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2013.06.03

介護業界の“今”を知る≪離職率編≫

さまざまな先入観と認知不足により、介護業界の実態は多くの人に知られていない現状があります。これは学生に限ったことではなく、学生を取り巻く周囲の人々にも言えることでしょう。今回は、介護の仕事というとまず言われる「離職率」について見てみましょう。

※ 本記事は、HELP MAN!●JAPANの活動の中で得た情報をもとに、記事作成をしています

イメージとは異なり、多くの事業所ではほとんどの人が離職していない

最初に見ていきたいのが介護職における離職率の推移(図表1)です。平成18年度から見てみますと、平成19年度と平成22年度に一時的に上昇してはいますが、推移としては年々減少傾向にあると見てとれます。結果、産業計はほぼ横ばいで、それに介護職も近づいてきており、直近の23年度でいえば、特に遜色がないことが分かります。

さらに、介護の現場を訪問介護職員と介護職員(※)、正社員と非正社員に分けて見ていきましょう(図表2)。訪問介護職員の正社員と非正社員の離職率の平均は13.8%であり、産業計よりも低いことが分かります。一方、施設で働く介護職員は正社員が主力であり、その主力である正社員のみで見ると14.0%と、こちらも産業計の離職率より低いことが分かります。

※この調査における訪問介護職員の定義は、介護保険法の指定を受けた訪問介護事業所で働き、高齢者等の家庭を訪問して、家事などの生活援助、入浴などの身体介護を行う者でいわゆるホームヘルパーをいう。介護職員の定義は、訪問介護以外の介護保険法の指定介護事業所で働き、直接介護を行う者をいう(看護職は含まない)。

離職の現状を事業所単位で見ていくと(図表3)訪問介護職員、介護職員、正規、非正規にかかわらず離職率0%の事業所が最も多いことが分かります。特に訪問介護職員の正規職員においては、1年間誰も辞めていない事業所が70.8%も占めています。また半数以上の事業所が、産業計の14.4%より低い離職率である10%未満です。つまり、多くの事業所ではほとんどの職員が離職していないという実態がわかります。

離職率は二極化。定着率向上のための取り組みの成果も出てきている

事業所別の離職率をさらに見ていくと0%の次に30%以上のところが多くなっています。介護業界に限ったことではありませんが、人材の定着において二極化しているという現状が見えています。
人材が定着している事業所の割合は、一般的なイメージよりかなり高いのではないでしょうか。そういった事業所は、積極的に人材の定着戦力化に向けた取り組みをしています。入社時だけでなく、3カ月研修、6カ月研修と丁寧な人材育成プログラムを導入していたり、2カ月にも及ぶOJTを取り入れる事業所など、さまざまな取り組みの結果が出てきているとも言えます。

離職理由のトップは「理念・運営のあり方への不満」

また別の調査では、離職理由のトップが「法人や施設・事業者の理念や運営のあり方に不満があったため」であることがわかっており、介護業界においては、採用時のマッチングが非常に重要であると言えます。介護職の現場では、利用者の求めるものと効率化のバランスは常に問われるものです。この問いに対して「利用者にとってどうあるべきか」という視点の基準をしっかり持っている事業所であるか、またその基準が自分と一致しているかが事業所選びにおいて大切であると考えられます。
ここ数年、事業所では人数をそろえること以上に、理念や大事にしていることへの共感を持ってもらえるかを重要視するところが増えてきています。学生や求職者にとっても自分と合った事業所を見つけることは重要です。HELP MAN!●JAPANでは、学生が自分に合った事業所を見極めるポイントを「5つの軸」として挙げています。事業所側も理念に合った人材を採用し、学生側も自分に合う事業所を選び、入社前にそこで働くことのイメージを持てるようになれば、離職率もさらに下がるのではないかと考えています。

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