2021.08.04

【採用注力事例】理念や目的を共有できる仲間を増やし、組織を根底から変える

採用にかける思いや取り組みに、企業の「人への考え方」が見えてきます。今回は、GPTW「働きがいのある会社」に2年連続選出され、神奈川県「SDGsパートナー(第5期)」にも認定されている住宅関連企業に新卒採用に注力する理由や、若手社員が「働きがい」を感じられる環境づくりについてうかがいました。
 

【いま、新卒採用に注力する理由】
Vol.16 株式会社エコライフ/E・GROUP(住宅関連)

代表取締役 榊 康一さん


※記事は、2021年6月25日にオンライン取材した内容で掲載しております。
 

【Company Profile】

神奈川県湘南エリア発で事業を展開する「E・GROUP(グループ)」。太陽光パネルや家庭用蓄電池の直販事業を行う株式会社エコライフ(2000年創業)を中核に、住宅設備施工・メンテナンスを行う株式会社E・テクノ、コンサルティング・卸売事業を行う株式会社E・MACのほか、不動産仲介・リノベーションを事業とする株式会社E・HOUSEからなる。Great Place to Work® Institute Japan(GPTWジャパン)、「21年版日本における『働きがいのある会社』ランキング」小規模部門において第7位に選出されている(選出は2年連続2度目)。

 

組織変革の一環として、2014年に新卒採用を導入

 

−−−−御社は創業14年目の2014年から新卒採用を開始されたそうですね。きっかけは?
 
最大の目的は「組織を根底から変えること」でした。当社は住宅リフォームの会社としてスタートし、2002年より株式会社エコライフとして「オール電化」などの省エネルギー機器を活用したリフォームの提案・販売を行うエコリフォーム事業に特化。大きく売り上げを伸ばしたものの、利益を追い求めるあまり、幹部の離職や独立が続きました。10年ほど前のことです。
 
このままではいけない、と経営の意味を自らに問い直し、「経営とは縁ある人々を幸せに導くこと」という考えにたどり着きました。以降は「社会の幸せを追求する」という経営理念のもと、上意下達ではなく、社員とともに目的を考え、その達成のために行動するよう自分自身を変えていきましたね。一朝一夕にできることではありませんでしたが、目的の共有によって社員との信頼関係が深まり、組織の士気が向上。2013年には新たに手がけた家庭用蓄電池の販売で全国トップクラスの実績を残すことができました。
 
新卒採用の導入を考えたのは、この変革をさらに推し進めたかったからです。当時、社員は全員中途採用で、ボリューム層は40代でした。新卒採用は中途採用に比べて育成コストがかかりますが、新卒社員が活躍することで組織に大きな刺激を与えてくれると期待しました。また、長期的視野に立てば、将来のリーダーとして企業文化を継承していく人材の育成は必須です。企業理念に共感して入社した新卒社員を大切に育てれば、リーダー候補となる人材が増えるのではとも考えました。
 
ただ、当社は訪問販売を基盤とする会社。営業職の中でも訪問販売は高い営業力が求められますから、果たして新卒社員が来てくれるのか不安はありました。でも、私自身も高校卒業後、未経験で訪問販売の会社に入社し、育ててもらいました。私が経験してきたこと、学んできたことを分かち合うことから始めよう。そう考えて、2014年に5名の新卒採用からスタートしました。

 

新卒採用導入によって、既存社員の成長が促された

 

−−−−新卒採用の導入期の状況は?
 
最初の数年は課題が目立ち、新卒社員の離職もありました。本質的な課題は、伝えるべきことを伝えられなかったこと。とくに1年目は私自身が新卒社員を「特別視」してしまい、社員の行動に問題があっても、「この間まで学生だったから仕方ない」と遠慮し過ぎてしまい、本質的なフィードバックが行えていませんでした。
 
また、当時は社員が入れ替わって間もない時期だったので、既存社員は社歴の浅いメンバーがほとんど。先輩社員が業務を教えることはできても、企業文化を伝えられるまでには成長していませんでした。こうしたことから新卒社員とのかかわりが表面的になりがちで、コミットメントを形成できていなかったことが離職につながっていたと思います。
 
それでも、新卒採用導入の効果は1年目から感じていました。第一に、私自身の意識が変わりました。創業以来、人材育成を大事にしてきたつもりでしたが、中途採用の社員はスキルアップや好待遇を求めて早期に離職する人も多く、「当社でこの人材を育てなければ」という強い思いは今と比べると弱かったように思います。
 
しかし、初めて社会で働く人たちを採用するからには責任重大。親が子を育てるようなものです。覚悟を決め、「自分も会社も本気で変わらなければ」と気迫が生まれました。経営者が「親」なら、不必要な遠慮をしていては「子」は育ちません。そのことに気づき、プロとして当たり前のことは新入社員にもはっきりと伝え、「本音」で接することで若い社員との関係性が深まっていきました。
 
もうひとつの大きな効果は、既存社員の成長につながったことです。とくに若手社員に先輩としての自覚が生まれ、より意欲的に仕事に取り組む姿が見られました。新卒採用導入前年に入社したある社員が当時を振り返って話してくれた「若いエネルギーに刺激され、『この子たちの人生を自分が背負うんだな』という思いが自分に生まれた」という言葉が象徴的です。
 
ここ3年は入社後の定着率が9割と長く働いてくれる社員が増えていますが、秘策があったわけではありません。最大の理由は既卒、新卒にかかわらず、新卒採用導入前後に入社した社員たちが成長してくれたから。入社後電気工事士の資格を取得し、施工・メンテナンス事業を手がける「E・テクノ」で現場リーダーを務める新卒入社第一期の社員もいれば、女性初の営業リーダーになった社員もいます。新卒社員が憧れるロールモデルになってくれたことで定着率が高まりました。
 
社員の成長とともに新規事業も生まれ、2017年にグループ第2の柱として不動産仲介・中古住宅リノベーションを事業とする「E・HOUSE」を設立。21年には長期インターンシップの取り組みを新規事業として開始し、現在、約10名の学生さんが社員とともに新規企業の開拓を進めています。21年卒入社は2名でしたが、こうした事業多角化に伴い、22年卒入社は現時点で6名を予定し、23年卒以降はさらに採用人数を増やしていく考えです。

 

採用活動において、先輩社員と学生のコミュニケーションを重視

 

−−−−採用時のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください
 
すでにお話したように、当社では新卒採用を組織変革の一環として位置づけています。その「組織変革」の根幹となるのは、「可能性を形にする」という経営理念を組織全体に浸透させること。根本的な考え方や目的を共有していれば、業務遂行の方法やプロセスが異なってもゴールは同じですから、それぞれの社員の個性も活かされ、組織はより強くなります。ですから、採用活動においても、当社の経営理念や価値観をしっかりとお伝えし、根本的な考え方や目的を共有する人材に入社していただくことを最重視しています。
 
当社の理念を理解しやすいよう、多くの学生さんが最初に当社を知る場となる採用Webサイトや募集要項では、社会人経験のない人でもイメージしやすい表現を心がけています。ただ、言葉で伝えられることには限りがあります。そこで、当社が新卒採用導入期から大事にしているのが、訪問販売の現場体験。選考のプロセスで、半日かけて先輩社員の営業に同行していただく機会を必ず設けています。この時間が好評なんですよ、意外と(笑)。
 
学生さんに感想を聞くと、「こんなに歩くんですね」「やはり大変な仕事ですね」と言います。一方で、8割方の学生さんから聞くのは、「話を聞いてくれるお宅がこんなにあるんですね」という言葉です。初めてのお宅に営業に行くわけですから、簡単にご依頼いただけるわけではありません。でも、当社で活躍している社員なら、お客さまの8割くらいはインターフォン越しに声くらい聞かせてくれますし、3割は話も聞いてくれます。一般に「訪問営業は断られる」というイメージがあるので、学生さんは驚くわけです。
 
−−−−現場を知ってもらうことで、採用のミスマッチも少なくなりますね
 
はい。実際、「訪問営業がつらい」という理由で退職する人はほとんどいません。業務に触れていただくとともに、当社の経営理念を体現するということがどういうことなのかを現場での先輩社員の姿から感じてもらえることの意味は大きいと考えています。
 
また、今の当社の社員の平均年齢は27歳。学生さんの年齢に近く、先輩社員とのコミュニケーションから得ていただく情報は非常に重要だと思っています。その観点から、2021年卒採用から始めたのが、一般社員が採用活動に参加し、学生さんの「相棒」を務める「相棒採用」。社員がブログで情報発信し、それを見た学生さんが「この人と働きたい」と思う社員を「相棒」として指名し、内定までをともに走るシステムです。入社後は「相棒」がメンターを務め、最初は同じチームで業務の指導もします。
 
始めたばかりのシステムですが、先輩社員との1対1の関係を通し、当社のことを理解していただくだけでなく、学生さんたちが「働くとは」「人生とは」「なりたい自分とは」といった自己理解を深めていく姿が見られ、「理念共感」を重視する当社の採用にはとても合っています。また、先輩社員にとっても、当社のことを学生に伝えることが経営理念の深い理解につながっており、大きな意義を感じています。

 

「働きがい」のある環境づくりが成果につながっている

 

−−−−御社は職場で働く従業員からの評価を覆面調査した結果が反映される、GPTW「働きがいのある会社ランキング」(従業員25〜99人部門)で2020年に続き「ベストカンパニー」に選ばれています。この1年で47位から7位と順位も大きく上げていますが、「働きがい」のある環境づくりのために、近年力を注いでいることを教えていただけますか?
 
大きくふたつあり、ひとつ目は「学び」の共有です。訪問販売は個人プレーになりがちな職種ですが、私自身は「これからは共創の時代」と考え、自分の知識やノウハウをできる限り社員に伝えてきました。また、業界全体の成長を目指し、蓄電池販売のノウハウを他社に共有するコンサルティング事業も行っています。
 
その姿勢を多くの社員が受け継いでくれており、学び合いは日常的に行われていますが、2年前から社内勉強会を月に1、2回、勤務時間内に実施しています。特徴は社員が講師となって自分の得意分野を教えること。最初は講師になることに消極的な社員も少なくありませんでしたが、始めてみると「教えることで自分の頭が整理され、勉強になる」と好評です。商品知識や営業ノウハウのほか、手帳術や便利なアプリの紹介などの仕事術を伝授する社員もいます。
 
もうひとつは、「社員同士のつながり」です。もともと当社は社員で気軽に会食する雰囲気がありますし、自主的なイベントやクラブ活動も盛んで、リアルなコミュニケーションは活発な方だと思います。そういった場はもちろん大事にしていますが、業務連絡の仕組みを整理するために2020年に導入した自社SNSも相互理解の場になっています。社員間はもちろん、私と社員をつなぐツールにもなっており、私からも月に20〜30回は発信をしています。内容は経営理念や業務に必要な技術やノウハウだけでなく、日々の物事の考え方などさまざま。スマートフォンで気軽に読めるので、「あれ、読みました」と社員から話しかけられることも多いです。自社SNS導入の発案は若手社員から。今の当社ならではの新たな取り組みを頼もしく感じています。
 

社内SNS「TUNAG」への榊さんの投稿。SNS上で社員が榊さんに声をかけ、一緒にごはんを食べに行く「ラフ・ダイニング」という制度も設けられている。

 
ありがたいのは、こうした取り組みが成果に結びつき、社員の士気がさらに上がっていること。2020年度の当社の売り上げは前年比120パーセントでした。どんなに「働きがい」があっても、成果が出なければ社員のモチベーションは上がりません。コロナ禍にもかかわらず業績が上がったのは、「可能性を形にする」という経営理念のもと、「こんな時期だからこそお客様に役立ちたい」と社員が一丸となって頑張ったから。社員が経営理念、すなわち仕事の目的を共有していなければ、この状況はなかったでしょう。
 
お世話になっている企業の経営者の方がかつて「新卒社員の定着には時間がかかる。でも、10年後、20年後を見据えたら、絶対にやった方がいい」とアドバイスしてくれましたが、その言葉は本当でした。今後も継続して新卒採用に力を入れていく考えです。
 
−−−−「働く」ということについて、学生の皆さんに伝えたいことはありますか?
 
自分の可能性にふたをしてほしくない、と思っています。私の子どもたちも大学生ですが、若い人たちと話をしていると、挑戦をためらう姿が気になります。私は高校を卒業後、父の経営する会社に入社しましたが、半年で倒産。連帯保証人として800万円の借金を背負いましたが、太陽熱温水器を訪問販売する会社に入り、営業職としてゼロから経験を積んで20代前半でプレーイングマネジャーに。28歳で当社を設立しました。
 
今でこそ皆さんの前でこんな話をしていますが、高校時代は髪を染めかなりやんちゃでした(笑)。だから、皆さんも自分に自信を持ち、あきらめずに前に進んでほしい。当社では何かをやってうまくいかなくても、「失敗した」とは言いません。やらずに結果を出せなければ「失敗」ですが、やって結果が出なければ、それは「経験」です。
 
「仕事を苦役と感じないためにはどうすれば良いか?」と以前、学生から質問されたことがあります。私の答えは、「挑戦すること」。そして、「自分から主体的に」です。勉強でもスポーツでも、誰かからやらされる「外的動機」では楽しさは生まれません。しかし、自ら「やりたい」という「内発的動機」があれば、楽しさが生まれます。結果が出ない時の悔しさはありますが、苦しいとは感じないのではないでしょうか。
 
仕事も同じで、楽しくやれば、自然と上手になります。だから、「仕事上手よりも楽しみ上手になりなさい」と言いたいですね。「頑張らなくちゃ!」と肩肘を張らず、「仕事で楽しいことを考えよう!」でいいんです。仕事の語源は、「傍(はた)を楽にさせること」とする説があります。仕事というのは、誰かに感動や幸せを届けること。私自身はそう考え、大好きなゴルフ以上に毎日の仕事を楽しんでいます。
 

2020年に開催されたサッカー大会での一枚。スポーツのほか、ワカサギ釣りやイチゴ狩り、花火見物など毎年さまざまなレクリエーションイベントを開催している(現在は新型コロナウイルス感染症の状況に応じて開催)。


 

地域のボランティア活動にも参加している。写真は2021年1月に神奈川県・平塚海岸のビーチクリーン(海岸清掃)の様子。就業時間中に行っており、8月にも参加する予定だ。


 

取材・文/泉 彩子

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