事例・データでひも解く 就職活動の不安やギモン Vol.4
就職活動や就職に関するさまざまな情報が飛び交うなか、学生さんの本当の不安や悩み、ギモンは何でしょう? 学生さんとお話をしながら、一緒に考えてみました。事例やデータから見える事実もぜひチェックしてみましょう。
【お話してくれたのは…】
【一緒に考えたのは…】
「自分が聞きたいこと」を整理して自分から質問すれば、Web上でも社風や雰囲気はつかめる
Aさん:緊急事態宣言が出てから、企業の選考がWebに切り替わりました。でも画面を通して説明会や面接を受けても、社風や会社の雰囲気がうまくつかめません。このまま内定が出たとしても、それだけで入社を決められるのかな…と思います。
増本:Aさんはどんなことがわかれば、入社を決められそうですか?
Aさん:会社の雰囲気や社風に直接触れられる機会があるといいなと思ってます。
増本:なるほど。では、Aさんが今現在、社風について良い印象を抱いている企業はありますか?
Aさん:選考が進んでいるB社さんです。3月に「選考をWebに切り替えます」という連絡があり、選考日程が延期された際にも、いつ頃再開予定などの連絡がすぐにあり選考日程だけではなく、いろんな情報も届けていただけています。
増本:どんな情報を、どのくらいの頻度で知らせてくれるんですか?
Aさん:Web説明会や社員座談会の配信など、2週間に一度は何かしら連絡やイベントがあります。
飯塚:まめにコンタクトを取ってくれる企業だと安心できるという感じですかね。そのうえで、さまざまな社員の方の「言葉」や「会話」を届けてくれる企業だと、社風・雰囲気が分かると感じていたりしませんか?
Aさん:そうなんです。選考が延期されたまま放っておかれている企業は正直不安です。B社さんのようにいろんな社員の方のお話を聞けると、企業のことがより理解できたと感じます。
増本:学生が不安にならないように配慮するというその行動自体が、社風を表していますよね。そういう意味では、オンラインのやりとりからも、ある程度、社風は伝わってくるということですね。
Aさん:たしかにそうですね。B社さんの採用ページにも「人を大切にする会社です」というようなことが書かれていましたが、本当にその通りだと実感しています。
増本:Aさんのように社風や企業文化を知りたいと思っている学生さん、結構多いんです。Aさんの先輩たちが、就職活動時にどんな情報を知りたかったのかを見てみましょう。
増本:「社風・企業文化」については、47.2%。およそ半数の学生さんが知りたいと思っていたのですが、実際に知ることができたと答えたのは32.5%。およそ3割です。対面の選考でも、社風や企業文化を知ることができと感じている学生は、多くないんです。
Aさん:なるほど。社風がつかみづらいと感じるのは、選考がWebに切り替わったせいとは限らないような気がしてきました。
増本:では、どうすれば社風や雰囲気を知ることができるかというと…やっぱり自分から質問して聞くことです。先輩たちがどんなことを知りたいと思っていて、知りにくかったのは何か(「知りたいと思っていた」に対して「知ることができた」の回答率が少ないのはどんな項目なのか)も参考に、何を聞いておきたいか整理しておきましょう。面接でもよく「最後に質問は?」とか聞かれますよね?自分から積極的に聞くようにしましょう。
飯塚:Aさんは、これまでにWebでも対面でも説明会に参加していましたよね。これまで参加した中で、質問したことありますか?
Aさん:はい。企業が質問の時間を設けてくれたときに、質問したこともあります。
そういえば…Web説明会で質問したときは、あまり緊張しなかったかも。他の学生を気にせず質問できたように思います。
増本:そうなんですよね。動画と連動しているチャットで質問できたりもするので、むしろWebの方が質問しやすいという学生さんもいます。人事の方もWebの方が活発に質問が出ると言っていました。ちなみに、質問の場が少なかったり、Aさんが個人的に気なっていることがあったりしたときは、どうしていますか?
Aさん:企業の人事担当の方にメールで質問したことがあるくらいです。自分の希望職種に就いている社員の方とのWeb面談の案内をいただいたこともあるのですが、なんだか社員の方に個人的な質問をしてもいいものか迷ってしまって…。
増本:そういう機会があるなら、遠慮せずに、ぜひチャンスを活かしましょう! AさんにはAさんならではの興味があるのだから、聞きたいこと、知りたいことはどんどん質問していいんですよ。
飯塚:Aさんが気になることを遠慮せずに聞きながらコミュニケーションを重ねることで、Aさんとって知りたい社風や企業文化がよりリアルに伝わってくるってことですよね!
Aさん:そうですね!「自分が理解するために、もっと質問していいんだ!」って思いました。これからは遠慮せずに積極的に社員の方とのコミュニケーションの機会を利用したいと思います。
同じ業種の企業を比較することで、企業文化の違いが見えてくる
増本:社風や企業文化、その企業らしさをつかむのに役立つやり方があります。さまざまな企業を比較する方法です。
Aさん:競合する同業種の企業同士を比較するということですか?
増本:そうです。企業はお客様に価値を提供することで対価を得てビジネスが成立しています。同じ業種の企業なら、当然、似たようなお客様に対して価値を提供しているし、似たような課題に直面していますよね。
Aさん:言われてみると、たしかにそうですね。
増本:価値は商品やサービスによって届けられます。似たようなお客様が相手であっても、企業ごとに商品やサービスに工夫をしています。似たような課題に対しても、企業ごとに取り組み方は変わります。また仕事への評価方法も会社によって異なります。それらの違いから、それぞれの企業が大事にしていることが見えてくるんです。
Aさん: なるほど、そういう視点で比較するんですね。
飯塚:同業他社と差別化することで、志望動機にも説得力も増していきそうですね。面接では、「なぜ他社ではなく当社なんですか?」「なぜ●●業界のなかでも当社を志望しているんですか?」って聞かれることも多いから、各社の違いにもっと気付けるように企業研究していくことも重要になりそうですね。
増本:そういうことなんです。そして、企業が大切にしていることは、企業で働く方々と対話することからも見えてきます。
Aさん:なるほど。自分からたくさん質問するためにも、「自分がどうありたいか」を考えたり、企業のいろんな情報を深掘りすることが大事なんですね。予定されていた選考がなくなったりして、内定取りやすい業界はどこだろう…とか、目先のことに意識が向かっていた気がします。まずはしっかり企業と対話していこうと思います!
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取材・文/日笠由紀