さまざまな分野で活躍する有名人の方々を直撃インタビュー。
もしも今の仕事をしていなかったら、どんな職業を選んでいたかを想像していただきました。どんなお話が飛び出すでしょうか。
Vol.3 女優 綾瀬はるかさん
数々のテレビドラマや映画に出演し、コミカルからシリアスまで幅広い役柄を演じてきた綾瀬はるかさん。2018年7月期のドラマ『義母と娘のブルース』(7月10日(火)夜10時スタート)では、娘がいる男性(竹野内豊さん)と結婚し、「義母」として奮闘するキャリアウーマンの主人公・岩木亜希子を演じています。
そんな綾瀬さんが、もしも女優になっていなかったら、やっていたかもしれない仕事は…。
あやせ・はるか●1985年、広島県生まれ。2000年、第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞しデビュー。04年、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』で注目を浴びる。以後、数多くのテレビ、ドラマで活躍。13年、『八重の桜』ではNHK大河ドラマ初出演および主演を務めた。おもな出演作にドラマ『白夜行』(06年)、『JIN-仁-』(09年、11年)、『精霊の守り人』(16年〜18年)、『奥様は、取り扱い注意』(17年)など。18年7月10日(火)夜10時スタートの主演ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)では初の義母役を演じる。
――綾瀬さんがもし女優さんになっていなかったら、どんなお仕事をされていたと思いますか?
何かなあ。食べることが好きだから、お料理研究家とか食関係の仕事はやってみたいですね。でも、『義母と娘のブルース』の亜希子さんみたいなバリバリのキャリアウーマンもかっこいいなあと思って。ほら、映画『プラダを着た悪魔』(ヴォーグ誌で女性編集長のアシスタントをしていたローレン・ワイズバーガーが実体験をもとに書いた03年4月刊行のベストセラー小説を映画化した作品)でメリル・ストリープが演じた鬼編集長みたいな人に憧れます。部下に「ゲッダウト(Get out)!」なんてバシッと言っちゃったり、街をコーヒー持ってさっそうと歩いてたり、かっこいいなと思いますね。
「ゲッダウト!」(振り付きで)
――綾瀬さんがバリバリのキャリアウーマンというのは意外ですが、「仕事が好き」という点ではうなずけます。
仕事が好き…最近はそうかもしれないですね。15歳でデビューして、19歳でドラマ『世界の中心で愛をさけぶ』に出演させていただいたのをきっかけにお仕事をたくさんいただけるようになったんですけど、20代前半は目の前のことをやるだけで精一杯で。女優のお仕事って緊張するし、「大変だな〜」「しんどいな〜」ってずっと思っていました。それが変わったのは、NHK『八重の桜』で大河ドラマを経験させてもらったことが大きかったです。
――なぜ変わったのでしょう?
『八重の桜』の制作期間は1年1カ月。各回のリハーサルも1日かけて、じっくりと撮影をしていくんですね。その過程で、監督だけでなく助監督やキャスト、美術さんやメイクさんまでそれぞれ案を出し合っていく。みんなでひとつの作品を作り上げていくという感じがすごくあって、モノづくりって面白い、お芝居って面白いって初めて心の底から思えたんです。それまでも「お芝居ってみんなで作り上げていくものだよ」ってわかっていたつもりではあったのですが、自分のことだけでいっぱいいっぱいで、周りが見えていなくて。
――大河ドラマの主役を務められた後も次々と話題作に出演されていますね。着実にキャリアを積み重ねていらっしゃって、女優さんとして余裕が感じられます。
まだまだです。デビュー以来いろいろな役をやらせてもらって、「今後どういう役に挑戦してみたいですか?」とインタビューで聞かれても、内心「もういろいろやったしなあ…」なんて思ったりすることもあったんですけど、お仕事のお話をいただくたびに、想像していなかったような新しい挑戦があって。今回の『義母と娘のブルース』でも、キャリアウーマンで「義母」役ですからね。「え? 私が義母?」って、もうびっくりですよ。
だから、余裕は相変わらずないんですけど、デビュー当時のように「そのうち地元の広島に戻るんだろうな」と思うことはなくなりました。そう言えば、小学校6年生の時に未来の自分に宛てて書いた「15年後の私へ」という手紙を、数年前に小学校時代の先生が送ってきてくれたんです。そこに「私はバリバリ仕事をしていて、いつも飛び回っています」なんて未来像が書かれていて驚きました。実は私ってそんなに働きたかったんだって(笑)。一生懸命仕事をしたいな、そういう人に憧れるなって気持ちはずっと心のどこかにあって、これからもそうだと思います。
――では、女優さんになっていなかったら、今ごろキャリアウーマンの綾瀬さんがどこかの企業に…。
あ、待ってください! やっぱりケーキを作りたいから、パティシエにします。
――ケーキ作りはお好きなんですか?
学生時代は毎日のように焼いていて、ミル・クレープとかちょっと凝ったものにも挑戦しました。職人気質というか、モノをひとりで淡々と作るのはすごく好き。ケーキにクリームを滑らかにきれいに塗る技術とか、憧れますね。もしパティシエになったら、海外で修業を積んで、パリのコンクールで優勝を目指したりしたいです。と言いつつ、結局、全部自分で食べちゃって仕事にならなそうですけど(笑)。
<「お悩み」相談コーナー>
アンケート回答者から寄せられた「お悩み」に対して、綾瀬さんから応援コメントをいただきました!
<綾瀬さんチョイスの「お悩み」>
志望度の高い企業の選考に落ちてしまいましたが、その時になって初めて「自分は本当にその企業で働きたかったのか」という疑問が生じました。これからは企業選びをより慎重に、後悔の無いようにしたいと思っています。
(就職プロセス調査 5月調査回答・大学生・文系・女性)
そうかあ…。
すごく気持ちがわかります。私にもありました。
――綾瀬さんにも?
はい。オーディションに落ちて予想以上に落ち込み、「それほどまでに自分にとって大事な役だったんだ。こんなに悔やむなら、なぜもっと頑張らなかったんだろう」と後悔したことがあります。ただ、彼女の場合は私とは逆で、すごく憧れていた会社だったけど、選考を受けて社員さんと会ったり、会社の雰囲気を感じたりして、実際のその会社に触れてみたら、意外とそんなに行きたい会社じゃなかったってことですよね?
――はい。
だとしたら、その「行きたい」という気持ちにはもしかして、自分に大切にしたいこととは別の理由があったのかもしれないなって思います。例えばですけど、お給料がいいとか、名の知られている企業だからとか、自分がやりたいこととは別の何かだったのかもしれません。
でも、やってみてわかることってあるから、私、今回のことは彼女にとってすごくいいきっかけだったと思います。「自分は本当にその企業で働きたかったのか」って、自分の本当に素直な気持ちだから、大切にしてほしい。なぜ落ちてもショックじゃなかったのか、その理由をじっくり考えてみることが、自分に合う企業を見つけるための一歩になるんじゃないかな。
「私も頑張りますから、一緒に頑張りましょう」って彼女に言いたいです。
※本文は2018年取材時の内容で掲載しております
取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康