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2021.03.11

【採用注力事例】世界的な半導体製造装置メーカーが、若手の挑戦を後押しする理由

45兆円を超す巨大マーケットである半導体業界。半導体製造に欠かせない描画装置市場で、世界で90%以上のシェアを誇る株式会社ニューフレアテクノロジー。他社の追随を許さない世界企業には、若手が先端開発に挑戦するチャンスがあると言います。独立心の高い社風を生み出す採用・人材育成への想いを伺いました。

【いま、新卒採用に注力する理由】
Vol.13 株式会社ニューフレアテクノロジー
(半導体製造装置製造)

総務部 人財開発グループ グループ長
安斎裕幸さん

※記事は、2021年1月18日にオンライン取材した内容で掲載しております。

【Company Profile】

2002年設立。半導体に微細な回路を描く、「電子ビームマスク描画装置」をはじめ、半導体製造装置を開発。トップレベルの微細加工技術を追求し、電子ビーム描画装置は世界で90%以上のシェアを獲得している(シングルビーム市場において、同社調べ)。2020年に経済産業省「グローバルニッチトップ100選」選定。従業員数626名 (2019年3月31日時点)

 

ニッチ分野の先端開発にかけ、トップシェアを誇る

 

当社は、年間45兆円を超すと言われている世界の半導体市場において、半導体製造装置を開発している会社です。事業の柱となる製品は3つ。半導体製造の最初の工程として、フォトマスク(シリコンウェハに半導体の回路パターンを転写する原版)に微細な回路パターンを描く「電子ビームマスク描画装置」、フォトマスクに正しく回路パターンが描けているかを検査する「マスク検査装置」、LEDやパワー半導体(高電圧・高電流の電源を制御する半導体)の製造工程に欠かせない「エピタキシャル成長装置」です。

当社の事業の特徴は、3つ挙げられます。一つは、半導体製造装置の中でも特にニッチな領域に集中していることです。多くの半導体製造企業にとってなくてはならない存在でありながら、半導体製造プロセスの中でもマス市場ではない領域で事業を展開しているところです。

次に、売上高に占める研究開発比率がとても高いことです。当社の売上高研究開発費比率は、21.7%(2019年3月期)、全製造業平均の5%(2017年度経済産業省統計)に比べてはるかに高い水準です。それだけ開発に注力しているということを、理解していただけるのではないでしょうか。

三つめは、開発から製品設計・製造・保守サービスまで一気通貫で行い、お客様の声をすぐに開発に反映させる仕組みがあることです。例えば、電子ビームマスク描画装置の事業では、開発・設計・製造・保守サービスの担当が、社内で連携しながら、それぞれの現場にお客様の声を反映できるようにしています。市場の規模や構造に合わせて、お客様の声を製品に反映できる体制を作っています。

 

開発投資に注力する理由

 

当社は、他社が先行して市場を押さえていても、開発に投資して一生懸命突き進めば成果が得られる、という経験をしています。いまは世界的に高いシェアを持つ電子ビームマスク描画装置においても、以前は他社が高いシェアを持っていました。短期的な売上につながりにくい市場環境のなか、国の大型技術開発プロジェクトも活用して長期的な開発を続けることで、製品化を果たしています(※)。それが当社の、いまの成長に繋がっています。パイオニアとして先頭を走っていくためには、誰も切り開いたことがない未知の領域を切り開いていかねばなりません。主力商品以外の先端開発への積極的な投資も含めて、チャレンジへの投資に重きを置いています。

ですから当社では、エンジニアの提案には積極的に開発費を投じます。若手社員の「やってみたい」という提案に対して、何千万円という予算を投じることもあります。開発を進める中で、さまざまな課題や克服しなければならない壁は出てくるはずですが、当社にはチャレンジできる環境があります。ニッチな領域に集中しているからこそ、新しい発想が求められています。「研究開発プランに経験や年齢は関係ない、若手が立てた計画でも実行させていく」という信念を、DNAとして持っている会社だと思います。

 

多様な人材を採用し、組織を活性化することで新しい独立した文化を生み出す

 

当社は2020年4月から、東芝デバイス&ストレージ社の完全子会社となりました。また、2002年の「ニューフレアテクノロジー」設立は、東芝グループで事業開発を行ってきた製品を核にしています。新卒・中途採用による従業員数の増加に伴い、現在は従業員の6~7割が、同業他社やほかの業界や企業から転職してきたエンジニアなどで構成されていますので、多様な価値観があり、自然と個々の意見を尊重できる風土ができていると感じます。年間の新入社員全体で捉えると、新卒採用が10名程度、キャリア採用20~30名程度。新卒入社社員には、基幹人材として会社のさまざまな領域を担う従業員として成長してもらうことを期待しています。

新卒採用活動においては、5年目までの若手社員がリクルーターとして学生の皆さんをフォローしながら、選考の節目ごとにコミュニケーションを取っていきます。学生から社会人へと一歩踏み出すときにミスマッチが起きないよう、年齢の近い若手社員に寄り添ってもらいながら、当社で働くことの魅力を伝えています。

こうした過程を経ることで、若手社員にとっても、学生から新たに刺激を受けたことが自分の仕事にも活かされていき、組織の活性化にもつながっていると考えています。

 

一人ひとりの価値を最大化するための採用選考と配属

 

新卒採用で心掛けているのは、成長欲求が持続できる人かどうかを見極めることです。また、その人の価値が最大化されるように仕事をしてもらうことを考えているため、選考過程で意向を聞いて配属先のミスマッチが出ないようにしています。

選考段階でも、どういう製品に携わってキャリアを積みたいかを聞き、3つの事業領域、さらには製品の希望に従って配属先を想定して選考を進めるようにしています。

実際に配属されてからも、主力製品に関しては、ミスマッチを防ぐという観点と、育成という観点から、初めはお客様への製品導入を専門的に行う、システムテクノロジーという職場で経験を積んでもらいます。様々なユニットで構成された大型のシステム装置を、お客様の現場で、要求通りに稼働させていく仕事です。装置の開発から設計、製造、据付、保守まで一連の流れを理解していきながら、次第に自身が学生時代に強みとして研究してきた領域や希望する技術分野に特化していき、1~2年後にコアキャリアとなる業務に就くことになります。このように基本的な流れはあるものの、柔軟なキャリア形成が出来るように面談の機会を設けています。小回りの利く組織だからこそ対応できる部分ではないでしょうか。

 

仕事もプライベートも視野を広げ探求心を高めたい

 

実は説明会などでは学生さんに、「ファーストキャリアとしてのニューフレアテクノロジーって、素晴らしい環境だと思う」と伝えています。組織階層があってなかなか自分の思うような仕事ができない、限られた領域のみでしか仕事できないというのは、大手企業だとよく見聞きします。しかし、先端開発の現場では、幅広い視野を持ち、知識吸収していくことが求められます。当社では、決まったものだけをやりたいという人よりも、あらゆる技術を自分のものとして成長していきたいという欲求がある人が活躍できる職場で、そういった志向の人に来ていただきたいと考えています。

先輩社員も、自身が担う技術や担当するお客様、仕事のアウトプットに対して誠実で、誇りをもった人が多く、技術の共有や情報交換にも前向きで積極的ですから、気軽に相談できる環境でもあります。

プライベートの観点で言うと、多趣味な社員が多く、プライベートの時間が確保しやすいというメリットもあってか、休日には文化的な活動やスポーツに熱心に取組む人など、仕事と離れたシーンへの興味の幅も広く、充実したプライベート生活を送っているように見えます。当社は都内に近く、拠点も横浜一ヶ所で転勤がないため、趣味を大事にしたい方にとっては利便性もいいようです。

昨今は、面接がオンラインとなり、学生の皆さんもコミュニケーションの取りづらさを感じていると思います。本来、時間や空間を共有することで体感できるはずのことが、伝わらないもどかしさはあると思いますが、当社では選考に進まれていく過程で、直接会って話す機会を作ろうと考えています。コンパクトな会社のメリットを活かして、どんな状況においても、一人ひとりの可能性と向き合っていくことが、当社にとっても、学生の皆さんにとっても重要だと考えています。成長意欲の高い方とお会いできることを楽しみにしています。

 

※ニューフレアテクノロジー社の過去の開発事例の詳しい情報はこちら(外部Webサイト)

 

ニッチ分野で圧倒的なシェアを持つニューフレアテクノロジーには、社員のチャレンジに積極的に投資する組織風土がある。

 

取材・文/衣笠可奈子

 

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