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就職みらい研究所とは
2013.06.12

就業観から就活スキルまで網羅した 独自のキャリアプログラムにより 文系・新設学部にして内定率97.9%を実現

 武蔵工業大学を前身とした東京都市大学に2009年4月に新しくできた都市生活学部。東京都市大学の中でもめずらしい社会科学系学部です。就職においては文系学部であること、新設学部で卒業生がいないこと、また学部名が企業に馴染みがなく、何を専門にしているかがイメージしにくいという課題を抱えていました。そのような中、2013年度卒の第1期生が内定率97.9%という高い結果となったことを受け、都市生活学部における就職支援の取り組みについて、キャリア支援センター益子氏にお話を伺いました。

益子昌博氏 : 東京都市大学 等々力キャンパス(都市生活学部・人間科学部)キャリア支援センター課長。前職は広告代理店に勤務。

就業力に目を向けたキャリアプログラムの構築

都市生活学部1期生の3年次には、キャリアプログラムとして「キャリアデザイン」という隔週の必修科目と、必須科目の間を埋める形で「支援プログラム」という希望者のみのものがありました。「キャリアデザイン」は主に働くことへの意欲や就業観を持つことを狙いとしたものであり、「支援プログラム」は業界研究やエントリー・シート対策など、就職活動に必要なスキル・ノウハウ・知識を教えるものでした。文科省による就業力育成の義務化や、新入社員が入社後すぐに離職してしまうという世の中の流れ受け、「就業力」には力を入れていきたいと思っていました。また、就活情報や就職のスキル・ノウハウだけでは学生の目は輝かせられないと思っていましたので、様々な外部企業と連携し、学生に興味を持ってもらえるもの、学生が面白いと思ってもらえるものを一緒に考えていきました。特に、社会人の方々の生き生きとしたインタビュー映像を見るというコンテンツには、きっと学生たちが何かを感じるだろうという期待はありました。

50人のコア層から拡散することで、全員を就活に巻きこんでいく

授業の終わりには「もっと聞きたいことがあったら、キャリア支援センターに相談してください」「わからないことがあったら、聞きに来てください」というメッセージを常に投げかけました。私はまず、3年生150人のうち3分の1のコア層をつくって、その子たちがキャリアに興味を持ってもらえる状態をつくりたいと考えていました。今の学生は横のつながりがかなりあるので、コア層をつくることによってまわりの学生へと広がっていくのではないかと思いました。最初は授業のあとに数人と話をすることから始まり、それが徐々に広まっていき、夏ごろには50人程度の学生がキャリア支援センターに集まってくるようになりました。最終的に1期生の就職活動が始まる12月には、ほぼ全員に対して良い雰囲気がつくれていたと思っています。

少人数学部を活かした個別相談スタイルの確立

究極のところ、就職活動は個人個人で違うので個別相談が基本だと思っています。大学の授業で行うマクロな形式ではどうしてもフォローできない部分があり、その部分をどれだけ紡いでいけるかがキャリア支援センターとしての役割だと思っています。キャリアカウンセラーにいつでも相談できるオープンな雰囲気や、学生がたむろできる空気があるといった環境づくりを進めてきました。こういったことも学生がここに集まる理由ではないでしょうか。学生は何もしなかったらキャリアセンターに来たりはしません。だからこそ、こちらから呼ばなくてはいけないのだと思っています。マンモス校では難しいかもしれませんが、こういった個別指導のスタイルは少人数学部のメリットが活かせた部分だと思います。

プログラムを学んだ後だからこそ、飛躍できるインターンシップ

インターンシップは、キャリア支援センターとしては、学部の想定する企業に東京都市大学のカラーを知ってもらうメリットがあります。また、学生にとっては、模擬エントリーシートをつくることで就職活動の予行演習にもなります。ただ、最初はそれ以上の期待はあまりしていませんでした。ところが、1期生がインターンシップから戻ってくると、トーンがまるで変わっていたのです。「教えてください」というスタンスだった学生が、戻ってきたら私と密なコミュニケーションをとれるようになっていました。このような学生に何人か出会うにつれ、これは前向きに参加すると効果的なプログラムだなと実感しました。さらにインターンシップから帰ってきた学生たちが「今までのプログラムで学んだことが本当に身についた」「本当に必要だと身にしみてわかった」と口々に言っていたのです。プログラムで理論を学んでいたからこそ、インターンシップで実践でき、これだけ変わって戻ってこられたのだと思うようになりました。1期生時にはのべ60人程の学生がインターンシップに参加しました。毎年受け入れ先を増やしており、2期生時には100人程の学生がインターンシップに参加することができました。150人の学部ですのでかなり数としても多く、海外へのインターンシップも行っています。

第2期生へ向けて全必須プログラム化へ

1期生の時の「キャリアデザイン」と「支援プログラム」の両輪が有効であったことを踏まえ、2期生が3年生の時にはそれぞれを融合し、通年の必須科目にすることとなりました。1年間のプログラムを立てる時には、まずストーリーを大事に考えました。働くことへの興味・関心といったテーマから始まり、次に就職活動への意欲の醸成、その後具体的な就職活動スキルへという大きな流れをつくりました。その上で、複数の外部企業のコンテンツをどのように配置するのがベストなのかを考えていきました。プログラム同士の橋渡しも、私が間に入り、会社を超えてやっていただきました。毎週違う人が教えても、授業の内容がつながるようにということに関しては、全30回のプログラムをつくる上でもっとも気を配って行っています。

3年次のブラッシュアップと低学年向けのプログラムに向けて

等々力キャンパスではキャリア委員会という教職一体の組織があり、キャリア教育についても戦略的に考えています。先生方の意識も高く理解もあり、まさに一心同体で今までもやってきました。現在の3期生においては、2期生の時と同様の必須プログラムを実施し、検証をしていきたいと思っています。ですが、3年生の必須プログラムに関してもここでとどまるのではなく、やはり常に揉んでいなければならないと感じています。学生にとって何が面白いと感じるのか、どうしたら学生が自発的に動いてくれるのか、ということは常に考えているテーマです。今後は低学年に向けてプログラムをさらに発展させていきたいと思っています。

就職ジャーナル編集長_大黒光一 よりひと言

学生が自然と集まってくる東京都市大学等々力キャンパスのキャリア支援センター。キャリアカウンセラーへの予約は常時埋まっており、学生との密なコミュニケーションができている様子がうかがえます。他校では類を見ないほどインターンシップへ積極的に参加する学生も多く、学祭では企業と協力した就職イベントが行われ、新聞にも取り上げられました。このように、学生が就職活動に対して、自発的かつ前向きに動くよい空気ができていることが、結果的に内定率にもよい影響を与えているのではないでしょうか。
私は、等々力キャンパスのキャリアデザインの授業の一部をここ2年ほどお手伝いさせていただいていますが、「キャリアデザインの授業」「個別カウンセリング」「就職支援プログラム」「ゼミ・教授による個別指導」などの中で様々な話者が学生に伝えていく内容を、益子さんがしっかりとディレクションされている結果、学生に対してメッセージがブレずに伝わっていることを強く感じます。「就業力育成」や「キャリア形成」の支援をするうえで学生に「考えてもらうべきこと」や「伝えていくべきこと」は非常に多岐にわたります。最終的に「学生がどう感じて・どう行動に移してくれるか」をしっかりとイメージしてキャリアプログラム全体を作り上げられておられるのだと感じています。

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