超高齢社会が加速する日本。世界最速・最高齢の日本の動きに世界が注目しています。私たちはこれからの超高齢社会を支える介護業界に着目し、漫画『ヘルプマン!』を発刊している講談社と一緒に『 HELP MAN!●JAPAN(ヘルプマンジャパン) 』プロジェクトを2011年に立ち上げました。業界に携わる人と協働し、介護の仕事の認知・イメージ向上と介護事業者の採用支援について行ってきたこれまでの活動を、HELP MAN!●JAPANの門野(プロフィールは後述)に聞きました。
未来の介護業界とプロジェクトの目的
2030年に日本の社会構造が変わる
2007年に日本は世界でいち早く超高齢社会へと突入しました。今から約20年後の2030年には団塊の世代が80歳超えになり、いわゆる「後期高齢者」が現在より倍増することがわかっています。日本の社会構造の変化は、常に団塊世代の加齢によるライフスタイルの変化とともにありました。社会を変えてきた団塊世代が後期高齢者になることで、大きな社会変化が起こることが予測されます。世界中で誰も見たことのない超高齢社会を、日本はどう乗り越えていくか、今まさにその転換期を迎えています。
介護ビジネスは未来の日本のインフラであり、介護職は高度なコンサルタント
これからの日本の方向性を決めるのは、介護などの生活インフラです。そう考えると、介護は決して狭い分野ではないことがわかります。様々な事業者の方々にお会いする中で、介護の仕事は最低限の生活支援ではなく、その人を深く理解し、刻々と変化する状況の中でサービスを提供するという高度な仕事であると感じます。オペレーションではなくクリエイティブであり、範囲も生活全般と限りなく広い、さらに高いコミュニケーション能力が必要なコンサルタント的存在です。
若者に選ばれ、そして事業者も選べる採用の実現を目指して
一方、介護ビジネスの現状を見てみると増え続ける需要に対して、慢性的な人手不足が続いています。多くの若者は就職活動の際、介護業界が選択肢にあるということに気づいていません。事業者側も採用に向けたアピールがまだまだ未成熟な状態にあります。 HELP MAN!●JAPANは、未来の日本を支える介護の仕事が多くの若者にとって職業選択肢の一つとなるように大きく2つの取り組みを行っています。1つは業界や仕事についての情報を広く提供することです。もう1つは事業者に対し、採用ノウハウを提供することです。この2つの取り組みにより、多くの若者に介護の仕事が選ばれ、誇りを持って取り組むことができる社会の実現を目指しています。
株式会社リクルートキャリア 雇用創出支援グループ
HELP MAN!●JAPAN担当 門野友彦
1985年(株)リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングをおこなう。1999年以降リクナビNEXTの立ち上げ等、新たな人材マッチングサービスの開発・運営に携わる。2011年からHELP MAN!●JAPANプロジェクトを担当。学生には介護・福祉分野の仕事の魅力を、事業者には自社の魅力(らしさ)の発信方法をお伝えしてまわり、お互いが相思相愛になれるように全国を飛び回っている。
介護業界を知ってもらうために ~学生への取り組み活動~
業界のトップランナーと未来に向けての情報提供
学生には就職活動の選択肢に、介護業界があることを気づいてもらうための活動をしています。介護の最先端を切り開く人の考えや、今後介護ビジネスがどのように進化・成長していくかを知ってもらうことが主な取り組みです。今イメージしている「介護」がすべてではないことに気づき、学生たちが介護ビジネスに未来を描けるような情報を提供しています。
Webメディア HELP MAN!● JAPAN
HELP MAN!●JAPANのベースメディア。介護業界でフロンティアとして活躍する人から、大手企業の介護商品の開発担当者まで、介護に関わる多くの方々のインタビューを掲載しています。また、介護ビジネスの未来をデータで見るコラムや、誤解されがちな介護の現状についてのコラムも掲載しています。月1回更新。
紙メディア HELP MAN!●JAPAN
2011年より年1回発行。2013年は5.5万部。漫画『ヘルプマン!』単行本第21巻と介護業界の方のインタビューやコラムなどを掲載しています。リクルートキャリアの就職イベントや、社会福祉協議会主催の就職イベント、福祉学科のある学校などで配布し、漫画を通じて介護業界にポジティブなイメージを持ってもらうことを目的としています。また、HELP MAN!●JAPANプロジェクトの認知に向け、介護事業者向けの勉強資料としても使用し、介護業界で働く人のモチベーション向上にもつながっています。
リクナビチャンネル「介護業界」スペシャル
リクナビ主催のweb番組。2012年7月に実施し、『ヘルプマン!』著者くさか里樹氏、株式会社ベネッセスタイルケア代表取締役社長小林仁氏、NPO法人「もんじゅ」代表飯塚裕久氏に出演していただきました。学生の疑問や不安に対してリアルタイムで回答することで、参加していた約300人の学生からは「問題が山積みというより希望が持てた」「介護業界に発展の可能性を感じた」「閉鎖的に感じられていた介護が、明るく広がっていることがわかった」などの多くのコメントが寄せられました。
未来への兆し
認知不足やネガティブなイメージを払拭することで、介護業界の魅力は必ず伝わると感じています。学生が介護ビジネスに反応してくれる6つのキーワードを入れて行ったリクナビチャンネルでは、スタート時と終了時で大きな変化がありました。リクナビ内における福祉業界のエントリー数のランキングも2011年93位から、2013年は78位と上昇しています。伝え方を変えることで、学生の考えも変わっていく手応えを感じています。
※グラフはリクナビチャンネル参加社に対するアンケート結果。開始時に比べ終了時には、「介護業界で働くことがイメージできない人(イメージできない&あまりイメージできないの合計)」が激減し、「イメージできる(イメージできる&ややイメージできるの合計)」が増加している。
介護業界で活躍できる人材の採用と定着に向けて ~事業者への取り組み活動~
採用における知見の蓄積と普及活動
事業者様などに対しては、人材獲得や業界のPRをサポートする活動をしてきました。すでに積極的に取り組んでいる事業者様や社会福祉協議会様の動きを手本とし、それを具体的なノウハウに落とし込むことで横展開ができるような仕組みづくりに取り組んでいます。
採用ノウハウを広める取り組み
私たちが長く取り組んできた採用の分野の知見に加え、採用成功している事業者様の事例を取材するなどして、採用ノウハウをまとめてきました。具体的には“”採用をマーケティングの3Cで考えること”や、“学生の立場になってつくる「求人目的」のパンフレットの制作ノウハウ” 、“自法人の「らしさ」を抽出する方法や伝え方”などです。現在は、社会福祉協議会主催の採用ノウハウ勉強会などに参加させていただき、幅広くお伝えしていくことを目指しています。
活用人材の要件調査への取り組み
有料老人ホーム最大手の株式会社ベネッセスタイルケア様の協力を得て、活躍人材の要件を調べました。SPI2という適性検査を用いた結果、日本人の代表的な6タイプの中で「慎重・繊細」タイプが活躍人材であることが分かりました。 もちろん、このタイプだけが活躍できるという意味では有りませんが、少なくともこのタイプにとって介護業界が働きやすい職場であると言えそうです。この結果から活躍できる可能性のある人材が13.4%もいるということが分かりますし、定着・活躍するタイプが分かることでより適切な採用選考が可能になると考えています。
大学への働きかけについての取り組み
神奈川県社会福祉協議会様は福祉系の学部や学科を中心に行ってきたPR活動を、福祉系以外の大学へ広げる取り組みをしてきました。昨年はHELP MAN!●JAPANも協力させていただき、神奈川大学、青山学院大学で業界研究を開催することができました。福祉学科を持たない多くの大学の就職支援担当者は、介護業界に対し「キャリアパスが見えづらい」「生活していけるのか不安」といった意見も多く、実情が伝えられていないこともわかってきています。 HELP MAN!●JAPANでは、リクルートがすでに持っている「大学との接点」を活かし、社会福祉協議会と大学との繋がり作りをお手伝いさせていただきました。こういった活動は、ほかの自治体の社会福祉協議会にも徐々に広がりを見せており、私たちとしては横展開のスピードアップなどにお役に立てればと思っています。
今回の記事ではプロジェクトの取り組みについて、大まかな内容をご紹介させていただきました。今後、様々な取り組みについての具体的な内容をご紹介する記事を作成し、掲示をさせていただきます。これを機会に、介護業界・介護職種ならびに、HELP MAN!●JAPANへの興味をお持ちいただければと思います。