全従業員が約300人で、そのうち170人が長期インターンシップ生という株式会社キュービック。2006年の創業時から学生たちが重要な戦力だったという同社では、インターンシップ生が社内で活躍するのは当たり前の光景となっている。
現在は、大学1~2年生を中心に半年以上、月60時間以上働くことが前提となる長期インターンシップ。なぜそこまで力を入れるのか、どのように育成・活躍しているのか、現場の協力体制はどうしているかなどを語っていただいた。
荒木 珠里亜さん
2006年創業。「ヒト・オリエンテッドなデジタルマーケティングで、みんなの明日が変わるキッカケを生み出し続ける」を標榜するインターネットマーケティング会社。Great Place to Work Institute Japan発表の2020年版「働きがいのある会社」でベストカンパニーに選出された。ここ3年間の新卒採用では、長期インターンシップ経由8人・一般公募5人(2018年卒)、長期インターンシップ経由8人・一般公募1人(2019年卒)、長期インターンシップ経由3人・一般公募7人(2020年卒)を採用している。https://cuebic.co.jp/
働く仲間として、戦力として期待
当社では、インターンシップ生も重要な戦力で、一緒に働く仲間として主体的に関わってもらう必要があります。そのため、職場で存分に力を発揮してもらえるように、インターンシップのための人事制度も整えています。
例えば、採用が決まると、約60時間分の初期教育期間を設けています。内容は、ビジネスマナーや情報管理、仕事の進め方など新人研修のようなカリキュラムで、自動車教習所のように各自が選択・受講し、試験に合格して初めて現場に出ることが可能になります。
さらに配属先では、直属の上司と隔週で1対1の目標と達成状況を確認する面談を行い、3カ月ごとに人事も交えた評価会議を行います。そして、月1回、3カ月に1回、半年ごとの社員総会で、優秀な成績を残した学生は社員と同様に表彰されます。
170名の長期インターンシップ生がいて、採用も不定期なので、まさに1年中研修をしているようなものです(笑)。
もちろん、こうした仕組みを運用するためには、長期インターンシップ生を受け入れる職場全体の理解が重要です。その点では、社員側が「受け入れる自分たちこそ成長できる仕組み」として長期インターンシップを前向きに捉えられていることが、当社の長期インターンシップの定着を支えていると考えています。長期インターン生と向き合うことは、社員にとっても自分自身の仕事を深く理解するきっかけになり、マネジメントする側の体験が、日頃の上司との関係を振り返るいい機会になっているようです。
長期だからこその成長のプロセス
一方、学生にとっても、長期インターンシップはさまざまな意味で学びや成長の機会としてほしいと思っています。そのため、半年以上という期間を設定し、プロセスを経て成長していくことを実感してもらいたいと考えています。
例えば、インターンシップ参加当初、非常に頭が切れるけれども、だからこそ他人を攻撃しがちな学生がいたとします。その学生が、定期的なフィードバックを得ることで、自身の良いところは残しながら周囲と協働する姿勢を身につけていく。そんな成長の過程を間近で見られるのも、長期インターンシップの醍醐味です。
また、「学校で学んでいたことが、仕事の現場とつながって、腑に落ちた」と聞かされたり、ゼミなどで話をしてほしいと頼まれたりすると、学んでいることの意味を深く理解する助けになっているのだなと、嬉しくなります。
学生の経験値を上げて労働力を底上げする
そのように成長した学生が、やがて社会に出て、どこかの企業で活躍していく。新卒一括採用だけでなく、ジョブ型採用など、採用が多様化するほど、長期インターンシップの意味は大きくなっていくと考えます。学生を早期に取り合うのではなく、複数の企業が学生の経験値を上げて、労働力の底上げをする。「取り合う」のではなく、高めて「分け合う」採用へ。その一つの形が、長期インターンシップだと考えています。
そのため、当社では、必ずしも長期インターンシップ参加の学生ばかりから採用しているのではなく、一般公募で入った学生のほうが多い年もあります。
長期インターンシップから入社を希望する学生でも、よくよく話を聞いてみると、本当にやりたいことは別の企業にあるというケースがあります。そのような場合も、とことん話し合うことで、本人が本当にやりたいことに近づけるよう最後まで伴走します。
根底に流れているのは、当社の経営理念でもある「ヒト・ファースト」という考え方。徹底的に人と向き合い、スキルフィットではなくカルチャーフィットを大事にする。長期インターンシップは、そのような当社の姿勢を体現している一つの制度だと考えています。
取材・文/清水由佳 撮影/刑部友康