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就職みらい研究所とは
2020.11.02

【採用注力事例】逆境やピンチは、チャンス! 挑戦の積み重ねが成長につながる

コロナ禍により大きな打撃を受けた企業・業界がある一方で、コロナ禍のいまだからこそ必要とされる商品やサービスを市場に提供し続けられた企業もあります。アイリスオーヤマもその一社。同社は、2020年度の売上高見通しを対前年比140%に上方修正し、8月には新卒採用拡大を発表し注目を集めています。その背景や状況を伺いました。

【いま、新卒採用に注力する理由】
Vol.3 アイリスオーヤマ株式会社

人事部 採用・人材開発課 リーダー
佐藤祥平さん

※記事は、2020年10月6日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Company Profile】

1971年設立。家電製品や生活用品、家具・インテリア、ペット用品、食品など、さまざまな生活提案型の新商品を、年間1000アイテム以上市場に提供している。生活者の視点を起点とした商品開発力・市場投入力を強みとしている。ホームセンター等の販路に強みを持ちつつ、インターネット通販なども手掛けている。国内に13社のグループ企業を持ち、中国、韓国、アメリカ、ヨーロッパなど世界各国にも工場や現地法人を有する。

 

不景気や逆風の時こそ成長できる仕組みが社内にある

 

当社は今期、国内ではホームセンター向け・ネット通販の売上を伸ばしました。 さらに海外は、国内以上のペースで売り上げを伸ばしています。外から見ていると、こういうときなのに頑張っているなという感想になると思うのですが、社内にいると当然というか、それだけの仕組みがあるからやり遂げられているという納得感があります。
 
例えばマスク。コロナ禍の中で、当社はマスクの大量生産にいち早く着手し、国内に新たにマスク生産ラインを導入しました 。それは当社が日頃から、あらゆる設備の稼働率をおよそ7割に収める体制を敷いているからできることなのです。平時から、注文が増えて稼働率が7割を超えたら、工場を新設・増床したり、生産ラインを増強したりしています。そうしておくことで、急激に需要が拡大した製品をいち早く増産し、需要に対応できる余裕ができます。マスクだけが特別だったのではなく、他のどの商品でも、同じように対応することが可能な仕組みになっています。
 
そして、社内の意思決定のスピードの速さが、この仕組みを実現できる最大の強みだと思っています。それを最も現しているのが、毎週月曜日に行われる「プレゼン会議」です。役員全員と各部署 の責任者を中心に約50名 、全国に広がる拠点や中国 などの各国の遠隔地からはテレビ会議を通じて集まり、1つの案件に5~10分で社員が次々とプレゼンテーションをします。新商品や改良、販促の仕方など、内容はさまざまです。共通するのは、このプレゼンによって即断・即決されること。プレゼン会議の場で社長決裁まで行われますし、あらゆる部門が情報を共有するので、同時進行であっという間に仕事が進みます。
 
プレゼン会議は、経営者がその案件に投資するかどうかを判断する場なので、当然シビアです。機能、デザイン、価格など、あらゆる角度から「それはユーザーが本当に求めていることなのか」「ユーザーの立場に立ったら、もっと違う発想があるのではないか?」など、徹底して生活者(ユーザー)目線で検討されます。
 
また、企画内容ももちろんですが、「伝える力」も大事にされ、厳しく指摘されます。要点を簡潔に、数字などの根拠を明確にしながら、分かりやすく伝えることが求められます。それはプレゼン会議に限ったことではなく、新入社員研修から始まり、日頃から当社の仕事のさまざまな場面を通して鍛えられます。
 
この意思決定のスピードの速さと、徹底した「生活者(ユーザー)目線」。それが、「メーカーベンダー(※)」を標榜する当社の底力です。当社では、年間1000アイテム以上の新商品を生み出し、既存商品も合わせると2万5000アイテムの商品群を市場に提供しています。
※問屋(ベンダー)機能を併せ持つメーカー

 

さまざまなことに挑戦する機会を通して、成長し続ける

 

「伝える力」は、「プレゼン会議」等の場を通して徹底的にトレーニングしていきます。最初は人前で発表するのが苦手という人も、どんどん場数を踏んでいくことで鍛えられ、自信を持てるようになり、結果として「伝える力」が身についていきます。当社ではこのように、様々なことに挑戦し続ける「積極性」が大事ですし、それに抵抗感を持つ人は、自分の気持ちとのギャップを感じるかもしれません。
 
私自身、入社以来、さまざまなことに挑戦してきました。昨年、韓国と台湾、シンガポールに行き、海外での採用活動を行いました。日本で活躍してもらう海外の大学生の採用だけでなく、韓国では現地法人で活躍してもらう学生の採用も行ったのですが、グローバル戦略とも関連する重要な案件になるので、社長と頻繁にやりとりし、役員のアドバイスも受けながら実施した貴重な機会でした。また、入社3年目の頃、関西圏の学生採用の拠点となる組織がなかった状態を何とかしたいと思い、上司に提案して関西での採用組織づくりをしました。これも大きな挑戦でした。
 
入社当初はルート営業をしていた私ですが、自分から希望して広報室に異動し、その後上司からの勧めで現在の人事部に異動しました。当社では、自分から「やりたい」と名乗りをあげて異動することもあれば、人柄や仕事ぶりを評価されて異動の打診を受けることもあります。異動することも、自分を成長させられる機会だと思っています。
 
採用においても、学生の皆さんの「積極性」をしっかり見たいと思っています。学生時代に何を考え、どのようなことをしてきたか、特に壁にぶつかった経験や困難を乗り越えた経験などを、深く聞くようにしています。本気で壁にぶつかり、考え、努力してきた話には、自然と熱がこもって、表情や態度にも表れてきます。一人ひとりの「熱」をしっかり受け止めて話を聞きたいと考えています。

 

コロナ禍を契機に、さまざまなバックグラウンド・考え方をもつ学生との接点を創出

 

2021年卒採用では、10コースに分けて新卒採用を行っています。
コースを細分化しているのは、さまざまなタイプの学生さんに来ていただきたいと思っているためです。職種を限定せず当社で様々な仕事を担ってみたいという学生さんもいれば、マネジメント・エンジニアリング・デザイン等、特定の領域で能力を高めていきたいという学生さんもいると思います。当社のインターンシップに参加し、「ここで頑張ってみたい」と思ってくれた学生さんには、その意思を伝えていただきたい。体育会系の活動を頑張ってきた方にはぜひ、ご自身の活動を通して培ってきたことをアピールしていただきたい。皆さん一人ひとりに、「このコースで頑張ってみたい」「このコースなら、自分の強みが活かせる」といった想いを持って、応募していただきたいと思っています。

 
2021年採用は、現在(2020年10月6日時点)も続行しています。例えば、簿記を学んできた経理・財務志向の方や、物流においてさまざまな年代・立場の人を束ねていけるチームリーダー的志向や経験のある方にも、応募していただきたいと思います。当社は営業職や技術職が活躍している会社だというイメージが強いかもしれませんが、経理や財務、物流などの会社の屋台骨を支える仕事を担う方にも、ぜひ当社で活躍していただきたいと思っています。
 
今回のコロナ禍は当社にとって、さまざまな学生さんとの接点を持つ機会になったと思います。
当社社長は、「コロナ禍によって、採用を控える企業も出てくる。今こそ、さまざまな人に当社の一員になってもらえる機会だ」と言っています。実際、8月に採用拡大のニュースリリースを発信したところ、これまで当社にご応募いただくことがなかった学生さん、例えば、海外志向が強く航空業界などを目指していたような学生さんや、理工学系で数学・情報工学を得意とする学生さんからもご応募いただきました。早々に内定を得ていたけれど、自分が何をしたいかもう少し考えたい、といった学生さんからのご応募もいただきました。また、すべての選考をWebに移行したことによって、遠方からの応募者も増えました。2022年卒採用では、2021年卒採用よりもさらに採用人数を拡大する予定です。さまざまな学生さんとの接点もっと増やしていきたいと思っています。

 

こんな時代だからこそ、ポジティブに!

 

このご時世、コロナ禍で留学ができなくなったり、アルバイトや部活も思うようにできなくなったりして、ネガティブになりがちかもしれません。でも、このような状況下だからこそ、これまでを振り返って自分の強みを明確にしたり、Webで提供されているさまざまな情報から自分の未来像を探索してみたり、できることもたくさんあるはずです。例年よりも少なくなってはいますが、対面でしかできないインターンシップを実施している企業もあります。

 
当社でも、夏に1週間と3日間の、それぞれ理系学生を対象とした開発部門でのインターンシップを実施しました。PCR検査を全員に実施し、その後インターンシップ終了まで、当社が指定したホテルから通ってもらうなど、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に細心の注意を払いながら実施しました。また、秋以降はWebを通じて、誰もが参加できる企業理解のためのインターンシップを実施し、多くの3年生の皆さんに参加していただいています。

 
当社はこのような時代だからこそ積極的に、いまできる行動を続けています。これから入社する皆さんと一緒に、ぜひ新しい未来を切り開いていきたいと思っています。

 

“多様な人材の集まる組織からイノベーションが生まれる”と考えているアイリスオーヤマでは、様々なことに挑戦し続ける「積極性」を重視した採用活動を継続しています。

 

取材・文/清水 由佳

 

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