「⾃分⾃⾝の声や想いを伝えられた」という選考体験が得られると思っています。
 
AI面接を導入した企業様の中には、その判定通りに内定を出していないケースももちろんあります。前述のとおり自社の「ローカル基準」を重要視しながら判断されているケースなどです。
 
その結果はもちろん尊重しながらも、当社としては「AI分析結果はこうでした。最終内定の学生とは、これだけ違いがあります」とデータを示しています。なぜ分析結果とは違う判断になったのかを検証できるようになれば、AI・人の双方の判定のブレが可視化され、採用基準を振り返ったり、AI精度の向上をさせたりするきっかけになるでしょう。
 
エビデンスを集めることで、面接担当者同士の目線合わせがスムーズに行われた企業もいらっしゃいました。実際に採用した人がどういう行動特性があるのかを見ることが、企業の自己理解、自己省察につながると考えています。
 
AIアセスメントは決して、「⾯接重視」の姿勢と背反するものではありません。経験則による俗人的な採用から、科学的エビデンスも踏まえて自社の採用の精度も内省しながら、組織と個人のより深い相互理解が進む一助になればと考えています。
 
 

取材・文/田中 瑠子