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就職みらい研究所とは
2025.03.21

《就職みらい研究所 REPORT》データから見る近年の新卒採用・就職活動の変化

リクルートの各種調査データをもとに、新卒採用市場の概観、企業の状況と学生の価値観、企業の新卒採用と学生の就職活動の変化についてまとめています。インターンシップの定着と変化、スカウト型採用、初任配属の確約といった潮流も紹介。
これまでの日本的雇用における新卒一括採用の枠組みは、より一人ひとりの学生の経験やスキルを重視したものに変わりつつあります。企業と学生の関わり方の変化や今後の展望についても解説しています。

 

 

サマリ

新卒採用市場の概観

近年、新卒採用と就職活動のあり方が大きく変わりつつあります。2025年卒の大卒求人倍率は1.75倍と高水準を維持しています。また、2025年卒の大学生の就職内定率は、現行の就活スケジュールとなった2017年卒以降でどの調査タイミングでも最も高い数値を示しており、学生にとっては追い風の状況が続いています。
 

企業の状況

  • 2025年卒の企業調査では、新卒採用数の「充足・計」は37.2%にとどまり、採用が難航する厳しい状況が続いています。
  • 2024年卒の「採用予定数を100」とした場合の内定人数は80.7であり、特に未充足企業では69.3と前年の81.1から大きく減少しています。
  • 採用数が計画より少ない理由としては、「選考応募者が予定より少なかった」が66.2%と最も高く、選考応募者の確保の段階から苦戦している様子がうかがえます。

 

学生の状況

  • 「大学生・大学院生の働きたい組織の特徴」調査によると、成長スタイルでは、「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」を選択する割合が近年高くなっています。また、ワークスタイルにおいても、「仕事と私生活のバランスを自分でコントロールできる」とする割合が、2014年卒の34.5%から2025年卒では50.5%に上昇しています。
  • 2014年卒と比べ、2025年卒では企業での人手不足に対する課題感が強くなっており、個人と企業とでのパワーバランスは個人の方が強くなりつつあります。そのような中で、これまであまり主張されてこなかったワークライフバランスへの意識が顕在化されているのかもしれません。
  • 就業観について、近年では、「仕事は人生の一部であってすべてではない」という考え方が広がり、仕事以外のことも大切にしようとする人が増えてきているのではないでしょうか。そのような中で、仕事と私生活とのバランスを取りながら自分らしい働き方をしたいという意識が高くなっていると考えられます。

 

インターンシップの定着と変化

  • 2024年卒向けの企業調査では、インターンシップ・1day仕事体験を実施する企業は74.8%であり、2014年卒の39.0%から大きく増加。学生の参加率も74.2%と高く、今やインターンシップは企業・学生双方にとって就職活動のプロセスの一部となったと言えるかもしれません。
  • 参加先選びで「採用選考に直結するかどうか」を重視する学生は、2014年卒の4.5%から2024年卒では25.9%へと大幅に増加しています。
  • 企業の実施目的としても「採用に直結したものとして実施」は2015年卒の6.3%から2023年卒では28.5%に増加しています。
  • 2025年卒からはインターンシップの考え方が見直され、就業体験を伴うタイプ3・4が「インターンシップ」として位置付けられました。タイプ4では大学院生を対象に、より個々の経験やスキルを重視しています。
  • また、学生の目的も明確化され、就業体験を通じて現場からのフィードバックを受け、自らの能力を見極めることとされました。今やインターンシップは、汎用能力を土台とした専門性が重視される、学生と企業が互いを理解する重要な場となっています。

 

スカウトや逆求人型採用の増加

  • 企業の採用活動における「スカウト・逆求人型サービス」の活用は、2025年卒で前年比+4.4ポイントと増加しています。
  • 応募を待つだけではなく、企業側からのアプローチにより母集団形成を強化しようとする動きがあります。また、学生個人のプロフィール・スキル・経験に基づく個別アプローチが強まっており、より一人ひとりの学生の経験やスキルを重視した採用へと変化しています。

 

新入社員の初任配属確約

  • 2024年卒では、34.6%の企業が内定承諾前に新入社員の配属先を伝えており、学生側でも「入社を決める前に配属先が確定していた」とする割合は、2024年卒で27.1%、2025年卒で37.3%と増加しています。また、「新入社員の配属について従来のやり方を見直す必要がある」と考える企業は51.8%と半数以上です。
  • 新入社員の初任配属を内定承諾前に確約することは、学生の不安を軽減しミスマッチを防ぐ一方で、企業にとっては柔軟な人員配置が難しくなるという課題もあります。配属の確約は、学生にとって配属ガチャの懸念を払拭し、職種や勤務地を含めた自身のキャリアを考えるきっかけにもなります。
  • 企業は個人の意向を受け止め、学生との双方向の対話を通じたキャリア形成が求められています。採用充足が難しい中で、職場適応や早期離職を防ぐためにも、丁寧なコミュニケーションが重要です。中長期的には、個人がキャリアオーナーシップを持って行動することが、企業の成長にもつながると考えられます。

 

今後の展望

企業と学生との関わり方は変化しており、これまでの日本的雇用における新卒一括採用という画一的な枠組みは、より一人ひとりの学生の経験やスキルを重視したものに変わりつつあります。企業は従来の採用方法に頼るのではなく、個別最適化されたアプローチを取り入れる必要があります。一方で学生には、単に内定を得ることだけを目的とするのではなく、長期的なキャリア形成を見据えた企業選びが重要になってきます。新卒採用は、企業と学生の双方にとって未来をつくる重要なプロセスです。大学や政府をはじめとした多様なステークホルダーと共に、より良いあり方を模索していくことが必要です。

文/浅見 有紗(就職みらい研究所 研究員)

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