介護業界の人材拡充に対して、全国で様々な取り組みが行われています。今回は広島県社会福祉協議会が取り組む、「福祉の就職総合フェア」を軸に展開している一連の取り組みについてレポートします。
※ 本記事は、HELP MAN!●JAPANの活動の中で得た情報をもとに、記事作成をしています
ワーク型人材確保支援セミナーの開催で、事業者の採用力を上げていく
広島県社会福祉協議会では、人材獲得に対する様々な課題に対して民間の手法を取り入れたいということで、昨年よりHELP MAN!●JAPANとの協力が始まりました。まず最初に手を付けたのは、実際に求職者と接触できる場である「福祉の就職総合フェア(※)」の成果を最大化すべく、「人材確保支援セミナー」で自事業所の魅力の抽出やプレゼンの質を上げることです。
内容としては、第1回目は人材確保の肝である自事業所の「らしさ(魅力、こだわり)」を考え、ロールプレイやグループワークを通して磨きます。その後、第2回目に向けて「らしさ」あふれる採用ツールを創り上げることが宿題となります。第2回目は本番の「福祉の就職総合フェア」を想定して、宿題を使って「らしさ」をプレゼンテーションし相互にフィードバックしあいます。最終回の第3回目は、「福祉の就職総合フェア」後に、振り返りやと次回へ向けての改善策を検討しあいます。
※「福祉の就職総合フェア」とは、広島県社会福祉協議会が主催する就職合同説明会イベント。年に数回実施。
さらに今年は「福祉の就職総合フェア」と同時に「福祉職場の魅力自慢コンテスト」を開催
今年は7月の「福祉の就職総合フェア」と同日に、「福祉職場の魅力自慢コンテスト」の本選を開催することに取り組んでいます。
このコンテストは「福祉の就職総合フェア」に参加している学生・求職者に「福祉・介護職場の魅力自慢(アピール)」をプレゼンテーションし、審査をしてもらうというものです。コンテストの本選に向けて事前準備や予選をしっかりと行い、質の高いメッセージ伝えていくことで「福祉・介護業界への就職に対する動機づけ」を促すことを狙っています。
広島県社会福祉人材育成センター所長の仁志田訓司さんは「今後はセミナーをより良いものにしていくことはもちろんのこと、人材確保の裾野を広めるフェーズへと進んできたと考えています。一連の取り組みによって『福祉の就職総合フェア』がさらに活気あふれる場となり、関心を持つ人を一人でも多くするとともに、事業所の採用力の向上に繋げていければと思っています」と語ってくださいました。
人材確保支援セミナーによる変化と成果
人材確保セミナーは昨年すでに2回実施してきました。このセミナーによる成果はすでに出始めており、実際に参加した事業所では「どのように自事業所のPRをすればよいか」を考え、実施をしているところも多く、求職者が興味を持ちやすい状態が徐々に作れています。現に2011年より2012年の「福祉の就職総合フェア」において、一人当たりの面談件数が増加するという効果が表れていますが、これはイベントに来た人が今までより多くの事業者に興味を持ってくれた結果だといえます。
参考:人材確保支援セミナーに参加した事業所の、フェアでの成果は際立っています。ぜひこちらもご覧ください。(P14-15)
『福祉ひろしま No.80』へのリンク
参加者が語る未来へと繋がる変革の兆し
これらの一連の取り組みは、前述のような具体的な成果以外にも多くのものをもたらしています。まず1つに、セミナーのグループワークなどで事業者同士の横の繋がりができ、情報交換や求人者に対して他事業者への紹介などをする関係性ができつつあること。次に「みんなで一緒に頑張っていこう」「もっと業界全体で人材を取っていこう」という積極的な気持ちが芽生えていることなどです。参加した方からは「最初はあまりこのセミナーへの参加に気が進んでいなかったが、来てよかったと思っている。みんなのやる気や、事業者ごとのカラーを知ることができ『自分も負けられない』と思った」(有限会社リラックス 岸倫之氏)や「過疎化が進んでいる地域で施設をやっており、地域特性がマイナスになることの悩みを感じていた。しかし、それが売りになることもあるのではないかと思えた。もともと持っている良いところをしっかり捉えて伝えていくというのは大事だと思った。昨年の冬のフェアではフェア全体の雰囲気も変わってきていて、見に来る人にもそれが伝わっているのではないかと思う」(社会福祉法人 宗越福祉会 伊藤大悟氏)などの声が挙がってきています。
HELP MAN!●JAPAN 門野よりひと言
HELP MAN!●JAPANを通じて、介護人材採用のための取り組みのお手伝いをしていますが、中でも広島県社会福祉協議会の取り組みは全国の模範になるものだと思います。今後、全国各地で広島のエッセンスを取り入れ進化させ、それをまた共有し合うことで、日本全体の魅力がUPしていくのだと思います。今後の介護業界の進化・革新へのキーワードは、良い成功事例をどんどん作り「真似る」「共有する」「繋がる」ことだと感じています。