各界の著名人に、これまでに出会った、プロとしてすごいと思った人、影響を受けた人など「こんな人と一緒に働きたい!」と思う人物像をインタビュー。
仕事に心がある人と一緒だと、私も応えたいと思う
あやせ・はるか●1985年、広島県生まれ。2000年、第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞しデビュー。04年、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』で注目を浴びる。07年、『ホタルノヒカリ』で初の連続ドラマ単独主演。13年、『八重の桜』でNHK大河ドラマ初出演および主演。おもな出演作にドラマ『白夜行』(06年)、『JIN-仁-』(09年、11年)、『精霊の守り人』(16年〜18年)、『奥様は、取り扱い注意』(17年)、映画『海街diary』(15年)など。18年7月10日(火)夜10時スタートの主演ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)では初の義母役を演じる。
相手の力を信じて、「よろしくお願いします」とゆだねられる関係性
――今日は綾瀬さんが一緒に働きたいのはどんな人かをうかがいに来ました。現在撮影中のドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)でも、共演者やスタッフの方々といい感じでお仕事をされているようですね。
何だか、現場がほんわかしています。私が演じている「亜希子さん」はキャリアウーマンなので、感化されて私自身はシャキッ、シャキッとしたオーラを放っているはずなんですけど、どうしてなのか…(笑)。多分、「亜希子さん」の夫役の竹野内豊さんのおかげかもしれません。竹野内さんって、すごいんですよ。初めて共演させていただいて、以前はどちらかというとクールなイメージだったんですけど、お会いしてみると穏やかで、ゆったりと自分の時間が流れている。ハプニングが起きても動じないので、ご一緒していると、心が落ち着きます。
――落ち着くと言えば、『義母と娘のブルース』の脚本はこれまでに5本の作品で綾瀬さんとタッグを組んできた森下佳子さんが担当されていますね。
『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)をやらせていただいた10代のころからお世話になっています。森下さんの脚本が好きなので、何年経ってもこうしてまたお仕事をご一緒できるというのがすごくうれしくて。森下さんの脚本って、言葉がすっと心に入ってくる。例えば、今回の『義母と娘のブルース』は長ゼリフが多く、舌をかみそうなビジネス用語もあって緊張するんですけど、森下さんの手にかかると難しいセリフも覚えやすい気がします。
『義母と娘のブルース』の序盤では「亜希子さん」が無表情なんですけど、なぜなのかなと思っていたら、森下さんが「次のことをあれやこれやと頭で考えている時には、人は感情が表にあまり出なかったりする。目の前のことに一生懸命だからこそ無表情なんです。だから、何を考えているのかすんなりわかってはいけないけれど、視聴者の方が少しずつ『あ、これ、怒っているんじゃない?』とか『実は焦っているのかな』と推理を楽しめるようにしたいです」とお話してくれました。
――「高度なリクエストだとわかっていますが、今のはるかちゃんなら、できる!」と森下さんは語っています。
なんと、そんなことを言ってくださっていたんですね。そうとは知らず、「やってみると、無表情って意外とラクだな」なんて思っていました(笑)。
もちろん、最初は「どうしようかな」という気持ちもあったんですけど、監督もスタッフも素晴らしい方々だから、大船に乗ったつもりでやってみようって。演出の力ってすごくて、目線を少し上げる演技ひとつでも、撮り方でさまざまな感情を表現できたりする。だから、「皆さん、よろしくお願いします!」って感じでやっています。
等身大で、自分らしい表現をする人に憧れる
『世界の中心で、愛をさけぶ』は、綾瀬さんが初めて心の底から「この役をやりたい」と思ってオーディションに臨んだ作品。白血病のヒロインを演じるために髪を剃るなど全力で演じた。
――これまでに共演された方たちの中で、演者として影響を受けた方はいますか?
影響を受けるというか、共演させていただいて「こんな演技ができたら」と憧れることはよくあります。一人だけ挙げさせていただくとすれば、樹木希林さん。映画『海街diary』でご一緒させていただいたのですが、演技に気負いがなくて。「え、今のは演じていらっしゃったんだ」と驚かされるくらい自然体なんです。
ほら、野球でバッターに力が入り過ぎると、いい球が打てなかったりするじゃないですか。演技でも緊張して力が入ってしまうと、感情の表現が硬くなってしまう気がするんですね。そうならないように「リラックスしてやろう」って思うんですけど、なかなか難しくて。テスト撮影では自分らしくやれたのに、本番では「間違えちゃいけない」「みんなに迷惑をかけないようにしなきゃ」と考え過ぎてしまうようなことが少なくありません。樹木さんのようにさまざまな経験を重ねることで、気負いを捨てて、のびのびと演じられるようになったらいいのになあって思います。
一方で、子役さんたちから勉強させてもらうこともあります。経験を積んでいくと視野が広がる分、物事が見え過ぎてしまって、自分に制限をしたり、型にはまりやすくなりがちなのかなと思うんですけど、「こういう時はこうしておこう」と考えるようにはなりたくない。だから、幼い子たちの、危ういけれどとても自由な表現に触れると、元気が出ます。失敗しても、間違ってもいいから、等身大で自分らしく。そういう気持ちを忘れないようにしようって。
言われたことをただやるのではなく、それ以上のことをやろうとする
「20代は与えられたことを頑張ってきましたが、今後は自分が女優としてどうありたいのかを問われることも増えてくると思います。答えはまだ見えないけれど、走りながら見つけていきます」と綾瀬さん。
――綾瀬さんが「一緒に仕事をしていて心地いいな」「また一緒に仕事をしたいな」と感じる人に共通点はありますか?
仕事に心がある人たちと一緒だと、私も皆さんの思いに応えたいなって思います。ドラマや映画ってチームで作るから、誰かの指示で動く場面も多いですよね。その時に、言われたことをただやるのではなく、それ以上のことをやろうとする人。例えば、「チーフからはこう指示されたけど、綾瀬さんならこう思うんじゃないかな」と想像して私がより演技に集中しやすい環境を整えてくれるようなアシスタントディレクターさんの姿を見たりすると、本当にありがたいなあと。いい作品を作るために、私も頑張ろうって思えます。
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取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康