2021.10.13

Vol.17 株式会社ニップスシステムセンター【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションのあり方が大きく変化した。対面で行われていた説明会や面接などがオンライン化し、オンライン上のコミュニケーションを学生が支持しているという調査結果もある一方、採用の全工程をオンライン化することで企業からは「企業文化、社風が伝わりにくいのでないか」、「入社意欲を喚起しづらく、内定辞退につながっているのではないか」という声も。

そこで、2022年卒採用から採用活動のフルオンライン化を実施しているニップスシステムセンターに、採用活動や入社後のオンラインコミュニケーションの工夫や実践ポイントをうかがった。

横文字で自社を語らない。事実に基づいた
分かりやすい情報発信を、オンライン化でより意識

株式会社ニップスシステムセンター
SI事業部 開発部門総責任者 新卒採用・中途採用担当
梶原 大輔さん


※記事は、2021年9月21日にオンライン取材した内容で掲載しております。

COMPANY PROFILE

東証JASDAQ上場企業「エイジス」を核とした国内12社、海外11社の企業グループの一社として、1995年の創業以来、福岡を拠点にシステム開発事業、アウトソーシング事業など複数事業を手がける「ニップス」。「ニップスシステムセンター」は「ニップス」の事業拡大に伴い、システム事業部門の分社化によって2020年10月に設立された。モバイルソリューションを得意分野に、自治体、インフラ、金融企業のなど幅広い業種のプロジェクトに携わり、自動運転、FinTech、IoTなど最先端のシステム開発においても実績がある。採用職種はSE・プログラマー職。

 

感染への不安がある状態では、学生本来の姿を引き出すのは難しいと判断

 

−−−−新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、御社では2020年(2021年度卒)の採用活動を初期の説明会を除いてオンライン化。2021年は全行程をオンラインで実施されました。フルオンライン化に踏み切った理由は?
 
20年の選考においては、面接をオンライン、対面のどちらも選べるよう準備していましたが、学生と採用に携わる社員双方に希望を聞いたところ、オンラインを希望する人が半数にのぼりました。
 
当社では選考において学生に場を楽しんでもらい、その方本来の姿を出してもらうことを大切にしており、感染への不安がある状態では、その実現が難しいと判断。採用活動に割ける人材リソースが限られていることもあり、中途半端にハイブリッドで実施するより、オンラインに一本化した方が、学生とのコミュニケーションに集中できると考えました。その結果、「オンラインでもできる」と手ごたえを得たことが、2021年の採用活動をフルオンライン化した理由です。
 
−−−−オンライン化に伴い、学生とのコミュニケーションで工夫されたことはありますか?
 
一般にオンラインの選考は学生が気軽に参加しやすい半面、離脱も多い傾向があるので、面接の結果をなるべく早く知らせるなど対応速度を上げるようにしています。また、オンライン面接に慣れていない学生もいるので、趣味など学生が話しやすいことから会話を始めるなど対面以上に場を温めることを意識しています。
 
ただ、コミュニケーションのあり方を大きく変える必要はありませんでした。むしろ、学生に選考の楽しさや意義を感じてもらうために以前から大切にしてきたことを、オンラインの選考ではより意識して行う必要があると感じています。

 

会社の特徴や風土に関する情報は、「ありのままに」「分かりやすく」伝える

 

−−−−「楽しめる選考」のために、大切にされていることは何でしょうか。
 
学生が「分からない」と感じる要素を少なくすることです。人は分からないものに対し、不安や怖さを感じます。ですから、当社が「何者」なのかをきちんと伝え、学生との距離を縮めることが、選考を楽しい場にするための第一歩だと考えています。そのために大切にしているのは、会社の特徴や風土を「ありのままに伝える」こと。そして、情報を「分かりやすく伝える」ことです。
 
企業には強みも弱みもあります。当社であれば、上場企業のグループ会社の一社のシステム開発部門が分社化して2020年に設立された会社で、分社前の時代からの創業年数は27年。ある程度安定性はありますが、単体では資本金5000万円、従業員数51名(2021年9月現在)の中小企業です。また、当社は2019年度から「社員満足度の向上」を企業目標に掲げ、全社員の給与アップや労務管理の徹底といった「働き方改革」や評価制度改定や管理職の裁量権の拡大などの「組織風土の改革」を経営トップの強い意思のもとで進めていますが、かつては社員満足度が低く、社員の離職が続いた時期もありました。
 
こうしたネガティブになり得る情報を見せずに採用をすれば、ミスマッチが生じるのも当然。そうならないよう、会社のいい面だけでなく課題や問題点も伝え、「弱みもあるけどなぜそのようなことが起きているか、こんな強みがあり、自分にとってはこんなところが魅力」と納得した上で入社していただくことを大事にしています。
 
入社後の職務内容や当社が求める人物像、前年までの採用実績など採用選考に関する情報も、できるだけ詳しく募集要項で開示しています。選考プロセスごとの通過人数も明記しているのは、「小規模な会社ながら、たくさんの学生に応募していただいている」ということをアピールしたかったから。最初から意図したことではないのですが、学生が選考について相場観を持ちやすく、「安心で役立つ情報」として受け止めてもらっているようです。
 
 

『リクナビ2022』の同社の募集要項では、上記のように記載している。20年(21年卒)は5月からフルオンラインで選考を実施し、7月末で応募を締め切りした。初めからフルオンラインで選考した21年(22年卒)の採用は、エントリー:385名(4月末で応募締め切り)、説明会:185名、筆記試験および業務適性診断:67名、面接:12名、内定:5名、入社予定:4名だった。
 
 
また、一次面接の最初に必ず、厚生労働省が示す「公正な採用選考の基準」に則って面接を実施することを宣言。応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力のみを基準に選考を行うことを説明しています。公正な採用選考を実施するのは当然のことなのですが、あえて宣言するのは、学生の皆さんに安心して面接を受けていただくため。実際、「ほっとしました」と笑顔になる学生が多いです。
 
情報開示をし、対等な立場を宣言することで安心し、選考を自分らしく楽しめることが実現できていると感じますね。また、ほかの社員が面接を担当する場合にも、宣言を読み上げることで「公正な採用選考」を意識するようになるという効果もあります。学生の皆さんが主役であることを相互に確認するための「おまじない」みたいなものですね。

 

学生にリアリティを持って伝わるのは、今、ここにある「事実」

 

−−−−会社の特徴や組織風土を「分かりやすく伝える」ために心がけていることは?
 
“かっこいい言葉”を使わないことです。IT企業の職場では横文字の専門用語が飛び交い、募集要項や説明会でも多用されがちですが、抽象度が高くなるので、極力使いません。自分が学生だったら分かりませんもんね(笑)。選考した学生の会社説明会参加社数は、最高で35社でした。オンラインだからこその社数ではありますが、多くの企業の中から「選んでもらう」「分かってもらう」ためには、方言を交えるなどでのフランクな雰囲気づくりも。学生が私たちの話を保護者の方にそのまま伝えても理解してもらえるような、具体的でイメージをしやすい内容と表現を心がけています。
 
−−−−オンラインでは「社員の人柄や職場の雰囲気が伝わりにくい」という企業、学生双方からの声もあります。
 
対面ですと、受付や控室でちょっとした話をしたり、廊下などですれ違う社員の様子から雰囲気が何となく分かる、というのは確かにそうだと思います。何より、オンラインは同時に発言ができない故に、会話が停滞することも。対面での会話は微妙な間合いでの言葉のやりとりもできて、楽しい。個人的には僕も対面の方が好きです(笑)。ただ、オンラインであっても、伝え手自身が会社や社員の考え方や価値観をきちんと整理・分析し、言語化に努めることにより、社風は伝えることができると実感しています。
 
例えば、「組織の風通しはいいですか?」と面接で学生から聞かれ、「会社ではよく“ホウレンソウ(報告・連絡・相談)”が大事と言われますが、話しやすい環境を作るのは上司の仕事なので、当社では、まず上司を教育しています」とお答えしたところ、よく理解していただけたようでした。また、説明会などで会社の課題や問題点を伝えるときは、それらをどう改善していこうとしているのか、実際にどんな取り組みをしてきたのか、考え方や具体的なアクションもお話ししています。オンラインであれ、対面であれ、学生にリアリティを持って伝わるのは、今、ここにある「事実」。会社の本当の姿が伝わるよう工夫するのは企業側の務めだと思っています。
 
一方、「会社を見て雰囲気を知りたい」「社員に対面で会わないまま入社を決めるのは不安」という学生の気持ちはとてもよく分かります。そこで当社では、感染対策を徹底した上で希望者対象の会社訪問&先輩社員との面談を実施。採用担当者は同席せず、先輩社員とざっくばらんに話をしてもらっています。参加はいつでも受け付けますが、これまでのところ参加者は内々定が決まった学生。「面接で聞いたことが、その通りだと確認できた」「選考では聞きにくいことも聞けた」と好評で、会社訪問時にその場で内定承諾の返事をいただくことがよくあります。信頼関係は、入社前に築くものだと思っていますし、納得して入社してもらえれば入社後の離職もありません。

 

面接での質問の順序や内容を工夫し、情報を引き出しやすくする

 

−−−−面接のオンライン化によって、学生について把握しづらくなった情報はありますか?
 
学生に普段の自分を出してもらうのに時間がかかりますし、相手の話が一段落するまで待つ必要もあります。対面なら30分で得られる情報を集めるのに、オンラインでは少なくても45分、長くて2時間かかったことがあります。この点は課題ですが、採用担当者の経験が蓄積されてくれば短縮できると思いますし、大学の授業などで学生もオンラインでのコミュニケーションに慣れてくるのではないでしょうか。時間さえかければ、把握できる情報に従来との差は感じません。そして、何より事実をもとにした分かりやすい情報開示、そして対等な立場であることの理解が相互理解のスピードをあげると思います。企業側が真剣に向き合う姿勢を見せないと、学生も本気で向き合ってくれるはずがありません。
 
当社が新卒採用で重視しているのは、「自分の行ったことや考えについて、しっかり説明できるかどうか」。ただし、表現力の高さではなく、自分で考え、行動できる人物かどうかを判断基準にしています。場慣れしていない学生から十分な情報を得るには、話しやすい環境を作ることが必須。そのため、面接の質問は比較的話しやすい過去のことから聞き、現在、将来に関する質問を時系列でするようにしており、「この流れで質問しますよ」と面接の最初に伝えるようにしています。これはオンライン化以前から実施していることですが、必要な情報を得やすく、オンライン化でより効果を感じています。
 
また、その学生の魅力やいい面を見つけたら、フィードバックしています。当社に応募して「良かった」「楽しかった」と感じてもらいたい、という気持ちから自然にそうしていましたが、学生にとっては話しやすさにもつながっているかもしれません。なお、内定者には採用の理由を伝えており、内定式での内定者紹介スライドにもコメントとして入れています。本人たちは照れ臭そうですが(笑)。
 
−−−−21年卒の新入社員の育成・定着へのオンライン化の影響は?
 
当社の新入社員研修は3カ月の入社前研修(有給)を含め約9カ月間で、新入社員は21年9月現在、OJTでの研修を受けているところ。カリキュラムなどの事情から入社後の研修はオンラインでは実施できず、基本的には例年と変化がありません。
 
ただ、全社的にはリモートワークを実施しており、上司や先輩社員と対面で接する機会がこれまでよりは少ないので、社員がローテーションで出社し、新入社員のケアをするようにしています。また、リモートワークにおいては、ビデオ会議や電話など口頭で会話する場面を多めにしているほか、業務以外のコミュニケーションを促すためにチャットは口頭での会話の補足や雑談専用と決め、気軽に書き込んでもらえるようにしています。また、出社時に席を自由に移動してコミュニケーションを取りやすくするよう、今秋からフリーアドレスを導入予定です。

 

就職活動を行っている学生の皆さんへ

 

これからは「やみくもに『苦労』はしなくてもいいが、自らの『努力』が必要な時代」だと考えています。私自身にも苦労をした経験があり、それが結果的に自分の成長に結びついたと感じる面もあります。でも、組織の中で不要な同じ苦労を皆さんにさせないのが私たちの務め。自らが苦労した経験を「苦労話」として語るだけでなく、そこで何を学び、どうすれば同じ苦労をしないかを次の世代に伝えていく必要があると思います。
 
一方、学生の皆さんには、自身の努力をサポートしてくれたり、認めてくれる環境があるかを見極めて会社を選び、「会社のため」ではなく「自分自身の成長」のために努力をしていただきたいです。採用面接は、自分の努力を応援してくれる会社かどうかを判断する絶好の機会。採用担当者が話をきちんと聞いてくれるか、自分のいいところを見つけて評価してくれるか、といった点をチェックしてみてください。
 

 

取材・文/泉 彩子

 

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