各界の著名人に、これまでに出会った、プロとしてすごいと思った人、影響を受けた人など「こんな人と一緒に働きたい!」と思う人物像をインタビュー。
素敵な役者さんとの共演は少し怖いけど、そそられる
きなみ・はるか●1985年、大阪府生まれ。2001年に『第1回ホリプロNEW STAR AUDITION』にてグランプリを受賞。04年、ドラマ『桜咲くまで』で女優デビュー。09年、映画『20世紀少年』で原作のキャラクター通りの小泉響子役を演じ、注目される。以後数々の話題作に出演し、ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズのムラサキ役、ドラマ『昼顔』の長谷川美鈴役などさまざまな個性の役柄を好演。18年7月期のドラマ『ハゲタカ』(テレビ朝日)、Netflixで配信中のドラマ『Jimmy〜アホみたいなホンマの話』に出演中。18年9月1日(土)より上演するミュージカル『シティ・オブ・エンジェルズ』では主人公の私立探偵ストーン(山田孝之)の秘書ウーリーを演じる。9月22日(土)~9月30日(日)に西武渋谷店A館7階催事場にて、『木南晴夏の渋BREAD』を開催。9月24日(月祝)には同イベントにてトークショーも開催。
見守り、信じてくれている存在の大きさ
――木南さんは19歳で女優としてデビューされる前にアイドルユニットとして活動されていて、芸能界でお仕事を始めたのは16歳の時ですよね?
はい。それまでは大阪の高校に普通に通っていました。幼稚園のころに『ベルサイユのばら』を観て宝塚歌劇団に憧れ、「女優になりたい」と漠然と思っていたんです。でも、芸能界で仕事をするということがどういうことなのかはまったくわかっていなかったですね。芸能事務所も吉本興業さんしか知りませんでした。
――当時は将来について不安を感じたり、悩まれたりしたこともあったのでは?
あったと思うんですけど、寝たら忘れちゃって(笑)。あと、ドラマや映画の登場人物のちょっとしたひと言に励まされたり、役者さんの素敵なお芝居を見て「私もこうなりたいな、こういう作品に出たいな」と元気づけられたりすることはよくありました。今もまだありますね。
――キャリアの悩みを誰かに相談することは?
ほとんどないんです。ただ、もちろん、いろいろな方に助けていただくことはたくさんあって、感謝しています。デビュー当時から20代まで担当してくれたマネージャーさんにもすごくお世話になりました。10代で芸能界に入り、社会人としての常識も身についていない私にあいさつの仕方から教えてくれ、母のような、姉のような存在でした。
映画『20世紀少年』に出演した時のこと。ヒロインのカンナ役を「どうしてもやりたい」と思ってオーディションを受けたのに、選ばれたのはカンナの友だちの小泉響子役。でも、「ヒロインではなくても、作品にはなくてはならない大切な役。絶対にやった方がいい」とマネージャーさんから背中を押されて…。与えられた役を演じ切ろうと作品に臨んだところ、皆さんから「はまり役」と言っていただけて、演技の幅も広がりました。
そのマネージャーさんはどちらかというと強い女性で、お互いに「弱みは見せられない」という感じだったんですけど(笑)、彼女は私が何も言わなくても、「今、悩んでるな」「今はつらい時期だな」というのをちゃんと見てくれていました。だから、彼女の言葉を受け入れて、頑張れた。見守り、信じていてくれる存在というのは大きいですね。
「子どものころから映画やドラマを観るのが大好きで、お芝居のワンシーンに人生のヒントをもらうこともありました。だから、映画やドラマの影響力を身をもって感じているし、そういうものを自分が作っていることを忘れないようにしています」。
後輩から話しかけられるとうれしい。「次は私から話しかけてみよう」って思う
――共演してみたい俳優さん、女優さんっていたりしますか?
ドラマや映画を観ていて、「いい役者さんだな。一緒にお仕事をしてみたいな」と思うことはよくあります。素敵な役者さんの演技を間近で見るというのは、同業者として少し怖いけれど、興味があるし、そそられる。刺激を受けます。
最近ですと、例えば、ドラマ『花のち晴れ〜花男Next Season〜』で共演させていただいた杉咲花さん。以前から大好きな女優さんだったので、共演が楽しみな一方、緊張もしていました。共演相手のお芝居を「素敵だな」と思い過ぎると、自分が萎縮してしまって、力を出し切れなかったりしないかなと心配する気持ちもどこかにあって。でも、ご一緒してみると、人をひきつけるすごい女優さんでありながら、普段の花ちゃんは和やかな気持ちにさせてくれる、本当に可愛らしい女の子。女優としても、ひとりの女性としても、いろいろなことを学ばせてもらいました。
――キャリアを積むにつれ、後輩の役者さんとの共演も増えてきたと思いますが、「可愛いな」と感じる後輩に共通点はありますか?
基本的にはみんな可愛いです。このごろ、どんどん年下の女優さんが可愛くなってきて…。
――どうしてなんでしょう?
自分でも不思議なんですけど、母性本能が強くなってきたみたいなんです。役柄の影響もあるかもしれないですね。これまではヒロインのともだち役など横にいる立場が多かったのですが、今はヒロインより少し年上のサポート役が増えてきていて。そういう役をやると、「この人を支えよう」とか「この人のそばにいて、何か助けてあげたい」というような気持ちが自然と湧いてきて、より愛おしく感じるのかもしれません。
実は、以前は年下の女優さんってどう接していいのかわからなかったんです。話しかけてみたくても、「先輩だから」と気を遣って相手をしてもらう感じになったらどうしよう、先輩から話しかけたら怖いかななんてドキドキしてしまって。今ではもう慣れてきましたが、話しかけてもらうと、やっぱりうれしいですね。「次は私から話しかけてみよう」って気持ちになります。
社会に出たら、人見知りをしていてはもったない
ドラマや映画の現場では、撮影が思うように進まず、全体の雰囲気が重くなることもある。「そんな時におしゃべりで場を明るくしてくれる人がいると、すごく助かります」。
――2018年9月には初のミュージカル『シティ・オブ・エンジェルズ』にも挑戦されます。
ミュージカルに出演するのは子どものころからの夢だったんですけど、初めてのことでどうなることやら…。でも、演出家の福田雄一さんとは『勇者ヨシヒコ』シリーズでご一緒させていただいて信頼しているので、楽しみです。
――『シティ・オブ・エンジェルズ』には山田孝之さん、佐藤二朗さんといった『勇者ヨシヒコ』で共演された面々も出演されます。『勇者ヨシヒコ』のメンバーは木南さんと玉木宏さんのご結婚の際もSNSでコメントを発表するなど仲が良いですね。
『勇者ヨシヒコ』の撮影は地方ロケが多くて、1カ月間毎日のように皆さんとご飯を食べたり、飲んだりという生活が続いたので、シリーズを重ねるうちに自然と仲良くなりました。普段は共演者やスタッフの方々とは会社の同僚のように長い時間を共有したりはしませんし、プライベートで友人になるということも私の場合は多くはありません。みんなそれぞれプロとして独立した存在で、「一期一会」になるかもしれない関係だったりする。だからこそ、一緒にお仕事をさせていただく時間を大切にしようって思います。
私は学生のころから人見知りで、この世界に入ってからもずいぶん長い間、初めて会った方と話すのが苦手だったんです。でも、『20世紀少年』に出演させていただいたころに、せっかくこんなにたくさんの出会いに恵まれているのに、人見知りをしていてはもったいないなあと気づいて。少しずつでも、自分から心を開いて皆さんと話すようになってから、仕事の充実感も変わってきた気がします。社会に出たら、殻に閉じこもらないことってすごく大事だと思いますね。
取材・文/泉 彩子 撮影/鈴木慶子