2021.09.22

Vol.4 NSSLCサービス株式会社(IT関連業)【個人と組織の新たなつながり方 -採用・就職活動編-】

会社のいい面、悪い面をオープンに伝えることで、採用マッチングを深めてきたNSSLCサービス株式会社。更なる企業理解につながるようにと、オンライン説明会の新たなスタイルに挑戦しています。学生への同社の情報発信の仕方や、これからの個人と組織のつながりについて、お話を伺いました。

自社の仕事の本質を言語化。リアルや本音を伝えるインタビュー形式の会社説明会

NSSLCサービス株式会社

事業管理センター 総務部 人事Gr
泉谷健太郎さん


※記事は、2021年8月23日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Company Profile】
日鉄ソリューションズグループの一員としてITインフラ事業の技術の中核を担う専門会社。ITインフラの構築・運用・保守、データセンターサービスまで、総合的なサービスを提供している。

 

ネガティブ情報を開示し、自社ならではの“やりがい”に理解を深めてもらう

 

----採用活動において、仕事内容や組織風土などの情報開示を、これまでどのように進めてこられましたか
 
もともと、社内で何でもオープンに共有するカルチャーがあります。そのため、企業説明会や選考でも、エンジニアが仕事の苦労話などもざっくばらんに語り、業務理解を深めてもらうよう意識してきました。
 
私たちが手掛けるシステムの運用保守業務は、24時間365日トラブルなくシステムが動き続けるよう、極めて多くの関係者と密に連携しながら仕事を進めなくてはいけません。自社のチームメンバー、システムを納品している企業様、パートナー企業様と状況を常に共有しながら、不備が起こらないよう先回りしてコミュニケーションを取る必要がある。そんな業務特性上、面倒見がいい人、気配り上手でフォローができる人たちが集まっており、「チームみんなでやっていこう」という雰囲気があります。
いいことも悪いこともすべて共有するのが自然なので、学生に対しても、何でも正直に伝えてきました。
 
 
----学生にとってネガティブに捉えられがちなこととして、具体的にどんなことを伝えることがありますか
 
例えば、システムにエラーが生じたら夜中に呼び出されて対応しなければいけないこと。大変なわりに、改めて感謝されることが少ない仕事であること、などです。
インフラは「問題なく動いて当たり前」なので、システムのことを詳しく知らないお客様からお叱りを受けることも度々あります。それを「嫌だな」と思う方もいると思いますが、当社には、「やりがいは自分の中に持って、感じるもの」と考えるメンバーが多いです。ありがとう、と言葉にされる機会が少なかったとしても、このインフラを自分が支えている、仲間と動かしているという自負があり、それが仕事を進める拠り所になっているんです。
 
 
----組織や仕事についてネガティブな情報を含めて誠実に伝えることは「RJP(Realistic Job Preview)」として、その重要性が指摘されています。まさに、これまでもやってきているんですね
 
そうですね。仕事の大変さは、会社説明会でエンジニアが実際に説明することもありますし、面談でも「こんなときにつらいんだよね」と学生に伝えているメンバーもいます。“感謝されないやりがい”を見つけられるかどうかが、当社のカルチャーやマインドにとって大事だと考えています。
 
 

インタビュー形式のオンライン説明会を実施。社員同士のやり取りから社風を伝えられた

 

----そんな従来の取り組みがある中で、2022年卒に向けては新たな会社説明会の形に取り組まれたそうですね
 
2021年卒の採用活動では、1回目(4月7日)の緊急事態宣言発令より前にいち早くオンライン採用へと舵を切りました。そのスピード感が功を奏したのか、応募数も増え、非常にいい結果につながりました。
 
しかし22年卒になると、選考途中での辞退率が増えてしまった。各社がオンライン選考のやり方をブラッシュアップさせたことも影響したのでしょう。内定承諾率も落ちてしまい、「我々の魅力発信や動機付けがうまくいっていないのではないか」と危機感を抱くようになりました。そこで、オンライン会社説明会の新しい取り組みを、試験的に始めることにしました。
 
 
----どのような会社説明会でしたか
 
オンライン上で、当社のシステムエンジニアの社員2人へのインタビューを学生に見ていただき、チャットで質問を受け付けるというスタイルで進行しました。
 
インタビューは、「学生が知りたいこと」をよりダイレクトに引き出せるようにと、外部の第三者のインタビュアーにお願いし、残業時間や給与、休みの過ごし方などもどんどん質問してもらいました。実際に社員たちが会社や会社の制度についてどう思っているかいうことを引き出してもらえるように意識しました。
 
社外の方は、仕事内容についても「それは具体的にどんな業務ですか?」と、分からない前提で突っ込んでくれる。新鮮でしたし、学生と近い目線で話を聞いてくれたのがよかったと思います。学生さんからの質問はYouTubeのライブ配信のようにコメントが流れてきて、それに反応していきました。学生には自分の画像を映さず、匿名で参加してもらうため、突っ込んだ質問もしやすくなったのでないかと思います。
 
 
----説明会の準備段階で、台本のようなものを作っていましたか
 
そこまで細かくは行なっていません。話す内容を大まかに「仕事内容」「人間関係」「プライベート」と分けて質問項目を決めていきましたが、あくまでライブ感覚を重視しました。学生さんからの反応によって変えていき、質問しやすい雰囲気づくりをもっとも大切にしました。
 
 
----参加した学生からは、どんな反響がありましたか
 
アンケートでは、
「具体的な業務内容を知れた。特に繁忙期の労働時間や、年間でピークが決まっているので予定がたてやすいといった、働き方の話まで聞けたのがよかった」
「話を聞いている中で、自然に社風の良さも伝わってきた。給与について、実際の金額やボーナスなど具体的に語ってもらえて驚いた、勉強になった」
「和気あいあいとした雰囲気で楽しく参加できた。他の企業説明会ではなかなか聞けないような質問にもしっかりと対応してくくれてためになった」
といった声が寄せられました。
 
社員がリラックスして本音で話している様子を見ていただけたことで、普段から意見を言い合う社内の雰囲気を伝えることができました。これまでは、オンライン上で一方的に話していたので、社員同士が普段どういうやりとりをしているのかを開示できていなかったのです。
 
今回のインタビュー形式の取り組みでは、社員2人が軽く談笑するようなシーンもあり、社員同士の会話を見せることで、普段のコミュニケーションスタイルや組織内部のリアリティが伝わったことが好印象につながったと思っています。
 
 
----今回の取り組みを終え、改めて見えた課題とは?
 
一人の社員のことを深堀った情報発信はうまくできたかなと思っています。今後は、先輩や上司などにも複数出てもらい、その関係性を見てもらえれば、カルチャー、職場の雰囲気、仕事の進め方やコミュニケーションスタイルをより知ってもらえるかもしれません。
 
ただ一方で、就職先を決める要因として、社内の雰囲気だけで判断するのがいいとは思っていません。当社では運用、保守のほかにデータセンターサービスやクラウドサービスも展開しており、業務内容はそれぞれ異なります。たまにコンサルタントに近い業務内容を期待する学生がいるのですが、私たちはあくまでインフラ整備を担っている。お客様への提案を拡大解釈して、コンサルタントのようなかかわり方を想定しているとミスマッチが生じてしまいます。
 
組織の土台にある風土やカルチャーとともに、仕事内容を正確に言語化し、働く姿をイメージできるまで理解してもらうことが大切だと考えています。
 
 

仕事の理解を深めるワンフレーズを作成。学生に伝える最初のフックにした

 

---自社をどんな言葉で伝えるか、多くの企業が模索しながら採用活動をされています。御社はどんな工夫をされてきましたか
 
当社をワンフレーズで伝えるとしたら何か、2か月ほどかけて人事・採用担当、マネージャー、部長が集まり、かなりの工数をかけて社内で議論を重ねました。そして作り上げたのが、「“当たり前”の毎日を確かな技術で支えます」というメッセージでした。
 
私たちのようなインフラの会社は、業務内容をなかなか理解してもらえません。学生からはIT企業の一つと見られやすく、アプリを作っている会社と混合されることも少なくありません。上記のフレーズには、インフラの本質を突いた「当たり前の毎日」が使われており、ITの力でインフラを支えている技術集団であるという「確かな技術で支える」という言葉も入っている。短いながらもすべてが含まれているということで、若手社員が提案したこのフレーズに全員が納得し、決まりました。
 
このメッセージを打ち出したところ、多くの学生にもヒットし「こんな仕事がしたい」と、このフレーズを引用して連絡をくれるケースが急増しました。
 
企業と学生との対話は大事ですが、実際に会えるまでの道のりは長いですよね。
学生からすると、企業探しから始まり、ホームページや関連記事などに触れ、良さそうだなと思ったらエントリーし、会社説明会にいって、適性検査を受けて、ようやく面談や面接に進むことができる。ですから、最初の段階で、「うちはこんな会社だ」と分かりやすく正確に伝えられる言葉選びは非常に重要だと思います。情報を多く出すことも必要ですが、有効なものを短く出すことも、情報発信の差別化になると感じています。

 
 
---最後に、これからの新卒採用市場について、期待することを教えてください
 
学生にとって就職活動は、ずっと変わらず難しいものだなと思っています。
新卒採用はポテンシャル採用なので、その職種を経験したことがない学生が、自分の過去の経験や性格特性を分析して“この仕事が自分に向いている”という接点を見出していかなければいけない。自分を振り返ることも、企業や職種について調べることも大切ではありますが、経験したことがない仕事を本当に理解するのは、難しいのが本音でしょう。

 
これからは、産学が協力し合ったり、官民の連携を進めたりしながら、ある程度の期間インターンシップを通じて、仕事の面白みをつかむ体験ができたらいいですね。日本全体でその機会が広がれば、就職活動で迷ったり離脱したりする学生が少なくなるのではないかと思います。

 

取材・文/田中 瑠子