※本記事は2012年3月に「リクルート進学総研」に掲載された記事からの転載です。
ここまで3回にわたり、『就職白書2012』の結果を用いて、就職市場が抱えている課題や、現在の就職活動プロセス、決まる人と決まらない人との違いなど、大卒就職の“イマ” を解説してまいりました。
最終回となる今回は、大卒就職の“ミライ” について、『カレッジマネジメント』小林編集長と共に考えてみます。
●大学ができること[1]:新たな出会いの提供
小林 この『就職白書2012』で一番面白いと思ったのは、実に80.2%もの学生が入社予定企業に満足しているという事実です。
岡崎 当初からの第一志望企業に入社する予定の学生が34.2%ですから、それを大きく上回る値です。
小林 これは、就職活動における新たな出会いによって、結果的に満足度の高い内定先を確保している学生が少なからずいる、ということを示していますよね。
こうした機会が拡大されると、もっともっとミスマッチは解消されるのではないでしょうか。例えば就職活動まで待たなくても、低学年の頃から、思ってもみなかった企業でインターンシップをする機会などがあると、学生の視野も広がります。
岡崎 就職活動が始まって初めて「将来を考える」「世の中を知る」ことに本気で取り組み始めるタイプの学生は、総じて就職活動に苦労します。本来就職活動とは「具体的な就職先を見つける活動」であるはずなのに、「将来を考える」「世の中を知る」作業も同時並行で進めるので、就職活動そのものが肥大化し、結果的に長期化しているケースも少なくありません。
小林 3年生になって急に「就職活動」という形でキャリアデザインを始めてしまう訳ですね。しかし今は、キャリア教育を一生懸命に行っている高校も多くなっています。大学1・2年生から「将来を考える」「世の中を知る」作業に取り組むのと共に、高校と大学との接続がさらに強化されれば、学生の就職活動は「具体的な就職先を見つける活動」に専念できるようになるのかも知れませんね。
●大学ができること[2]:教育成果の振り返り
小林 「採用で重視する項目と学生がアピールした項目」のギャップも、興味深いデータですね。
よく大学から「学生は就職活動の際に、大学で学んできたことや学業成績をアピールしない」と伺うのですが、この調査結果でも1位はアルバイトになっています。
岡崎 調査手法等を変更しているので単純比較はできないのですが、10年ほど前に同様の質問をした際には、「大学で身に付けた専門性」や「大学での成績」は、学生・企業ともにもっと低かったのです。
このデータにもその傾向が表れていますが、学生は「取り組んだ対象=what」についてアピールしがちである一方、企業は「取り組んだ動機=why」や、「取り組みから得られたこと=so what」を知りたい。
学生のアピール項目で1位の「アルバイト経験」は、企業の採用重視項目では7位とギャップがありますが、これはアルバイト経験“を” アピールしてはいけない、ということではなく、アルバイト経験“から” 何を得たのか、をアピールしたほうがより伝わるということですよ、というふうに、学生の皆さんには解説しています。
小林 大学でもPBL(Project Based Learning, Problem Based Learning)など、より課題解決型の実践的な教育を充実させていますが、「PBLに取り組みました」にとどまらず、「そこから何を得たのか」まで昇華させられるように学生を導けるとよい、ということですね。
●リクルートができること
小林 こうして見てみると、学生が社会人としてよりよい第一歩を始めるためには、大学生活全般を通じて支援できることが多くありますね。
岡崎 就職活動生の悩みを伺っていると、就職活動が始まってからでは遅いと感じる問題を抱えている人も少なくなく、アドバイスが難しい場合もしばしばです。未然に防ぐことができればと強く思います。
小林 若者のキャリアナビゲーターとして我々に何ができるのか。リクルートも、「学ぶ」と「働く」を総合的に捉え、サービスを進化させていかねばなりませんね。
「リクルート『就職白書2012』を読み解く」、いかがでしたでしょうか。
ぜひご意見やご感想等伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
株式会社リクルート『リクナビ』編集長
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【連載一覧】
2012年卒生の就職活動に対する震災の影響と、ここ数年就職市場が抱えている課題について解説します
情報収集から内定に至るまでの「就職活動プロセス」について解説します
「“決まる人”と“決まらない人”との違い」について解説します
<第4回/終>大卒就職のミライ
大学、そしてリクルートができることについて、『カレッジマネジメント』小林編集長と共に考えます