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2012.04.25

<第3回>大卒就職のイマ[3]

※本記事は2012年3月に「リクルート進学総研」に掲載された記事からの転載です。

4月も下旬となり、来週卒業予定者の就職活動生の中には、企業からの内々定を得て就職活動を終える人も見られ始めました。

一方、下記のようなメールも、リクナビに多く寄せられ始めています。

◇志望度が高かった企業は二次で駄目でした。そこにかけていたので、また新たに企業探しなんですが、これから先が見えてきません(4月22日)
◇4月に入ってから就職活動のペースが落ちてきています。親に指摘されたのですが、私はアルバイト先を探すような感覚で行っていると。自覚が無かった分、この先どうやって就職活動をすればいいのか分からなくなりました(4月21日)
◇志望業界に行けないめどがたってきてしまい、別の道も考え始めましたが、色々考えていたらどうしたらいいか分からなくなってきました(4月21日)
◇私はこれまで一次面接より先に進めたことがなく、本当に就職できるのだろうかととても不安になっています(4月18日)

就職活動をスムーズに進められる人とそうでない人には、一体どんな違いがあるのでしょうか。今回はリクルート『就職白書2012』の調査結果を、「“決まる人” と“決まらない人” との違い」に着目して見てまいりましょう。

●「未決定・継続中」学生が「就職決定」学生に比べて不足しているものは?

 『就職白書2012』では、2012年卒業予定の学生に「2011年12月時点での状況」を尋ねていますが、「まだ進路が決まっていない」とする人は大学生で26.9%、大学院生で9.3%でした。そしてその進路未決定者のうち大学生の95.4%、大学院生の92.9%は「就職活動を継続中」としています。

そこでこの12月時点で、「就職先が決定している人=就職決定」と「まだ進路が決まっておらず就職活動を継続している人=未決定・継続中」とを分けて見てみました。

まず「学生の自己評価」について。
全体では「不十分」「どちらかというと不十分」の合計(※以下、「不十分計」とする)が22.3%と、自己評価が他に比べて高めの『働く意欲』については、「就職決定」のみでは17.7%、「未決定・継続中」のみでは29.1%と、11.5pt.の差が見られました。

一方、全体での「不十分計」が44.8%と最も大きかった『業界研究』については、「就職決定」のみでも38.8%と高めで、「未決定・継続中」においては51.3%と半数以上となりました。

また、「就職決定」と「未決定・継続中」との差が最も大きかったのは『将来ビジョン』です。「就職決定」が39.2%であったのに対し、「未決定・継続中」では59.3%と、20.1pt.もの開きがありました。

学生の自己評価(「不十分」とする人の割合)

『将来ビジョン』と並んで両者の差が大きかったのは『自己分析』です。よく「就職活動は軸が大事」と言われます。
今回の調査結果からも、卒業4カ月前時点で就職先が決まっていない人の方が、自分のありたい姿や強み/弱みなどが整理されていない傾向があると言えそうです。

●“タテ” “ヨコ” “ナナメ” 、就職に効くコミュニケーションは?

 次に「就職活動に関する相談相手」について見てみましょう。
「就職決定」「未決定・継続中」共に、上位3位は「従来からの友人」「家族」「大学の先生やキャリアセンター・就職部など」で、いずれも4割を超えていました。
一方両者の差が最も大きいのは「就職活動を経験した先輩学生」(16.7pt.)でした。「OB・OGなどの社会人」も6.5pt.の差があります。

就職活動に関する相談相手

 「未決定・継続中」の人たちは、身近な“タテ” や“ヨコ” とは比較的よく会話しているが、就職活動を経験した先輩学生や、OB・OGなどの社会人といった、やや“ナナメ” 的な人への相談が少ないという傾向もありそうです。

 キャリア教育の中でもしばしば「ロールモデルの存在」の重要性が指摘されますが、就職決定においても「一緒に働きたいと思える人と出会えたかどうか」がカギになっており(※1)、“ナナメ” のコミュニケーションは、そうした「ロールモデルを見つける力」を鍛える効果もあることと思われます。
※1:『就職先決定に関する学生調査』

 次回は「学生を“決まる人” に導くために、大学ができることは何か?」について、『カレッジマネジメント』小林 浩編集長と共に考えていきたいと思います。

株式会社リクルート『リクナビ』編集長
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【連載一覧】

<第1回>大卒就職のイマ[1]

2012年卒生の就職活動に対する震災の影響と、ここ数年就職市場が抱えている課題について解説します

<第2回>大卒就職のイマ[2]

情報収集から内定に至るまでの「就職活動プロセス」について解説します

<第3回>大卒就職のイマ[3]

「“決まる人”と“決まらない人”との違い」について解説します

<第4回/終>大卒就職のミライ

大学、そしてリクルートができることについて、『カレッジマネジメント』小林編集長と共に考えます

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