新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションの在り方が大きく変化している。対面で行われていた説明会や面接などがオンライン化し、時間的・金銭的な学生の負荷は軽減。一方、「話が伝わっていないのでは?」「面接の評価が低くなるのでは?」といった学生の不安の声も大きい。そこで、すでに学生とのコミュニケーション手法の改革を実践している企業に利点や課題、学生へのメッセージを伺った。
リクルーターや人事スタッフのきめ細やかな対応で
オンライン化で欠けがちなコミュニケーションを補完
NTTコムウェア株式会社
総務人事部 人事部門 採用担当
三成竜也さん(右)
陳 妹亜さん(左)
※記事は、2020年6月12日にオンライン取材した内容で掲載しております。
状況に応じて、内容に変更の可能性がございますので、最新状況は こちら でご確認ください。
新型コロナウイルス感染症の拡大に対応するため、採用活動において取り組まれていること、配慮されていることは?
三成さん: 2月下旬に企業セミナーのオンライン化、グループワークの廃止を決定。1対1の面談は学生の希望に応じて電話もしくは対面を選んでいただいて実施していましたが、状況が深刻化し、3月中旬に全面オンライン化を決めました。これまでにオンライン面接を実施したことはほとんどなく、仕組みづくりはWeb面接プラットフォームを選ぶところからスタートしました。
陳さん:オンライン化にあたり、とりわけ慎重に対応を検討したのは、「リクルーティングサポータ面談」です。NTTコムウェアでは長年リクルーター制度を導入しており、若手社員を中心とした約200名の「リクルーティングサポーター」が採用活動に参加。学生一人に対して社員が一人以上ついて、選考終了まで伴走します。「リクルーターとの出会いが入社の決め手になった」という社員も多く、当社では採用活動においてリクルーターと学生の皆さんのコミュニケーションを非常に大切にしています。
「リクルーティングサポータ面談」はエントリーシートおよび適性検査に合格した方を対象に実施しており、学生とリクルーターが初めて出会う場。例年は社外のカフェなどで行い、リラックスした雰囲気の中、当社の情報を提供するとともに、就職活動全般や学生生活のお話もうかがい、お互いが「生の声」を交換していました。できるだけ対面で実施したいと考えていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、電話面談やオンライン面談にて実施することに。リクルーターと学生の皆さんとの関係性を深めるうえで、大きな痛手になるのではと懸念していました。
「リクルーティングサポータ面談」の非対面化による、採用活動への影響は?
三成さん: 結論から言えば、大きな影響はありませんでした。4月上旬の緊急事態宣言後は社員はそれぞれ在宅勤務となりましたが、人事とリクルーター間の情報共有はもともとシステム化されており、面談の中身や内容は人事も常に把握できていました。また、具体的な活動については、リクルーターの自主性を尊重し、学生への連絡方法や回数に細かいルールは設けていませんが、各自が電話やメールで学生一人ひとりをていねいにフォローしてくれました。
陳さん:内定した学生から「コロナで先が見えない中、リクルーターがしっかりと話を聞いてくれ、温かな社風を感じた」という声を聞き、当社の採用活動におけるリクルーター制度の意義をあらためて感じています。リクルーターが自主的に適切な活動を行えているのは、リクルーター制度が当社の「文化」になっているからかもしれません。リクルーターに憧れて入社をした社員が多いので、自分がリクルーターになったときに自然と学生の気持ちに配慮して取り組むのだと思います。また、何よりも、みんな楽しんで活動をしています。そうした社員の思いや姿勢は、コミュニケーションの手段を問わず、学生に伝わることがわかりました。
企業セミナーや面談のオンライン化に伴い工夫されたことは?
三成さん: 地方在住の学生にも当社を知っていただきやすいよう、企業セミナーは2年前からオンラインでも実施しており、応募者の1割が参加していました。ライブ配信で実施後、参加できなかった方にも保存した映像を観ていただけるスタイルです。従来のオンラインセミナーは全体的な会社説明を行う1種類のみでしたが、全面オンライン化にあたり、気軽に閲覧できる利点を生かし、職種別、女性向けといったバリエーションを用意。社員による説明やチャットを利用した質疑応答のほかに、当社の魅力を多角的に理解していただけたらと、それぞれのテーマについて階層や職種の異なる複数の社員に座談会形式で語り合ってもらうコーナーを設けました。
陳さん:私も一社員として座談会のひとつに参加したのですが、面接でお話しした学生から「座談会に出てましたよね?」と言われました。関心を持って見ていただけたと感じ、うれしかったです。
三成さん:面談については、オンライン化による通信トラブルに加え、コミュニケーションが硬直化しやすくなることが気がかりでした。当社では面談での質問を通し、学生の魅力を引き出していくことを大切にしていますが、画面越しでは会話の温かみが失われがちです。とくに最終面談は事業部長クラスの社員が担当するため、学生が身構えてその人本来の魅力が社員に伝わらないのではと考えました。ところが、実際に実施してみると面談そのものから得られる学生からの情報は質・量ともに例年と変わらず、学生が伝わらないのではと心配する「熱意や元気さ」は、オンラインでも十分伝わる」というのが社員からの反応でした。
最終面談でのコミュニケーションにオンライン化による影響があまりなかったのは、オンライン上に「控え室」を設け、陳を含めた人事部スタッフ数名で面談前後のフォローをすることにより、学生に比較的落ち着いた状態で面談に臨んでいただけたことが大きかったと思います。学生には最初に「控え室」にアクセスしてもらい、人事スタッフが基本的なマナーなどの注意事項を説明したり、ちょっとした会話で和やかな雰囲気を作ったうえで面談に送り出し、終了後は再び「控え室」に戻ってきてもらうという仕組みです。「控え室」で接続フォローを行ったため、学生の「面談室」への入室もスムーズでした。
陳さん:学生の中には十分な魅力を持ちながら、面談に慣れていないために緊張していたり、話すことが苦手な人もいます。そうした学生に関してはリクルーターから事前に情報共有がありますので、学生が面談で本来の持ち味を発揮できるよう、面談前のアイスブレイクをていねいに行うようにしています。
また、面談後の「控え室」では、「気になることは何でも聞いてください」と声をかけて質問をしていただいたり、面談の感想をお聞きする時間を取っています。お話の内容は評価に反映させていません。最終面談が終了したタイミングということもあり、心を開いてお話をしてくださる学生が多く、30分以上会話をすることもあります。リアルの最終面談では控え室や、面談終了から見送りまでの時間でのちょっとした会話から、当社の採用活動から学生が得た印象や志望度をうかがい知ることができ、その後の採用活動の質を向上させるために生かしていました。オンラインの面談ではそうした時間を持ちにくいため、面談後の「控え室」が学生の本音に触れる貴重な機会になっています。
今後に向けて検討していることは?
三成さん:オンラインでの企業セミナーは場所や開催日時の制約がないことから、多くの学生にコムウェアの魅力を知ってもらえる場であると考えています。リアルでは1回のセミナーで会場に収容できる人数は200名ほどですが、オンラインでは参加者が500名近くにのぼることもありました。内容も好評で、手ごたえを感じており、新型コロナウイルス感染症の拡大状況にかかわらず、次年度以降も実施を予定しています。ただ、リアルの企業セミナーは開催前後の時間でのコミュニケーションを通し、個別の質問にお答えできる利点もあるので、学生が希望に応じて選べるようハイブリッドで開催できたらと考えています。
陳さん:新型コロナウイルスの早期収束は見込めないことから、夏に実施するインターンシップはオンラインでの開催を考えています。インターンシップの内容は、SIer(システム・インテグレーター)の仕事を体験していただくもの。例年1日かけて行っていましたが、オンラインでは集中力を保ちにくいため、半日ずつ2日間の日程で開催予定です。このほかに夏に3日間、秋に1日の計4日間にわたって開催するプログラムも予定していますが、夏はオンラインで実施し、秋も社会情勢によっては切り替える予定です。また、4日間のプログラムは現場の社員がチューターとしてグループワークのフィードバックを行うのが特徴のひとつ。例年、社員とのコミュニケーションが学生から大変好評なので、完全オンライン化する場合も、チューター制度はできる限り残したいと考えており、具体的な方法を検討中です。
就職活動を行っている学生の皆さんへ
三成さん:就職活動でぜひ大切にしていただきたいのは「自己分析」です。就職活動を通し、幅広い企業や業種、職種を知ると同時に、あらためて自分自身を見つめ直すことにより、自分の「やりたいこと」、「できること」の可能性を広げていってほしいです。また、就職活動では企業に「選ばれる」ことを意識しがちですが、面談や面接は企業、学生双方のマッチングの場です。自らを存分にアピールするとともに、社員との面談を通じて、自分が本当にその会社で働くイメージを持てるかどうかを見極めていただけたらと思います。
陳さん:就職活動中はさまざまな情報が飛び交いますから、何を基準に会社や仕事を選べばいいのかわからず、知名度の高い企業に目が向きがちです。とくにオンライン化により、説明会など対面での情報収集がしづらくなると、その傾向が強まるかもしれません。でも、私自身の経験からお話しすると、弊社のような「CMはしていないけれど、業界トップクラスの技術を持っている」という「隠れた魅力」を持つ企業は数多くあります。就職活動は世の中を知るための絶好の機会でもありますから、幅広い企業から話を聞き、自分に合った一社を見つけてほしいです。
2021年卒学生の採用スケジュール
オンライン書類選考・適性検査→リクルーティングサポータ面談→1次面談(次長・課長クラスのリクルーターによる面談。社員1名対学生1名)→最終面談(事業部長クラスの社員による面談。社員2~3名対学生1名)
取材・文/泉 彩子