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就職みらい研究所とは
2020.09.11

志望業界や企業と、自分の経験との接点はどう見つければいいの?

事例・データでひも解く 就職活動の不安やギモン Vol.6

就職活動や就職に関するさまざまな情報が飛び交うなか、学生さんの本当の不安や悩み、ギモンは何でしょう? 学生さんとお話をしながら、一緒に考えてみました。

 
【お話してくれたのは…】

【一緒に考えたのは…】

 

自分のありたい姿を具体的にイメージしてから、企業の情報収集を始めよう

 

Mさん:現在、食品メーカーや生活設備機器メーカー、工具メーカーなど、生活に欠かせない身近なモノづくり企業を中心に就活を進めています。

前回のご相談で、志望動機を考える上で、自分の経験との結びつきを考えることが大事だということはわかりました。ただ、学生時代の経験と志望業界の業務内容との接点を見出しにくいんです。「なぜ工具メーカーなのか」に説得力を持たせるにはどうしたらいいのか。技術者である父のエピソードを自分事として話してみよう、など、企業や業界と自分との接点をなんとか見つけようと考えてしまいます。
 
増本:企業に合わせて自分の志望動機を言うのは難しいですよね。工具メーカーであれ食品メーカーであれ、企業は 自分の希望をかなえるための“手段”であっていいと思います。自分がその企業で、どういうことを実現できていれば自分自身を誇らしいと思えるのか。働く自分の姿をまず考えてみるとどうでしょう。

業界や企業ありきで志望先探しをするのではなく、自分がありたい姿、大事にしたいことをまず考えてから会社の情報収集を進めてみる。「自分との接点を見出せる場所がたまたまその企業だった」というふうに、考える順番を変えてみるのも一つです。
 
ここで、入社3年以内に離職した人への調査結果を見てみましょう。

 
増本:早期離職の理由でいちばん多いのは、仕事内容の不満です。

だからこそ、就活ではぜひ、「企業の仕事内容に、自分がやりたいこととの接点がありそうか」を確かめてほしいのです。そのためには、一社一社の仕事内容の理解をとことん深めることが大事。企業説明会や面接で質問してもいいし、社員に情報収集していくのもいいですね。自分との接点を見出すヒントをできるだけ多く集めることが大事だと思います。

 

「キラキラしている理想の自分」を要素分解。軸が決まれば、選択肢が広がる

 

 
松井:自分との接点があることを志望動機として話す、という視点もアリなんだって思えてきましたか?
 
Mさん:はい、そう思います。
 
松井:では、Mさんが「これだけはやりたい」「こんな自分でありたい」と思うことを整理してみましょう。
 
Mさん:うーん。漠然としているんですけど…「好きな仕事をしてキラキラしている自分でいたい」って思います。
 
増本:いいじゃないですか。Mさんはこれまで、どんなときにキラキラしていましたか?
 
Mさん:そうですね。20年間続けてきたピアノとエレクトーンで、好きな曲を演奏しているとき。私の姿に影響されて、後輩が「Mさんのようになりたい!」と成長する姿を見られたとき。好きなことをしている人はキラキラしていて、そういう人に、周りはついてくるんだなと思った経験でした。
 
増本:どんな条件がそろっていると、あるいはどんなことに触れていると自分がキラキラしていそうなのか。もう少し要素分解していくと、仕事とのつながりが具体的に見えてきそうです。

働く環境、扱う商材、お客様のタイプなど、「こんな要素が整えば私はキラキラできる!」と、まずは妄想でもいいから考えてみる。その条件から、会社を見つけていってはどうでしょうか。
 
松井:そうやって考えるのは重要ですね。好きなことに対して「どうして好きなのか」「具体的にどの部分が好きなのか」を突き詰めていくことは、自己分析の大事なプロセスなんです。
 
Mさん:なるほど!そうですね…私は料理など、何かを作っている時間が大好きです。「どうしたら喜んでくれるだろう?」と考えている時間そのものが好きなんだと思います。エレクトーンと共通するかもしれませんが、自分が頑張った成果が発揮できて、その結果として相手が心動かされたり、「ありがとう」の言葉や笑顔を向けられたりするときがうれしいですね。
 
増本:今の話を聞いていると、「自分が提供することに対して、自分の工夫が入る余地のある仕事かどうか」は重要なチェック項目になるんじゃないかと思いました。自分の工夫が喜ばれる、という点だけでも、仕事の見つけ方は変わってきます。

あとは、継続していくことがお客様の価値になる仕事。同じ営業職でも、長期にわたって同じお客様を担当する方が力を発揮するかもしれないですし、そんなふうに、キラキラしている自分と、仕事のやり方との接点を考えていくことが、企業選びのポイントになるのではないか思います。
 
松井:Mさんにとって、正解がない中自分で工夫しながら進める仕事がやりがい、「キラキラする仕事」につながるかもしれないですね。「お客様に喜んでいただくにはどうすべきか」を自分で考え行動できる会社。そんな視点で考え直したら、業界の幅も企業の選択肢もぐんと広がるのではないでしょうか。
 
Mさん:そんな気がしてきました!これまでのことを振り返ると…「この業界を志望するから、この点を自分に結びつけよう」とか、「会社に合わせなくちゃいけない」とか考えすぎていたように思います。

 

取材・文/田中瑠子

 

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