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2020.10.30

【解説】「いま、新卒採用に注力する企業」に注目する理由・注目すべきポイント

【いま、新卒採用に注力する理由】
Vol.0 採用注力企業の見かた 基本編

2021年卒の大卒求人倍率は、1.53倍。ここ数年は1.7~1.8倍で推移していたことを踏まえて、「コロナ禍で企業の採用意欲が低下している」といった報道もされています。就職活動中の学生の皆さん、そしてこれから就職活動を行う学生の皆さんから、不安の声も聞かれます。しかし、このような環境下、新卒採用に注力する企業があります。各社が新卒採用に注力する理由を探ることで、学生の皆さんが「自分もここで頑張ってみたい」と思う企業を見つけるヒントが提供できればと思っています。

Vol.1から、「いま、新卒採用に注力する企業」各社の事例を紹介していきます。
この記事では、それらの企業に注目する理由と、注目すべきポイントをお伝えしたいと思います。

 

注目してほしい理由:中長期的な視点で経営・採用がされており、成長の可能性を秘めている

 

企業が新卒採用を行うには、中長期的な経営計画-「将来のありたい姿」-が不可欠です。中長期的な経営計画に沿って、長い準備期間をかけて採用活動をし、入社後の育成期間を経て、採用した社員が活躍することで初めて、経営計画を実現するための採用ができたと言える場合が多いからです。景気の低迷期にも、自社の「将来のありたい姿」のために採用を続けている企業は、成長の可能性を秘めていると言えます。いくつか例を見てみましょう。

東洋経済新報社の『会社四季報 2013年新春版』で、日本国内の上場企業の2007~2009年及びリーマン・ショックや東日本大震災後の2010~2012年の採用新卒内定者数を聴取しています。回答企業の中から新卒内定者数の増加率が高かった上位50社について、2011年度から2018年度までの売上高の前年度比増加率を見ました(下記グラフ)。新卒内定者数の増加率が高かった上位50社は、同時期の日本企業全体と比べて、売上高の増加率が高いことが分かります。


*『会社四季報 2013年新春版」掲載、新卒内定者数「増加率」上位50社について、各社IR資料等から売上高を収集し、前年度増加率を就職みらい研究所が作成。(期間中の上場廃止企業は除外)
**財務省「法人企業統計」年次別調査 全業種(金融業・保険業を除く)の対前年度増加率より抜粋。

個別企業の事例も見てみましょう。
2011年3月11日に起こった東日本大震災は、被災地に大きな被害をもたらしただけでなく、日本経済にも大きな影響を及ぼしました。そのような中、被災地の宮城県に本社を置くアイリスオーヤマ社(2012年1月時点:売上高1,000億円 従業員数2,510名)は、震災の約1カ月後、大卒・高卒の新卒採用を継続するとともに、地元で働きたい被災地の高校生の採用枠を追加しました。自社も被災した中でも新卒採用を続けた同社は、2019年には売上高1,611億円に拡大。グループ全体では、売上高5,000億円、海外も含めて12,860名の従業員を抱えるまでに成長。2022年度にはグループ売上高1兆円を目標としています。

多様な人材の集まる組織からイノベーションが生まれる


アイリスオーヤマ株式会社 人事部リーダー 佐藤 祥平さん

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、被災地の生活だけでなく若者たちの進路にも大きな影響を与えました。そこで弊社では震災直後より、当時計画していた100名の新卒採用枠とは別に「被災者特別枠」を設け、被災地から30名の高校生の採用を実施しました。
当社は“多様な人材の集まる組織からイノベーションが生まれる”という考えのもと、コロナ禍の影響下においても、さまざまなコースを設け採用活動を続けています。新卒や中途技術者の積極的な採用についても、この考えのもと行っており、今後も強化していきます。

 

「いま、新卒採用に注力する企業」を見るうえでのポイント

採用意欲の高い企業は、いまの環境をチャンスと捉え、「将来のありたい姿」に向けて一緒に頑張ってくれる方の採用を続けています。各社の事業や成長のかたちはさまざまです。Vol.1から紹介する企業の事例では、下記のポイントをお伝えします。学生の皆さんがさまざまな企業の情報を見たり、さまざまな企業と対話したりするときにも、この3つのポイントで企業を見ることで、企業の新たな一面や魅力を発見できるのではないかと思います。

(1) 事業内容を深く理解する:事業を知ることで各社の強みが分かります。自分が名前を知らない企業の中にも、特徴的な技術やサービスを持つ企業がたくさんあります。名前を知っていた企業の知らなかった一面も見られるはずです。

(2) 企業の「将来のありたい姿」を知る:企業の方向性や、企業がいま新卒採用に注力している理由と、皆さんのやりたいことの方向性が合っている、共感できるポイントを探してみましょう。

(3) 「自分もこの会社で頑張りたい」と思えた瞬間を捉える:若手社員の入社後の様子などから、「自分もこの会社で頑張ってみたい」「ここでなら頑張れそう」と思えたら、さらに企業を深く知るチャンス。人事にアプローチ、会社説明会に参加など、自ら情報を集めてみましょう。

 

これらの観点が、学生の皆さんが企業と対話するうえでの、「気づき」に繋がればと思っています。

 

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