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2020.06.05

Vol.5 亀田製菓株式会社 【新型コロナウイルス感染症に関する企業の取り組み】

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業と学生のコミュニケーションの在り方が大きく変化している。対面で行われていた説明会や面接などがオンライン化し、時間的・金銭的な学生の負荷は軽減。一方、「話が伝わっていないのでは?」「面接の評価が低くなるのでは?」といった学生の不安の声も大きい。そこで、すでに学生とのコミュニケーション手法の改革を実践している企業に利点や課題、学生へのメッセージを伺った。

 

オンラインで欠けがちな、非言語の
コミュニケーションをさまざまな工夫でフォロー

亀田製菓株式会社
総務部 人事チーム 
松井綾子さん


※記事は、2020年5月26日にオンライン取材した内容で掲載しております。
状況に応じて、内容に変更の可能性がございますので、最新状況は こちら でご確認ください。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大に対応するため、採用活動において取り組まれていることは?

 

例年実施されていた3月上旬の合同企業説明会が中止になったことを受け、3月中旬に全選考プロセスをオンラインに切り替えることを決定し、3月下旬に書類選考通過者に、会社説明会と1次面接をオンラインで実施することを応募者に連絡。その後、2次面接、最終面接もオンラインに変更する旨を決定し、1次面接で伝えました。例年なら就職活動が本格化する時期に企業説明会などの中止が相次ぎ、学生にとっては選考のオンライン化もさることながら、先の見通しが立たないことが何よりも不安なはずです。その解消のため、全選考過程を通じて、結果をできるだけ早く知らせるとともに、その先のスケジュールを「何月何日に、何を」と明確に伝えるよう努めています。
 

当社の採用活動では、これまでほとんどオンラインを取り入れていませんでした。「Skype」を利用して海外留学生の個人面接を実施したことはありますが、わずか数回ほど。大規模な実施に適したWeb面接プラットフォームを選んだり、説明会の映像コンテンツを撮影したりするところからスタートし、短期間で仕組みを整える必要がありました。
 

オンライン化にあたり、最も心配したのは、画面ごしに当社の魅力を十分に伝えるのは難しいのではということです。一人ひとりの社員を大切にする風土や活気のある雰囲気、社員間のフランクな関係といった「社風」は、当社の大きな持ち味です。そのため、当社では、説明会や面接でのコミュニケーションはもちろん、受付や説明会開始までの待ち時間、面接室までの移動といった「ちょっとした時間」での学生とのやりとりを非常に大切にしています。こうした場での空気感をオンラインで再現するのは難しいものがあります。対面でのコミュニケーションが欠けるために伝えづらくなった当社の社風を、いかに伝えるか。それが、今回の対応において、当社にとっての最大のチャレンジでした。

 

対面のコミュニケーションが難しいなか、学生に社風を伝えるために工夫されたことは?

 

面接の始まりと終わりに少しフランクな会話をしながら、皆さんの日々の様子や感じていることを聞いたり、メールの文面に配慮したりするなど、私たちが応募者一人ひとりを大切にしていることが伝わるよう、ちょっとしたやりとりを、これまで以上にていねいに行っています。また、画面ごしの会話は表情が伝わりづらく、淡白になりがちなので、話を聞くときに大きくうなずいたり、はっきりと返事をしたりすることも心がけています。
 

説明会は合計2時間の動画をテーマごとに7本にわけてオンデマンド配信する形式で作成。ともすれば受動的に見てしまいがちなので、「見せ方」も工夫しました。社員間の関係性を感じてもらうために、職種ごとの仕事内容を説明する映像は、人事2人がテレビのレポーターのように先輩社員に質問し、ざっくばらんに答えてもらうインタビュー形式を取り入れて撮影。面接で「面白かったです」と言ってくれる学生も多く、社員のアットホームな雰囲気が伝わったのではと感じています。
 

また、映像を配信する前に、例年説明会で配布している資料とともに当社のお菓子とノベルティグッズを書類通過者約800名に送りました。亀田製菓の仕事には、お客さまにお菓子とともに楽しさや幸福感をお届けする喜びがあります。資料にお菓子を添えてお送りしたのは、その楽しさを学生の皆さんにも届けたいという気持ちからでした。学生からは「会社の温かさを感じた」と好評でした。私たちの思いが伝わったかな、とうれしかったです。

 

面接のオンライン化による、採用活動への影響は?

 

リモートのコミュニケーションでは、当社の求める人材と、学生の資質、志向が合っているかどうかを見極めるのが難しいのではと懸念していましたが、実際にさまざまな学生と対話をしてみると、オンラインとリアルの違いは評価にあまり影響しないと感じています。
 

当社の面接では、ひとつの質問に対する学生の回答を深堀りし、相手の良さを引き出すことを大切にしており、日常的に採用活動に携わっていない社員が面接を担当する場合も、そのような意識を共有しています。また、変化球のような質問はしません。一般的な質問だからこそ、最初の回答は多くの人が答えるような内容であっても、深堀りすることによって、それぞれの応募者の個性が出てきます。
 

例えば、「学生時代にやってきたこと」という質問に対する回答に対し、何人でやったか、そのときの気持ちはどうだったかといった、採用担当者が気になることを聞いていくと、最初の回答のエピソードは同じようなものであっても、その経験を主体的に自分のものにしてきた人と、そうでない人とでは話し方や、姿勢が明らかに違ってきます。そうした違いはオンラインでも判断できました。また、評価には大きく影響しませんが、グループ面接でほかの人が話しているときの態度など、オンラインならではの緊張感のゆるみは、意外とわかります(笑)。
 

面接のオンライン化のデメリットだと感じるのは、やはり通信のトラブルです。対応方法を採用担当者で事前にきちんと把握しておく、どうしても接続が難しい場合はスケジュールを組み直すなどできる限りのことはしていますが、学生の皆さんにはどうしても負担を与えてしまい、申し訳なく思っています。
 

学生一人ひとりに寄り添った対応を、リアルのようにはタイムリーにできない難しさも感じました。例年は、学生との面接時間前後の会話を通し、情報提供がさらに必要だと感じた場合は、説明をしたり、不安に感じている点を聞いてなるべく早く解消するなど状況に応じてフォローをしてきました。その結果、2次面接の段階では、学生の当社への理解度がかなり高まっていたのですが、今年は例年に比べて情報提供が足りていない印象がありました。
 

そこで、2次面接期間の途中で、学生の希望職種別のオンライン座談会を3次面接の前に開催することを決めました。先輩社員1人、人事1人、学生最大4人が参加し、30〜45分ほどのライブ配信で社員が学生の皆さんの質問にお答えする会です。学生の不安や疑問を解消するとともに、先輩社員との接点を持つことで企業理解、仕事理解を深めていただくことが目的です。身近に感じていただけるよう、参加する社員は若手が中心。開催はこれからですが、堅苦しくなく、先輩社員と人事のやりとりから当社の持ち味である「社風」も感じていただければと考えています。

 

今後に向けて検討していること、課題に感じていることは?

 

これまでの採用活動から、人事スタッフはオンラインでのコミュニケーションの経験を重ね、学生の皆さんと良好な関係性を築けるようになってきたと感じています。一方、最終面接を担当する部門長クラスの社員にとっては、オンラインでの選考は初めての経験。不慣れであることが学生とのコミュニケーションに影響を与えないよう最大限のバックアップをしなければと考えています。
 

2021年卒の採用活動のオンライン化は、新型コロナウイルス感染症の拡大に対応するための、やむを得ずの措置でしたが、遠隔地に住む学生にも距離のハンデを感じずに参加していただけたり、さまざまな事情で面接スケジュールを組み直す必要が生じたときも対応がしやすかったりといったメリットもありました。とくにオンライン説明会は内容も学生から好評で、手ごたえを感じました。会場手配の手間やコストがかからず、その分のリソースを学生とのコミュニケーションの充実に当てることができるのではとも思っています。
 

現在は2021年卒の採用活動に全力を尽くしており、2022年卒以降の採用活動の形態をどうするかは未定ですが、今年度の採用活動のよかったことは積極的に取り入れていきたいと考えています。また、新型コロナウイルスの感染が収束に向かった後も、不測の事態は起こりえます。従来の採用計画や採用スケジュールをより長期的な視野から見直す必要性も感じています。

 

就職活動を行っている学生の皆さんへ

 

例年とは異なる状況下で、就職活動をしている皆さんは不安だと思います。でも、皆さんがこれまで積み重ねてきたこと、感じてきたことは、何があってもなくなることはありません。自信を持って選考に臨んでいただければと思います。説明会や面接がオンライン化し、企業とのコミュニケーションがしづらいと感じることもあるかもしれませんが、聞きたいこと、言いたいことは、ぜひ遠慮なく相談をしてください。
 

それから、採用選考は企業と応募者のマッチングが目的で、人としての優劣を判断するためのものではありません。もし、うまく行かないことがあっても、自信を失わず、自分がやってきたことを信じて、前に進んで行ってほしいです。心から応援しています。

 

2021年卒学生の採用スケジュール

エントリー→コミュニケーションシート(書類選考)→会社説明会→1次面接(人事1名:学生3名 45分)→適性検査(SPI オンライン受検)・2次面接(1名:1名 30分)→Web座談会→最終面接(企業3名:学生1名 45分)→内定

 

オンライン面接の様子。採用に関わる社員には事前にWeb面接プラットフォームのマニュアルを共有し、使い方を把握してもらっている。(亀田製菓社の社員に協力いただき、面接中に面接担当者が見る画面イメージを作成)

 

取材・文/泉 彩子

 

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